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剣士の勘

*時は少し遡って、志乃が二度目の召喚をされた直後のアズール(本間広翔)視点*








4人でこの世界に召喚されてから6年──





最初の1年は剣士としての訓練をする毎日。


2年目は、1年程掛けて浄化の旅をした。


旅を終えた後、俺─アズールとバーミリオンさんとエメラルドはこの世界に残り、ウィステリアは日本へと還った。

()()は唐突だった。

浄化が終わり皆で打ち上げをして、打ち上げが終わった後、テントの中で「これからどうするか─」と考えようとした時


『さぁ、あなた達は───どうしますか?』


と、頭の中で声が響いた。







“残る”選択をした俺は、次に気付いた時にはテントの中だった。


ー他の3人はどうしたんだろう?ー


気にはなったが、もう時間も遅かったから、明日の朝一に3人に会いに行こう─と思いながら、その日はそのまま眠りに就いた。



結局、日本に還ったのはウィステリアだけだった。ウィステリアのテントには、着ていた服も込みで全てが残されていた。


「挨拶もできなかったな…」


と、寂しそうに呟いたのはバーミリオンさんだった。

正直、俺は日本でもこの世界ででもウィステリアとの接点が殆ど無かったから、彼女が日本に還ったと知っても、特に何とも思わなかった。


何となく……エメラルドが笑っているように見えたのは、少しだけ気にはなったが、その時はそのまま気付かなかったふりをした。


エメラルドは、この世界に来てから少し変わってしまった。

相変わらずの美少女で、世界が変わっても異性からの人気ぶりは凄い。おまけに聖女で、この国の第一王女とも仲が良いときたらモテない訳がない。実際、どこに行っても常に騎士達に囲まれている。

そんなエメラルドも、日本に居た頃は、異性よりも女友達を大切にするような子だった。友達が困っていると助けてあげたりしていたのに──


ウィステリア。彼女は魔導士と言うだけで、騎士達から妬みの対象にされて、何かにつけてチクチクと言われていた。「ウィステリアは、良い子ですよ」と、俺がフォローすればするほど、騎士達のウィステリアに対する態度が悪化したから、フォローするのを止めた。


ーエメラルドがフォローすれば、騎士達も少しは態度を改めるのでは?ー


と思っていたが、結局、エメラルドがウィステリアをフォローする事はなかった。そこで初めて、エメラルドは変わってしまった?と思った。


騎士達も分かっているんだろうか?ウィステリアが何故この世界に居るのか。否、ちゃんと理解していないから、彼女にあんな態度がとれるんだろう。

ウィステリアをはじめ、俺達は()()()()()()()()()()()()()()()()なのだ。そんな俺達─ウィステリアによく、あんな無礼な態度がとれるもんだなと思う。王太子であるアレサンドル様は理解しているようで、何かと裏でコソコソ動いているようだから、そのうち何かあるかもしれないな──とは思っていたから、()()にはスッキリしたけど。




俺は剣を振るって人を守る事が楽しくなって、この世界に残る事にした。

城に住み続けて良い─と言われたが、それは断って、代わりに王都内に小さな邸と使用人数名をお願いした。しかも、それらに掛かる費用は国で持ってもらう事になった。それが、俺達への感謝でもあり償いでもあるらしい。兎に角、理由は何であれ、貰える物は貰うし、出してもらえるなら遠慮無く出してもらう事にした。



そうして、王都に家を構え、維持は使用人達に任せて、俺は魔獣を討伐しながら国内を旅歩きした。









******


「なぁ、この服はどうする?」


「変わった服だよなぁ…どっちにしろ売れないだろうから、処分するか」


貴族が着なくなった服を買い取り、その服をリサイクルして売ったり、ドレスであればレンタルしたりと、日本とも変わらないものもあった。


ー変わった服?ー


通りすがりにたまたま耳にした話。普段なら気にせずそのまま聞き流しただろうけど、ソレが何となく気になる─引っ掛かって、その話をしている2人に目を向けると


「──っ!?」


一瞬、自分の目を疑って、もう一度見直して、それでもやっぱり信じられなくて、一度目をギュッと瞑ってからもう一度ソレに視線を向けた。何度見直しても、ソレはやっぱりソレだった。


白地のパーカーに、スキニータイプのデニムパンツ。


日本─元の世界ではごくごく普通の服だ。

俺は、そのままその2人に声を掛け、その服を売って欲しいとお願いした。その2人はまともな業者だったようで、「もともと処分しようと思っていたから、ただでやるよ」と、ただで貰い受けた。その代わりに─と、俺は仕留めて燻製にしていた(人気のある)魔獣の肉をお礼に渡した。相手は大層喜んでくれて、その服を受け取った時の話もしてくれた。


『お金は要らないから、その服を持って行ってくれ』と馴染みの客に言われて受け取った事。

その時、とある女性が奥の部屋から連れ出して来た女の子が、珍しい程の真っ黒な髪色だった事。

その女の子の首には、黒いチョーカーのようなモノが巻かれていた事を。


ドクン─と、何故かとてつもなく嫌な予感がした。



『勇者レベルの剣士ともなれば、己の勘を侮る事はするな。』


と、アレサンドル様に言われた事を思い出す。


()()()後に「何もなくて良かった」なら良い。()()()に「あの時動いておけば」となるのは愚者のする事だ。


ー急いで王都……アレサンドル様に会いに行かないとー


俺はそう思い、急いで王都へと向かった。





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