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女中のタマ・3

 ハナさんはあたしが洗濯板で擦り終えた洗濯物の数を数えると驚きの声をあげた。


「凄い!!!あんな短時間で10枚も洗ったなんて!!!わたしが2枚洗っている間に10枚!!!」


 ハナさんとあたしは洗濯したものをゆすいで石けんの泡を綺麗に落とした。ハナさんは洗濯物を広げて見ながら言った。


「しかも全部ちゃんと洗えてる……!!!」


 ハナさんは女性にしては身長が高いので物干し竿に腕を上げなくてもスイスイと洗濯物を干すことが出来る。


 洗濯物を絞って干し終えたあたしは、まだ洗濯をしている6人に視線を向けた。


「こっち終わったから手伝ってやる!!」


 あたしはそう言って6人のところから1~2枚ずつ洗濯物を持ってくると再び洗濯をしようとした。そのときハナさんがあたしの横へ来て小声で不満そうに言った。


「あの子たちありがとうの1つも言わないでしょ?」


 あたしは黙々と洗濯をしている6人を見た。


「洗濯に集中しすぎて聞こえなかったのかも知れない」


「違うわよ。ここの女中は皆自分のことしか考えてないのよ。わたしも女中頭やらされてるから仕方なしに喋りかけるけど返事すらしない子がほとんどで頭にきてるの」


 黙々と洗濯をしていた6人のうち三つ編みをした子が洗濯を終えると、他の5人はまだ洗濯物があるのに手伝いもせずに自分の分だけゆすぎに蛇口のほうへ向かった。


 あたしはハナさんに聞いた。


「あの子は他に仕事が溜まっているとかではないのか?」


「無いわよ。朝食の7時まで洗濯当番の子は洗濯しか仕事が無いんだから」


 三つ編みの子は洗濯物をゆすいで絞って干すとどこかへ行ってしまった。


「どこへ行ったのだ?」


「お勝手口の前よ。自分の仕事を終えた子たちは朝食が出来るまでそこで待ってるのよ」


「朝食つくる手伝いもせずにか?」


「そうよ。手が空いたら他の人の仕事を手伝うように言ったことあったけど無駄よ。さっきの三つ編みのウメなんて『みんな自分の仕事だけしかしてないのにあたしは手伝ってもらってないのにどうしてあたしだけが』って口答えしてきてさ。もう頭にくるんだから」


 今まで周りに居なかった種類の人たちだ。世の中にはいろんな人が居るのだな。


 考え込んでいると背後から声がした。



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