タマの失踪
台所に戻ると団子を食べ終えたみんなは働き始めていた。あたしはジャガイモやゴボウを洗って汚れている水を替えに井戸へと行こうとした。
そのとき新人女中のおツルちゃんがにんじんを切りながら隣りでゴボウを切っているサワに泣きそうな声で喋っていた。
「どうしましょう……今日の買い出し当番わたしなんです……」
「最近不審者が出るみたいだからね。なんでも若い娘ばかり狙って連れ去っていくとか」
「外に出るのが怖いです……」
不審者……?
そういえばヨネも最近この辺で不審者が出ると言ってたな……。
あたしはおツルちゃんに話しかけた。
「買い出しは代わりにあたしが行ってやる!だから安心しろ!」
おツルちゃんは目を潤ませながら大声で言った。
「いいんですか!!?」
「ああ。あたしは25歳の行き行かないだ。おツルちゃんより若くないからおツルちゃんより安全だ。だからあたしが行ってやる!!」
おツルちゃんは笑顔になった。
「ありがとうございます!!」
お昼ご飯を食べたあたしは、あたしの当番だった廊下の掃除をおツルちゃんに任せて食料の買い出しに出かけた。
大きな木の門は閉まっていて、あたしは久しぶりにコンコンと門を叩いた。
「買い出し当番だ!通してくれ!」
門がギギギギギと音を出しながら少し開くと、門番の背が低い元お兄さんで今はおじさんの丸い顔が現れた。
あたしは買い物用の風呂敷を掲げながらもう1度言った。
「買い出し当番だ!通してくれ!」
「ああ、お嬢ちゃんか。買い出しは新人の仕事だろ?」
「そうだが今日はあたしが行く!」
そう言うあたしにおじさんはゆっくりと門を開け、あたしは門の外に出た。
歩くあたしの背後からおじさんがまだ話しかけていた。
「最近は走らないんだな」
「もう大人だから走らない!」
振り向かずに風呂敷を振りながら答えた。