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女中のタマ・2

 諭吉は顔を上げたあたしを見て突き放すような冷たい口調で言った。


「そんなに龍之介を助けたいならおまえが医療費も住まいも食事も面倒をみてやればいい。それともさっきまでの威勢はただの綺麗事なのか?」


 龍之介の面倒をあたしが……?

 お母ちゃんとお祖母ちゃんの生活費だけでお給金はギリギリだというのに……?


 今朝見た龍之介の死にそうな姿が頭を過った。胸がチクンと痛んだ。


「分かりました……!!!だったら龍之介は入院してもいいということですね!!?」


「好きにしろ。金を払うのはおまえだ」


 そう言う諭吉の口角が僅かに上がった。


 あたしは立ち上がり、一礼した。


「ありがとうございます!!!お食事中失礼いたしました!!!」


 そう言い残してあたしは再び走り出した。


 そのとき背後から「廊下を走るな!!!」という奥様の怒鳴り声がしたので慌てて立ち止まろうとしたらバランスを崩して尻餅をついた。それを見た賢吉と諭吉の笑い声が響いた。


「いてて……」


 立ち上がろうとしたとき手のひらが目の前に現れて、顔を上げると賢吉があたしに手を差し伸べていた。


「大丈夫か?」


 そう言う賢吉の声とあたしに微笑みかける顔は、さっきまでと打って変わって優しくなっていた。それを不思議に思いながら賢吉の手に手を重ねた。


「おお……ありがとう……」


 賢吉に手を引かれて立ち上がると、賢吉の後ろに立っている諭吉があたしに「気をつけろよ」と微笑みかけてきて目が合った。


 一体何なのだろうか……?


 賢吉の手を放すとあたしは高速早歩きで廊下をシャコシャコと歩きだした。



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