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王太子アレサンドル

「アレサンドル、アズールから手紙が届いてる。」


「アズールから?珍しいな。」


手紙を持って、王太子(わたし)の執務室にやって来たのは私の側近の1人─デレクだった。



アズールは、この国を救ってくれた1人で、今は勇者として国内をあちこち旅をしながら魔獣を狩りまくっている。身分にも権力にも全く興味が無いようで、余程の理由がない限りは、滅多に王都には帰って来ない。前に帰って来たのも、2年前の第一王女アリシア達の成人祝いの夜会の時だった。3ヶ月毎に近況報告の手紙は来るが、ソレは先週来たばかりだったから、今回の手紙はソレとは違うモノだろう。しかも、魔力無しのアズールが、態々魔法の手紙を飛ばして来たと言う事は、緊急の何かが起こった─と言う事だ。デレクもそれが分かっているから、急ぎこの手紙だけを持って来たのだろう。





『詳しくは帰ってから話しますが、ひょっとしたら、異世界から誰かが召喚されたかもしれない。黒い髪の女の子。念の為、検問を通る時に“黒髪の女の子が居たら、その領地に留め置いて、王城─王太子に連絡して欲しい”と伝えている。勝手に“王太子”を使って申し訳ない。3日後には帰れると思います。』


ー新たな召喚者?ー


それは有り得ない。


平和を司る女神アイリーン─


この世界の創世神の1人。かの女神から加護を授けられて初めて、異世界からの召喚が成立するのだ。それに、前回の召喚から6年──いや、ウィステリアを元の世界に還してからなら、()()4年()()経っていない。アイリーン様が召喚に関わる事は…不可能だ。


ーどうなっている?ー


召喚は、とても大きく強い魔力が大量に必要となる。ただ、200年毎ならば、その間に貯め込む事ができる為、異世界から救世主を召喚する事に関しては、過去にも失敗した事は無い。勿論、召喚なんてモノは…人攫いと変わり無い─と思っている為、その200年毎の魔獣や魔物のスタンピードが無ければ、召喚なんてしたくない…いや…本当はソレすら良くはないのだろうけど。


“黒髪の女の子”


思い出したのは─ウィステリアだった。

この世界にも黒髪の者は居るが、殆どがグレーよりの黒色で、ウィステリアの漆黒を思わせるような黒色は珍しかった。勿論、アズールもバーミリオンも黒色だが、彼らは短髪だからか「黒いな」位にしか思わなかった。エメラルドは、茶色っぽい髪色だ。


ウィステリアには──本当に今でも申し訳ない気持ちでいっぱいだ。()()には処罰を下したが…


ーまだ、()は絶てていないー


「……デレク、後で各検問所に通達を出すから、書類の用意をしておいてくれ。私は、今すぐに父上─国王陛下に会って来る。」


「分かりました。」



勇者であるアズールが()()のなら、私達も動いた方が良いだろう。


「……()()を、注意深く…監視しろ」


ポツリと呟くと、一つの影が気配を消した。







それから3日後、予定通りにアズールが登城して来た。

アズールは救世主の1人であり容姿端麗で独り身。おまけに、舅や姑が居ないとなればモテない訳がない。アズール本人が王都に居なくとも、結婚願望が無くとも、「そんな事は関係ない!」といわんばかりに、毎日のように、王城(ここ)とアズールの邸に釣書が送られて来る。

そんなアズールの、2年ぶりの帰都と登城。アズールに声を掛けようと近寄って来る令嬢達を軽く笑顔で交わしながら、アズールは私の部屋へとやって来た。



「やっぱり、令嬢の相手をするのは疲れますね。魔獣を相手にしている方が、よっぽど楽ですよ…」


「分からない事もないな…」


と、お互い少し笑った後、アズールが手紙に書いてあった事について話し出した。




業者から貰い受けたと言う服を広げるアズール。

ソレはシンプルな服で、男性が着るような服だった。何でも、アズールの元の世界では、ごくごく普通の服で、女の子でも着る服なんだそうだ。


「普段なら気にも留めない会話が気になって、それで目にしたのがこの服で、話を聞けば黒髪の女の子が、首にチョーカーみたいなモノを巻かれてたって。」


「チョーカー………」


少し考える。


召喚云々は置いといて“チョーカー”ではなく、“枷”だとしたら?


「アズール、その話はどこで聞いた?」


「この話を聞いたのはアマリソナ領だ。」


アマリソナ領──辺境地であり、数年前から良く無い噂がある領だ。ただ、税金はきっちり納められているし、領主の評判も悪くないし、軽くではあるが調べてみても何も出て来なかったのだ。


ーついでに、もう少し色々と調べてみるかー


「その女の子については、色々聞き込みを入れるしかないが……」


言葉を区切り、デレクと部屋に控えている護衛、女官に目配せをし退室させ、部屋には私とアズールだけになった。


「今から話す事は、王族──しかも、神々から()()をもらった者にしか知らされない事だ。あぁ、アズールは、その神々が加護を授け召喚した者だから、アズールに話す事は問題無い。無いが、他言無用でお願いする。バーミリオンとエメラルドにも。」


「分かりました。」


誓約書にもサインしますよ─と言われ、その場で誓約書を書き上げ、アズールはサインをした。




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