女神アイリーン
『私は平和を司る女神アイリーン。貴方達を呼んだのは、私なのです。』
その女神アイリーン様が言うには───
異世界の大陸では、魔法が存在する。その魔法の素─魔素は、生まれ持ってあるモノと、自然に存在するモノがある。自然に存在するモノも、人間が有効に使えるモノでもあり、生まれ持って魔力を持たない者でも魔力を扱えたりもする。
しかし、その自然にある魔素も、溜まり過ぎると“穢れ”となり、そこから魔獣や魔物が生まれると言う。
人間には悪影響の無い魔獣も居るが、殆どの魔獣と魔物は人間を襲う。その為、各国、各領地に討伐隊や騎士団を配置し、魔導士が穢れを祓っているらしい。
ただ、200年に一度、穢れが爆発的に増えるそうで、今が丁度その周期に当たるそうだ。
そこで、その穢れを祓う─浄化をする聖女が必要─求められるのだが…。異世界にも聖女はいるが、どうしても力が足りない。ならば、力のある聖女を探そうと、その力のある聖女を召喚する事になったと言う。
「その穢れを……アイリーン様が祓えば良いのでは?」
女神─神様なら、朝飯前ではなかろうか?
『神である我々が世界を創った時、同時に色々な制約も作りました。喩え万能な神であっても、人間に関与し過ぎるとバランスが崩れるから。世界が壊れてしまうから。』
そのせいで、直接関与できないのだと言う。
召喚するのは人間だけど、それに見合った者を見付け、加護を与えるのがアイリーン女神様なのだと。
『貴方達には、護りの加護を授けます。異世界で死ぬ─事はなくなるけれど、怪我はしますから、十分に気を付けて下さい。それと、“死なない”と言う事は貴方達だけの秘密にするように。色々と悪用されない為に。では、今から貴方達に見合った力を授けてから、異世界へと送り出します。何を授かったかは、召喚先で判明します。』
にっこり微笑むアイリーン様は、本当にザ・女神様な程綺麗だけど、“否”とは言わせないような圧がある。
『その浄化を終えると、貴方達はここへ召喚された時と同じ時間に還る事ができます。』
「「「「還れるの!?」」」」
『勿論還れます。反対に、還りたくない場合も、そのままこの世界に留まる事もできます。どちらかは、貴方達自身で決めて下さい。』
ー“どちらか”─なんて、私は絶対に還る!ー
『では、最後に────』
と、アイリーン様が最後に伝えただろうソレ。
『─────から、───かっておきますね。』
アイリーン様が何を言ったのか。確かに、あの時、私達4人は聞いたのだ。ソレに納得して頷いて──その次の瞬間には、また辺りの景色が暗転したのだった。
******
「成功しました!」
その声と共に、意識が一気に浮上した。
先程迄居た真っ白な空間とは違い、黄みがかった─アイボリーカラーの大きな柱が立ち並んでいる大きい広間。その中央辺りに私達4人が床に座り込んでいる。その私達4人を囲むようにして、フードを被った人達が立っていて、その人達が「大丈夫ですか?」と声を掛けながら私達に手を差し伸べて来た。
どうなっているのか、イマイチ分からないながらも、私達はお互い顔を見合わせてから、差し伸べられた手を取り立ち上がった。
「あっ……すみません。」
「いえ、大丈夫です。そちらこそ、大丈夫ですか?」
立ち上がった時、美少女がふらついてしまい、フードを被った人に抱きつくような形になってしまったようで、美少女は顔を赤くしながら謝っている。相手の人の顔はフードでよくは分からないけど、口は笑っているように見える。
ー美少女とああなると、何でも絵になるよねー
さながら、お姫様と騎士と言ったところだろうか?
はい、勿論、私はよろめいたりなんてしません。しっかりと自分の足だけで立っています。弓道は優雅?に見えても、体幹は大事なので、その辺はしっかりしているんです。
なんて、場違い?な思考をしているとフードを被った人達の向こう側から、今度は金髪緑眼の“ザ・王子様”の様な人がやって来た。
「アレサンドル殿下、こちらの4名が、今回召喚されて来た者達です。」
周りの人達が、一斉に頭を下げた後「皆、楽にして良いよ」とザ・王子様の声で頭を上げた。
ー今度は、これまた本物の王子様が現れたようですー