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女中のタマ・3

 裏庭に行くと女中たちが大きな洗濯桶に水を溜めて石鹸粉で浴衣などをゴシゴシと洗濯していた。


 井戸はどこにも見当たらなくて隅っこに水道の蛇口がある。

 

 松尾邸では台所にのみ蛇口があって、料理を作ったり汚れの少ない食器を洗ったりする以外の、使用済みの食器の最初の汚れを落としたり泥のついた野菜を洗うなどの流しを汚しそうなことには井戸の水を使っていた。


 伯爵邸には井戸が無いみたいだから裏庭にも蛇口があるのだろう。


 女中が6人いて、3人ずつ同じ桶を囲んで洗濯しているのだが誰も一言も喋っていなかった。


 あたしは関心した。


 皆真剣に洗濯をしているのだな。

 あたしも見習って真剣に洗濯をしよう。


 ハナさんとあたしも大きな洗濯桶に水道から水を入れると、同じ洗濯桶で洗濯をし始めた。


 あたしは長年の女中経験から編み出した秘技超速揉(ひぎちょうそくも)(こす)り洗いで洗った。洗濯板を両(ひざ)で固定して洗濯物を洗濯板に擦りつけながら洗濯板に擦られてない箇所は両手で高速でもみ洗いをするのだ。


 超速で動くあたしの手と洗濯板のギザギザの摩擦により石鹸粉が泡泡となってあたしの腕の半分までが泡にまみれて、着物と顔に泡が飛び散ってきて、それでもハナさんには泡が飛び散らないように角度調整をして、超速揉み擦り洗いを続けた。


「うりゃぁぁぁぁぁぁ!!!」


 思わず気合いの声を上げて洗濯をしていると、向かい側で洗濯をしていたハナさんが吹き出して笑い始めた。


 あたしは超速揉み擦り洗いをやめてハナさんを見つめた。


 何か可笑しなことがあったのか?


 周りを見回していると、ハナさんが笑いながら言った。


「タマさんって面白いのね」


 ん?あたしのことで笑ってたのか……?



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