表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/111

愼志朗の罪と罰・2

 目がつり上がった細身の女中がタマちゃんの肩に腕を回して言った。


「いいかい?タマ!!この贈り物は絶対誰にもあげちゃダメだからな!!」


 タマちゃんは目を丸くさせ、呆然としたまま「お……おお……」と答えていた。


 俺は3人の女中が言ってくれたことでスッキリとした気分になっていた。


 一喝された2人は「なんだよ?あたし等のが年上なのに何でおまえら偉そうなんだよ?」「そんなに言わなくてもいいじゃないか」などと言いながらばつが悪そうに食事をしに戻って行った。


 タマちゃんは大量の贈り物を見つめながら「お返し出来る物がない」とつぶやき、草履を脱いで廊下を走って突き当たりにある女中の部屋に飛び込んでいった。


 思わず俺は叫んだ。


「お返しなんて要らないから!!」 


 若君と俺は他人で、町で偶然会って頼まれて届けに来ただけだと言ったはずだがタマちゃんはそれをすっかり忘れているようだった。


 タマちゃんは大きな四角い缶――おそらく松尾家の菓子の空箱でゴミになった物を私物にした物――を持って来ると廊下に置いて開けた。


 中にはラムネの瓶の中から取り出した歪な形のビー玉やおはじき、綺麗な柄ではあるが小さすぎて使い道のない布きれの数々、綺麗な和紙で折った鶴、押し花で作ったしおりなどが入っている。


 それをあさりながら「ない」「ない」とつぶやいていたかと思うといきなり「あ!!!」と大声を出した後、自身の着物の懐から小さな丸い筒を取り出して俺に差し出した。


「あたしの宝物の百色眼鏡だ!!!これを龍之介に渡してくれ!!!」


 それは貧しいタマちゃんにとっては本当に宝物なのだろうというのが分かりすぎる品物だった。


「貰えないよ。宝物なんでしょ?」


 タマちゃんは目をキラキラと輝かせながら笑顔で答えた。


「宝物だからあげるんだ!!!龍之介によろしく伝えてくれ!!!」


 その笑顔を見た瞬間、若君がタマちゃんに惚れた理由が分かったような気がした。


 俺は百色眼鏡を受け取った。


「分かった。必ず届ける」


 

 けれども俺は百色眼鏡をすぐに若君には届けなかった。


 タマちゃんには悪いと思ったが、時期が来てからにしようと考えたからだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ