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龍之介の素性

 自動車の後ろの席にお祖父ちゃんが乗った後に愼志朗さんが僕を抱きかかえて乗り込み、そのまま愼志朗さんの膝の上に座らされた僕は、何だか不安になってもう一度お祖父ちゃんに聞いていた。


「タ……タマも……明日本当に来るんですよね?」


「ああ。来るとも」


 そう言うお祖父ちゃんは優しい笑顔に戻っていた。

 

 僕は生まれてから初めて乗る自動車に揺られながら、家が建ち並ぶ光景を眺めていた。真っ暗な中に街灯と家の窓から漏れる電気が浮いて見える。


 自動車はガタガタ揺れながらガタクリガタクリと音を立てて走っていく。


 お祖父ちゃんが僕に話しかけた。


「今年で10歳だったな?」


 僕は緊張しながら答えた。


「はい……」


「勉強はどうしていた?」


「勉強は6歳のときに少しだけ尋常小学校に通っていたので……松尾の家に行ってからは全くしていません……」


「そうか……」


 そう返事をしたお祖父ちゃんは怖い顔をして黙り込んでしまった。


 僕はやっぱり不安だった。


 お祖父ちゃんは優しいけど怖い人だ。


 もし嫌われてまたひとりぼっちにさせられたらどうしよう?


 けれどもタマも明日になれば来る。


 タマさえ居れば僕は大丈夫だ。



 僕にとっての希望は、お祖父ちゃんに保護されたことでも、松尾の屋敷に帰らなくてもいいということでも無く、これからずっとタマと一緒に暮らせるということだけだった。

 


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