タマと4兄弟
芝居は面白かった。綺麗な服を着た人たちが光が集まるキラキラとした舞台で演技をしていて何だか別世界に居るような感覚になれた。
芝居が終わって芝居小屋を出ると空は暗くなっていて、街灯や店の灯りの中を沢山の人々が行き交っていた。
余韻でぼんやりとしながら奥様や皆と一緒に歩いていると「タマ、お腹空かない?」と右隣から龍之介の声がして顔を向けると賢吉の姿があった。
あたしは一瞬『?』となった。さっき隣には龍之介が居たような気がしたのだが。
龍之介はあたしの斜め後ろに居て、賢吉を睨みながら歩いている。お昼ご飯を食べていたときも喧嘩をする振りをして仲良くしていたからきっとまたじゃれているのだろう。
微笑ましく思いながら答えた。
「あたしは特に食べたい物はない。みんなが食べたい物を食べたい」
そう答えると賢吉の後頭部を睨み付けていた龍之介はあたしに笑顔を向けた。
「ならば牛鍋なんかはどうだ?」
龍之介より先に賢吉がそう言うと龍之介はまたもや賢吉を睨んだ。それを見て少し不安になった。果たして本当にこれはじゃれているのだろうか?
あたしは戸惑いながら言った。
「おお……牛鍋いいな……みんなはどうだろうか……?奥様どうですか……?」
あたしの左隣を歩く奥様とその後ろを歩く諭吉を見ながら問いかけると、奥様は微笑みながら「牛鍋いいわね」と答え、諭吉も「タマがいいなら牛鍋にしよう」と優しく答えた。
「じゃぁ牛鍋だね」
右隣から栄吉の声が聞こえたので振り向くと、賢吉の向こう側に居る栄吉が賢吉に顔を押されながら歩いていた。
栄吉は涙目になっているが賢吉は楽しそうに口角を上げている。
さっきから賢吉たちは何をしているのだろうか?これが男のじゃれあいの仕方なのだろうか?
そう思いつつ前に視線を向けると、人力車に乗ろうとしている若い女性の姿があった。人力車といえば誘拐された時のことを思い出すなぁと思いながら、その人力車の俥夫を見た途端、あたしの心臓はドキンと飛び跳ねた。
あの大きい男はあたしを誘拐した男ではないか!!!
あたしは咄嗟に人力車に乗ろうとしている女性に叫んだ。
「その人力車に乗っちゃ駄目だ!!!そいつは人さらいだ!!!」
お読み頂きありがとうございます。
こちらの作品はエブリスタからコピペで持ってきた作品なのですが、不人気過ぎてコピペをする気力が失われた為、ここで打ち切りとさせて頂きます。
続きはエブリスタにて『若様と女中の娘~イケメン若様の一途な恋~』で検索すれば出て来ます。(題名が違いますがエブリスタでの題名はこちらになります)
ここまでお読みくださった方、再度お礼を申し上げます。ありがとうございました。