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タマと家族と松尾家と

 井戸の近くに置いてある洗濯桶にシーツを置いてきたであろうヨネがお勝手口から戻ってくると、あたしを見るなり「歩いちゃ駄目だってば!!」と眉頭を上げて言いながら台所に入った。


 そのときお勝手口の前のコンクリートのところに黒くなった水が入った桶が2つ並んでいるのを見て、近くで作業をしているおツルちゃんとサワに言った。


「いつもタマが水を替えてくれているからって当たり前みたいにこんな場所にほったらかしにしてんじゃないよ!!!しばらくタマは水替えは一切しないからおまえ等がやれよ!!?ていうかタマが復帰しても水を汚した奴が変えろよな!!!」


 そのとき背後から声がした。


「タマは足が治るまで休んどけよ」


 振り向くと賢吉が真顔で立っていた。

   

「あたしは大丈夫だ。昨日昼過ぎから働いてないからな。その分働かねば」


 そこに諭吉と栄吉がやって来た。


「タマはいつも人一倍働いてるからな。休んだ分も給金は保証するから休め」


「そうだ!もし減っていたら僕がその分払ってやる!!」


 更にその背後から奥様がやって来た。


「人聞きの悪いことを言わないでちょうだい。普段から人一倍働いているバカ娘が怪我で休むのなら給金くらい保証してやるわよ」


 あたしは呆然としていた。


 一体何なのだろうか?


 賢吉は「そんな立ち方してると足が歪むぞ」と言うなり、素早く手をあたしの膝裏と背中に添えると抱き上げた。


「行くぞ」


 そう言って賢吉は廊下を歩き出した。


「どこへ行くのだ?」


 あたしがそう聞いたすぐ後に横から栄吉が「ずるい!!!」と大声を上げた。


 栄吉は賢吉に抱き上げられているあたしにずるいと言っているらしい。


「賢吉。栄吉が抱き上げて欲しいと言っている。あたしはいいから栄吉を抱き上げてやってくれ」


 諭吉が吹き出して笑い、賢吉は「やなこった」と流すように答え、栄吉は「そんなこと言ってない!!!」と怒った。


 なんだか会話がよく分からんな。


 賢吉に抱きかかえられたあたしは本邸の奥にある茶の間に連れてかれた。


光沢のある立派な木の座卓の前にあるふわふわの白い座布団にぺちゃんこ座りで座らされたかと思うと、「正座はするな」と言われ、奥様を含め松尾家の皆も座布団の上で足を崩して座った。


 あたしの両隣には賢吉と栄吉が座り、座卓を挟んで向かいの席には奥様と諭吉が座っている。


 そして何故かあたしの分も朝食が運ばれてきて何故か一緒のものを一緒に食べた。


 あたしは戸惑った。


 これはいいのだろうか……?


 一体何なのだろうか……?



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