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女中のタマ・3
1週間後、足が治ったあたしは伯爵邸で女中に戻っていた。
九六子ちゃんが祖父に言ってくれたから女中に戻れたそうだ。
あんなことがあったのにあたしの為に一肌脱いでくれたんだ。九六子ちゃんは寛大ですごい人だ!
「はじめまして!!女中のタマと申します!!よろしくお願い致します!!!」
朝、女中頭のハナさんが皆を集めてあたしの挨拶の時間を作ってくれた。
ここ倉島邸は松尾邸とは雰囲気が全然違う。疲れているのか顔が青白くて無表情で無反応な女中が多い。
挨拶を終えて皆がそれぞれの持ち場へ散っていくと、ハナさんが笑顔であたしに言った。
「ごめんなさいね。ここの女中全員暗いでしょ?自分のことしか考えてない人たちの集まりだから不快になることもあるかも知れないけど気にする必要ないからね」
あたしは『?』となったがとりあえずハナさんに付いて歩いた。
「しばらくはわたしと一緒に仕事をやりましょう」
「はい」
「タマさん25歳でしょ?わたしより1つ年上なんだから敬語は使わないでください」
「分かった」
「台所は手が足りてるから洗濯をしにいきましょう」