表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフさん♀には秘密が多い  作者: 茉莉鵶
第1章 幼少期編
7/40

第07話 始まった学校生活


 全く適性を掴めぬまま、私は6歳を迎えていた。


 今はエリンダルフの街にある、学校へと通い始めていた。

 毎朝、許嫁のエルミリスに手を引かれての登校だ。

 彼女は7歳になっており、一つ上の学年だ。

 しかも、ある程度の水属性魔法については、お義父様の指導の甲斐もあり、使い熟していた。


 私はと言えば、魔法については全くダメだった。

 エリンダルフの魔法についての文献や教本では、使用可能な属性については限界があるようなのだ。

 それには、お義父様もお義母様も胸を痛めていた。

 きっと、実の父親さえ判れば苦労しないのだが…。

 母親も失踪してしまった今、知る術がなかった。


 「もう!!アヴィルナ?ちゃんと前見なさい!!」


 ああ。

 考え事をしながら歩いていて、彼女に怒られた。

 一学年上ということで、呼び捨てで呼ばれている。

 私も、他人ではもう無いので、呼び捨てにした。


 「ゴメン。エルミリス。適性属性、何かなって。」


 「そうだよね…。怒ってゴメンね?でも、足元危なかったんだよ?」


 彼女は彼女なりに、医師である祖父母の力を借りて、属性についての情報収集をしてくれていた。


 そういえば、彼女の名字がようやく分かった。

 アルゼノンと言うそうだ。

 隣の家に住む私達、リーデランザ家とは全く関係がないように思えた。


 だが、お義父に聞くと意外な答えが返ってきた。

 両家は共通の祖先を持ち、本家筋がアルゼノン家を名乗っているそうだ。

 だから、彼女の家は豪華絢爛な造りなのだろう。

 ふと、素朴な疑問が湧いた。

 本家筋の令嬢を、分家筋が妻に貰って良いのかと。


 「ねぇ…!!ねぇ…聞いてる?!アヴィルナ?」


 家から学校までは、街の中を結構歩く。

 その為、考え事をするには良い距離感だった。

 今日はやけに彼女が私に話を振ってきている。


 「ゴメンゴメン…。考え事してて…。」


 「ねぇ?今日のお昼、一緒に食べない?」


 通っている学校に、給食という概念はない。

 故に、お弁当を持参するか、購買または食堂での購入となる。

 私については、毎朝お義母様がお弁当を用意してくれていた。

 お義父様の分も一緒にだ。

 弟のユリヴィスも2歳になり、お義母様もある程度余裕が出来てきたようだ。

 去年までは、お義父様と私で毎朝お弁当の用意をしていた。


 「いいよ?でも、どこで食べるの?」


 「校舎の外にある記念公園で食べない?」


 記念公園…。

 学校を設立して100周年記念に作られた公園だ。

 学校の敷地内にあり、在学生のみ利用できる。

 ただし、自然公園となっている為、魔物も棲む。

 その為、非戦闘職の家系の生徒は、戦闘職の家系の生徒の同行が必須となっている。


 元来、アルゼノン家は聖職者の家系の為、非戦闘職に分類されている。

 文明が近代化するに従い、聖職者からお金の稼げる医師へとシフトしたようだ。

 その為、エルミリスは表向き非戦闘職の家系扱いとなっている。

 もう、水属性魔法で言えば結構な腕前なのだが。


 さて、リーデランザ家はというと…。

 大昔のある先祖が、魔法使いの妻を貰った。

 その時代では珍しい、恋愛結婚だったそうだ。

 その子供の世代からは、戦闘職の家系になった。

 今では、魔法使いとして名を馳せているようだ。


 学校初日、所謂クラスの教室で自己紹介をした際のことだ。

 そんな事知る由もない私は、何気なくリーデランザと名乗った。

 そして、休み時間になった瞬間だった。

 男女問わず何人もの子が私の周りへと寄ってきた。

 聞けば、お義父様に憧れている子達だったのだ。


 あの…お義父様が?!

 とはとても言えず、笑いを堪えて対応していた。

 でもお陰様で、虐めに遭うことは無さそうだ。


 「うん、分かった!!お昼、迎えに行くね?」


 程よいタイミングで、学校の校門が見えてきた。

 ギュッと握られた手を彼女がゆっくり離し始める。

 流石に、学校の近くで年下と一緒に居るところは、あまり見られたくないらしい。


 私が校門をくぐる頃には、彼女の姿は遥か前方にあった。



────



 ──カァァァァン…カァァァァン…カァァァァン…


 お昼を告げる学校の鐘が鳴った。

 間も無くして授業も終わった。


 さて。

 エルミリスのいる教室へ向かわなくては。

 そう思って私は、席から立ちあがろうとした。


 「ねぇ…?アヴィルナくん。」


 おっと…。

 右隣の席の女子から急に声をかけられた。

 えっと、誰だっけ…この子。

 正直、妻が確定しているので、興味がない。

 あまり構って、彼女に変な嫉妬されても怖い。

 覚えていなければ、そんな心配もない。


 「どうしたの?」


 今居る席が教室の左端の真ん中辺りで逃げづらい。

 とりあえず、席を立ちつつ応対する他ない。


 「これから、皆んなで一緒にお昼にしない?」


 そうきたか。

 彼女の約束は無碍にはできない。


 「ゴメンね?今日は、約束してるんだ。明日とかどうかな?」


 「じゃあ、明日のお昼は約束だよ?皆んな聞いた?」


 「聞いてたー!!」


 「うんうん!!」


 周りを味方につける系か…。

 ん…?

 でも、この子。

 まじまじ見ると、結構タイプだ。

 雰囲気で言えば…絢乃ちゃんに似た感じなのだ。

 髪は黒髪で、目の色は焦茶色。

 それに透き通るような白い肌だ。

 日本人のようで…懐かしさを感じてしまった。

 だがエル…いやエリンダルフ人なのは違いない。


 「じゃあ、遅くなっちゃうから行くね?」


 そう言うと私は、急いで教室から飛び出した。


 すると、少し廊下が騒然となっていた。

 原因は一体何なのだろうと、私は辺りを見渡した。

 そこで目に飛び込んだのは、廊下で腕を組んで仁王立ちしたエルミリスが、私の教室の中を睨みつける姿だった。


 「エルミリス…先輩?一体ここで何を…?」


 「浮気者が…ここのクラスに居ると聞きまして。」


 血の気がサッと引いていくのが分かった。

 でも、別に…私は浮気なんかしてはいない。

 怯える必要は全くないはずなのだ。


 「そうなのですね。私は約束がありますので、これで失礼します。」


 そう言うと私は、昇降口に向かって歩き始めた。

 廊下で私に手を繋がれれば、彼女には都合が悪いハズだからだ。


 「ちょっと!!待ちなさいよ!!」


 ──ガシッ…


 あれ…?

 これは…想定外だ。

 人前で手を繋ぐの嫌だったんじゃないのか?!


 思い切り、彼女に私は手を掴まれていた。

 その光景に、更に廊下は騒然となってしまった。



────



 「ふぅ…。やっと着いたね?」


 騒然とする中、彼女の手を逆に引いて切り抜け…。

 私達は、ようやく公園の入り口まで辿り着いた。


 「うん…。ゴメンね?目立っちゃったよね…。」


 いやいや…わざとだよね?!

 目立たせたかったんでしょ?

 結構、束縛強い系なのかもしれない。

 学校に入ってからは、校内で彼女と一緒に過ごすことはしてこなかった。

 今日が…初めてだ。

 自分の目の前で、私が他の女子と居るのが嫌だったのだろう。

 ましてや、自分よりも年下の女子にだ。


 「ねぇ?私と一緒に居たいんでしょ?周りのこと、気にしなくても良くない?」


 流石にあれが毎度繰り返されると、面倒だ。

 だから、ビシッと言った。


 「でも…。年下の子と一緒に居ると…。」


 別にただの恋人ではない。

 両家の当主同士で決めた、許嫁だ。


 「私達、許嫁だよね?」


 「あ…。そっか!!私…すっかり忘れてたよ…。」


 ええええ!?

 そうきたか…。

 何はともあれ、この件は解決しそうだ。


 「じゃあ、お昼食べよ?」


 話しながら、公園のベンチを探し歩いていた。

 結構、高学年の男女がベンチでイチャついている。

 木々が鬱蒼としている中にあるベンチを見つけた。


 「この場所、どうかな?」


 「周り誰もいないし、良いんじゃない…かな?」


 私達はベンチに腰掛けると、お弁当を取り出した。

 そう言えば、気になっていることがあった。

 彼女のお弁当は…一体誰が作っているんだろう?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ