表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
108/111

諭吉の愛しのタマ・2

 植木屋の変装をして倉島伯の屋敷に侵入していたとき、母さんも植木屋の変装をして一緒に来ていた。


 女性の植木屋は目立つ為、胸にさらしを巻いて帽子の中に髪を入れて男装をした訳だが、「怖い」と言ってはしごに上ることが出来なかった為、俺たちとは離れた場所にある垣根の手入れをする振りをしていた。


 なので母さんだけが屋敷でタマと会うことが出来なかった訳だが、タマと龍之介が外出した跡を付けた俺たちは、洋食屋でタマと合流することに成功した。


 俺は内心ハラハラとしていた。


 龍之介は母さんと会いたくは無いだろうし母さんも未だに龍之介を憎んでいるのではないかと思っていたからだ。


 しかし思いのほか母さんは龍之介を憎んではおらず謝ってくれ、龍之介もそれを受け入れてくれた。


 だからと言ってすぐに打ち解ける訳では無かったが、ぎこちないなりにも言葉を交わす2人に俺たちは思わず表情を緩めていた。



 食事を終え、皆で洋食屋を出て芝居小屋へ向かう途中、ちょっとした人だかりがあり、人々の間からは中年男が綿菓子を作っている様子が見えた。


 それをジッと見つめているタマの足が止まり、おのずと俺たちの足も止まった。


 タマが目を輝かせながら興奮して言った。


「すごい!!!雲を作っている!!!あのおじさんは雲を作ることが出来るのか!!?」


 綿菓子を知らないらしいタマが可愛らしいことを言うので俺たちの顔はほころんでいた。


「あれは綿菓子という菓子だ。買ってきてやるから待っていろ」


 俺がそう言い終わるより先に賢吉、龍之介、栄吉が綿菓子屋の前で押し合いをしながら揉めていた。


「俺がタマに買う!!! 」


「いや!!!僕が買う!!!」


「タマに買うのは僕だ!!!」


 また始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ