表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフさん♀には秘密が多い  作者: 茉莉鵶
第1章 幼少期編
6/40

第06話 魔法の適性


 魔法教本をお義父様に渡され、はや一ヶ月。

 エルミリスちゃんは、学校へと通い始めていた。

 なので、私一人だけの時間が増えていた。

 勿論、『魔法教本 初級』は最初から読んでいる。


 元々、本を読むのは嫌いじゃない。

 教本の最初の方は、魔法の概念みたいな事がご丁寧に書き連ねてあった。

 結局、魔法に対する素質と遺伝が物を言うようだ。

 だから、血縁ではない養子でない限り、代々受け継がれていくのだ。


 ん…?

 そんな事を考えている時だ…。

 何だろう…この違和感は?


 私の父親は不明、母親は元祖父母の子供だ。

 あれ…?

 私はふと…気付いてしまった。

 元祖父母の子供は、元来私の母親しか居なかった。


 下手したら、代々魔法使いの家業は潰えていたのでは?

 運良く、母親が私を実家に置いて行ったから…今があるのだ。

 しかも、元祖父母…現義父母に男児まで授かった。


 お義父様は、どういう考えだったのだろうか?

 母親の件で、約束を違えたと言っていた。

 この世界で許嫁を結ぶのには何か裏でもあるのか?


 一人だと、ついつい考え事が増えてしまう。

 日中は、お義母様は弟の世話で手一杯。

 お義父様は、魔法使いの仕事で夕方まで不在。

 エルミリスちゃんは、学校で夕方まで不在。

 私はと言えば…魔法教本を読むくらいしかない。


 この世界をイメージ的に表現してみると…。

 服装や家具は現代的で日本みたいなイメージ。

 建物も木造やコンクリート造もあり近代的。

 でも、電子機器は存在していない。

 魔法使いが作る、魔法で動く機器は存在する。

 その為、魔法で相手と会話できる機器が主流だ。

 ただ…魔法で文字等を伝達する機器はまだ無い。

 だから早めに、お義父様に発想を伝えようと思う。


 この世界と言ったが、エリンダルフの街の話だ。

 もしかして、この街を一歩外へと踏み出したら…。

 中世風の情景が、広がっているかもしれない。


 何故、私がそう思ったのか?

 魔法教本を読んでいると、違和感しかないのだ。

 まず、本に書かれている人物達の服装が、中世感半端ない。

 古い教本なのかもと一瞬思った。

 でも、装丁も真新しくそんな風には見えない。

 次に、書かれている建物についても同様だ。

 木や岩、土に煉瓦と多種多様なのだが、全く近代的な建物ではない。

 王道ファンタジー作品でよく目にする感じだ。

 流石に目の前の情景と本の情景が違いすぎだろう。


 この街の外へと出てみたいという興味が湧いた。

 出るには、まず…強くならないといけないだろう。

 それにはやはり、魔法を習得するしかない。


 折角、私には魔法使いの血が流れているんだ。

 日本にいてはこんな経験は出来なかっただろう。


 教本の絵の違和感はとりあえず無視する事にした。

 いくら考えても、現実は現実として捉えなければ。



────



 それからというもの、お義父様が仕事から帰宅するのが楽しみになっていた。

 まぁ、その一時間程前にエルミリスちゃんが、学校帰りに家に寄ってくれているのも大きいのだが…。

 理由についてはとても簡単だった。


 「流石、私の息子だ。やる気があってよろしい。」


 「宜しくお願いします!!」


 お義父様から、魔法の手解きを受けている。

 それもお義母様に内緒で、家の中でコッソリと…。

 その姿を…エルミリスちゃんが横で見守る構図だ。


 なかなか魔法を練習する場所がないのは事実だ。

 家の外でしようにも、暴発したら大変な事だ。

 故に…被害は最小限にと、お義父様が家を選んだ。


 「今日は、手のひらの上で水の玉、作ってみようか?」


 「はいっ!!」


 私の適性を入念に調べる為だろう。

 予告なしで、火の玉、水の玉、土の玉のどれかを作るように言われる。


 「いきます。」


 私は右手を前へ突き出し、手のひらを上に向けた。

 そして、水の玉を作る為に詠唱し始めた。


 すると、手のひらの少し上辺りに、水の粒が現れた。

 ここからが肝心なのだが、全く水の粒は大きくなる気配がない。


 「手のひらの上で、水を集めるイメージをするんだぞ?アヴィルナ、見てろ?」


 ──ポチョンッ…


 どこかから水の垂れてくるような音が聞こえた。

 すると次の瞬間だった。

 お義父様の手のひらの上には水の玉が漂っていた。


 「すごいですっ!!それに比べて私は…。」

 

 どれだけ水を集めるイメージをしても変わらない。

 私は、水属性は適性ではないのだろうか…。


 「こう…ですかっ?!」


 んっ…?

 エルミリスちゃん…?


 「おおっ!?凄いぞっ!!エルミリスちゃん!!」


 お義父様が急に大きな声を出した。

 そして、大喜びし始めたのだ。

 慌てて私は、横にいる彼女の方を振り向いた。

 するとそこには、手のひらの上で大きな水の玉をフヨフヨと浮かせた彼女の姿があった。


 「エルミリス…ちゃん…?!す、凄いよ…!!でもさ…一体どうやって…?」


 「うーん…。わかんない…。」


 無理もないか。

 彼女の家は、ご祖父母共に医者のはずだ…。

 だから、てっきり彼女が魔法を使えないものと思い込んでしまっていた。

 こちらの家が知らない秘密でも、あるのだろうか?


 「イシェルザめ…。この私に、隠し事していたのだな…?」


 あれ?

 お義父様から聞こえたのは意外な言葉だった。


 そもそも、彼女はイシェルザさんの実娘の子供だ。

 という事は、彼女の父親に魔法の素質があったのだろう。

 でも、彼女の家には祖父母と母親しか今は居ない。

 理由は聞いていないが、何かあったのだろう。


 「あの…お義父様?私、魔法使いになれますか?」


 「ああ!!アヴィルナよりも、将来有望かもしれないぞ?」


 はぁ…。

 親からのその言葉は、本当に凹む。

 ゴリゴリとメンタルを削られたのが分かる。

 日本に居た頃のような、モブに戻った気分だ。


 何故凹むか?

 理由は、この練習は今日で三回目だからだ。

 これまでに火の玉、土の玉とやってきた。

 だが、今日同様に小さな粒しか出来なかった。

 水の玉もダメとなれば、火水土の三属性がダメだ。

 あと残るは、風と光と闇の三属性くらいだ。


 お義父様の適性属性は水属性だ。

 目の色と同じ属性が適性だと、教本にはある。

 お義父様の目の色は蒼色で、彼女は水色だ。

 因みに私の目の色は翆色なのだ。

 だから、風属性が適性なのだろうか?

 そう思えば少しは気が楽にはなるのだが…。


 「アヴィルナくん?大丈夫、私が居るから。もし、あなたに適性がなかったら…代わりに私が、魔法使いになります。」


 彼女的には、気休めに言ってくれてるのだろう。

 確かに…私が継がなくても誰かが継げばいい。

 今や私には…弟だって居るのだ。


 「ああ。誰かが継いでくれれば良いだけだからな?最悪、誰も継がなくたっていいさ。エルミリスちゃんの件で分かったが、他にも魔法使いの素質を持った者が街には居るって事だからさ?」



────



 その次の日、風の玉で適性を調べたがダメだった。

 お義父様もそれにはショックを隠せない様子だった。

 私は一体、何の属性に適性があるのだろうか?


 この日を境に、お義父様は仕事から帰宅する度、私の適性探しに躍起になっていた。

 流石に、お義父様のその様子は、お義母様にバレてしまい、家の中で魔法の練習をしていた事も露呈した。

 怒られるかと思ったが、全然だった。

 逆にお義母様の方が、私の適性属性について真剣に向き合おうとしてくれた。


 まず、お義母様は、幼いユリヴィスの面倒を見つつ、属性について文献を読み漁り始めた。

 その間も、私は魔法教本を読み進め、魔法の基本となる魔力の鍛錬を怠る事はしなかった。


 お義父様については、エルミリスちゃんへの魔法の手解きをするようになっていた。

 

 「アヴィルナの妻となる許嫁なのだから、私の子も同じ。」


 と私とお義母様に言って。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ