女中のタマ・4
窓を拭き終わった場所がちょうど玄関の近くだったので、そのまま客間に入ろうとしたとき、玄関の近くに置いてある鎧の置物を拭いていたであろう細い女中が雑巾を片手に持ちながら、倒れそうになっている鎧を押してなんとか倒れないように踏ん張っているのが目に入った。
「おお!!!大丈夫か!!?」
駈け寄ったあたしは細い子と一緒に鎧を押して元に戻した。
細い子は汗だくになり涙目になっていた。
あたしは思わず細い子の肩にポンと手を置いた。
「もう大丈夫だ。さっきみたいなときは大声で誰かを呼ぶんだ。誰かが助けてくれる」
細い子はか細い声を出した。
「……叫んでもどうせ誰も助けてくれないから……」
「あたしが近くに居るときはあたしが助ける」
そうしてようやく客間に入ったあたしは客間の壁時計を見て驚いた。
「もうこんな時間なのか!!?」
客間の掃除の時間があと10分しかない!!!
10分でこの広い客間を全て掃除できるのか!!?
あたしは両手に1枚ずつ雑巾を持つと両手を超高速に動かして窓を拭いた。
「うりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
思わず気合いの叫び声が出ていた。
そのとき、客間のドアがガチャリと開いた。見ると廊下の窓を拭いていた背の小さい子が立っていた。
背の小さい子はあたしの横まで歩いてくると小さな声で言った。
「手伝ってもらったので手伝います」
「おおお!!!助かる!!!では窓の低い部分を頼んでもいいだろうか!!?」
そのときまたもやドアがガチャリと開いた。見ると倒れそうな鎧を支えていた細い子が立っていた。
細い子はあたしの近くまで来るとか細い声で言った。
「助けてもらったので助けに来ました」
「おおお!!!助かる!!!では床の掃除を頼んでもいいだろうか!!?」
そのときまたもやドアがガチャリと開いた。見ると昨日の朝洗濯のところに居た三つ編みの子をはじめ6人の女中が立っていた。
「昨日手伝ってもらったので手伝います」
「おおお!!!助かる!!!ではテーブルとソファーと床と壁を頼んでもいいだろうか!!?」
皆に手伝ってもらって客間の掃除は10分で終わることが出来た。
なんだ、皆手伝ってくれるではないか。
「みんなありがとう!!!みんなのおかげで無事掃除を終えることが出来た!!!恩に着る!!!」
皆一斉に視線を下に逸らすとほっぺを赤くさせていた。