乱文
「そうか……お前もか」
ハインリッヒは眼前にある銃口を見上げ、そう呟いた。
投げかけたつもりでもなかったが返答はなく、耳の奥では呼吸音と窓の外で吹きすさぶ風の音色が木霊している。
季節は十二月。夕方まで降っていた雪は今は雹に変わり屋根を打つ。
「なあ、さーけやーさおだけーか?」
ハインリッヒはそう訊ねた。
「……俺はただ丈夫で錆びないアルミ製物干し竿二本で千円二本で千円十年前のお値段です」
デルトハイトはそうあなんだこれあくそまた古い物干し竿も下取りうるせえ
よし、行ったなてすてすオーケーよし後で修正しよう。今は大まかな話の流れだけでいい。よし。テスト終り。
「組織が俺を消せとそう言ったんだな? 俺はもう不要だと……こちらは廃品回収車ですご家庭で不要になりましたテレビエアコン冷蔵庫洗濯機パソコンモニタープリンター扇風機ストーブミシンCDコンポゲーム機などの電化製品やバッテリーモータータンス編み機アルミ製ホイールや自転車バイクなど大きなものや重たいものなどどんなものでも回収いたします壊れていてもかまいませんご不明な点がございましたらお気軽にお声をおかけください」
待て待て待てああくそくそくそくそ
よし行ったなテストテストテストはいOK丸あ。点、よし。さあ、やるぞ。
「わかってるさ。恨みはしない。あの子のためだろ?
この前、町で会ったとき、お前の隣にいた。何て名前だったかな。
ああ、佐藤昭雄二丁目の皆様佐藤昭雄佐藤昭雄にどうか清き一票を温かいご声援ありがとうございますありがとうございます佐藤昭雄佐藤昭雄ですこの名前をどうか覚えておいてください佐藤」
やめだもうやめ音声入力じゃまともに書けやしない漢字に自動変換はスムーズで良いが周りの音声を拾いすぎる調整をいやそもそも選挙カーはこの辺まで来ていいのかよあどうもリハビリのお時間ですよぉーはーいへへへよろしくお願いします
糞がよ骨折してるからって起こす時に毎回わざとらしく汚い股間を押し付けてきてさあーあこの病院早く辞めたいなああ回収しとかなきゃすぐ溜まるな汚い臭いまたこいつの食事に混ぜてやるか