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愼志朗の罪と罰・2

 女中の若い子たちは食事を中断させて集まって来ていた。


「え――!!?なにぃ――!!?すごい豪華!!!」


「元門番の人やっぱりタマのいい人なんじゃない!!!」


「元門番なのに実はお金持ちだったの!!?」


 女中たちが騒ぐ中でタマちゃんも驚いていた。


「こんなにいっぱいくれたのか!!?女中みんなの分なのか!!?」


 この言葉に女中の2人が「え――!!?」「あたしたちの分なの!!?」と興奮した。


 彼女たちは若君が松尾邸に居た頃、散々若君のことを化け物だのなんだのとあちらこちらで騒いでいた2人だ。


 俺はその反応の厚かましさに疲れを感じながら答えた。


「違うよ。全部タマちゃんのだよ。龍之介くんが命の恩人のタマちゃんに喜んで欲しくて選んだんだ。これには全部龍之介くんの真心がこもってるからタマちゃんが使ってあげて欲しい」


「え!?『龍之介くん』って、もしかして結核だった龍之介坊ちゃんのこと……?」


 女中2人の興奮が止んで声色が一気に下がった。


 そりゃそうだろう。自分たちは散々結核だの化け物だのと言って忌み嫌い、差別をしてきたのだから。


「龍之介坊ちゃんって母方のお祖父ちゃんに引き取られて行ったんでしょ?そのお祖父ちゃんが金持ちだったってこと!!?」


「結核じゃなかったのならあたしも優しくしておけば良かったぁ~!!」


「本当だよ~!!!あの顔も皮膚病で治るって分かってたら金持ちだしもっと優しくしたのにさ!!!」


 勝手なことを言う女中2人に俺は苛立っていた。すると目がつり上がった細身の女中が一喝した。


「なに言ってんだ!!?あんたたちいつも坊ちゃんに飯を届けるとき化け物だの気持ち悪いだの騒いでただろ!!?あれが坊ちゃんに聞こえてなかったとでも思っているのかい!!?」


 続いて身体が丸くて鼻が上に上がった女中が言った。


「タマは坊ちゃんを化け物扱いしなかったし、結核かも知れない坊ちゃんを背負って命がけで助けたんだ!!!あんた等にそんな真似は出来ないだろ!!?」


 更に続けてソバカスのある女中が腰に手を当てて巻き舌で偉そうに言った。


「この贈り物は全部タマのもんだ!!!もしタマから取ろうとするようなことがあればあたし等がタダじゃ置かないからな!!!」




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