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エルフさん♀には秘密が多い  作者: 茉莉鵶
第4章 青春期 もう一つの未来編
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第31話 英雄の家


 「それにしても、エルフ…さ?今の姿の方が俺、好きだ。」


 クゥイルデに続く街道沿いを、私とリゼイルは手を繋ぎながら歩いていた。

 急に私の顔をジッと見たなと思えば、それだった。


 「ねぇ?リゼイル。前の私と…結構、違う?」


 「ああ、全然違うぞ?今のエルフは…凄くお淑やかな感じだな。正直、手を出しづらいな…。いや、可愛いんだけどな?」


 お淑やかな感じ…それでピンときた。

 恐らく、『性別転換毒』の影響なのだろう。

 ユリエナお祖母様の特徴が隔世遺伝で出たのだ。

 鏡を見たわけではないので、あくまで想像だが。


 「えっと、多分ね?今の私、校長が大嫌いな…恋敵に似てるんだと思う…。」


 「いやぁ…アヴィンさんの気持ち、俺…分かるかも。」


 おいおい…リゼイル。

 なに平然とそんなこと言っちゃってるんだよ。

 校長の前では、絶対にやめてもらいたい。


 「でも、外見とは裏腹に中身は気が強いんだよ?」


 「何言ってるんだよ。それはエルフのお祖母様の話だろ?俺は別に、外見はどうでも良いんだよ。中身がエルフならな?」


 これこそ、なに平然と言ってくれてるんだよ!!

 事案だった気がする。

 それからの道中、照れ臭くてしょうがなかった。



────



 ──ガチンッ!!


 リゼイルが玄関の金属製の扉に鍵を入れて回した。


 「なんか、見覚えあるよな?この場面。」


 ──ギィィィィッ…


 扉の取っ手をリゼイルは掴むと、押した。

 すると、家の中へ向かって扉が開いていった。


 「ただいま。母さん、父さんの旧友のお孫さん、連れてきた!!」


 「おかえり、リゼイル。お父さんの旧友ですって?どれどれ…って!?ユリエナ?!…にしては若すぎるわね。このお嬢さんは、アヴィンのお孫さんてことでいいかしら?」


 まず、お祖母様の名前が一番先に出た。

 と言うことは、さっきの想像は確信に変わった。

 やはり、お祖父様の名前がすぐ出てきた。


 「初めまして。私は、アヴィルナ=リーデランザと申します。通称『エルフ』と呼ばれております。」


 「どうして、エリンダルフのあなたが人間の街へ?」


 「はい。魔物との交戦中、私は空間転移の魔法を受けてしまったようです。不意に転移させられた影響で、宙に放り出され落下し意識を失っていたようです。偶然、通りかかったリゼイルさんに介助いただきました。」


 前回より、最もらしい返事が出来たと思う。


 「あらっ!?エルフちゃんは魔物と戦えるの?」


 そうそう、こんなやり取りをしていた。

 今回の驚きは、ユリエナは魔物と戦わないのでだ。


 「はい!私も祖父と同じ魔法使いをしています。」


 ジーッとリゼイルの母親は私の顔を見つめてきた。


 「エルフちゃん、うちの子と同じ目の色してる。」


 これも聞いた。

 でも、リゼイルと私は明らかに違うのだ。

 リゼイルはエタルティシアの生属性。

 私はエリンダルフの死属性。

 生属性から派生したのが死属性なのだ。


 「そうなんだよ。俺たち、一緒なんだよ。それに、ここ来るまでに意気投合しちゃってさ?」


 基本、リゼイルの母親は前回と似たような内容を話してきている。

 こうなると、私とリゼイルが特別なのだろうか?

 まさか、リゼイルも『時間遡行』を受けたのか?


 ユカさんはうっかりが多すぎる。

 だから、門の外に出ていたリゼイルも巻き込まれていないとは、言い切れない。


 「また、お前はそう上手いこと言って!!どんだけの女の子達が泣いて出て行ったか!!」


 「まぁ、母さん。俺、エルフのご両親とアヴィンさんの許しを得るまで、身体の関係にはならないからさ?」


 これが、リゼイルの決意表明なのだろうか。


 「分かりました。リゼイル、宜しくお願いします。」


 「ちょっと、あなたたち!!もう、勝手に話進めないの!!」


 これまでにないセリフをリゼイルの母親は喋った。

 徐々に未来が分岐し始めてきているのだろう。


 「そうだ!!父さんはいつ頃帰ってくる?」


 リゼイルは私に気を遣ってか、話のペースが早い。

 ただ、私にとってそれは、ありがたい事なのだが。


 「もうそろそろ、帰ってくるんじゃないかしら?でも、一体どうしたの?」


 気付けば、リゼイルが私の右手を強く握っていた。

 思わず私もリゼイルの左手を強く握り返した。


 「俺たち、父さんに相談したいことがあってさ?」


 「えっと、俺たちって…エルフちゃんもなのかい?」


 確かに、この場合は俺たちにはなるのだろう。

 私とリゼイルが、英雄学校に行きたいという話だ。

 

 「ああ、エルフも関係ある大事なことなんだ。」


 「何なんだろうねぇ…。でもお前、エルフちゃんとは出会ったばかりなんだろ?」


 ただそこを突っ込まれると、少し弁明がし辛い。

 流石のリゼイルも口をつぐんでしまった。


 ──ガチンッ!!


 ナイスタイミングだった。

 一瞬部屋の中に訪れていた嫌な静寂が破られた。

 玄関の扉の鍵が開く音が部屋に響いたのだ。


 ──ギィィィィッ…


 「ただいまー。ん…?何で…私の家にユリエナが居るんだ!?」


 帰宅し、玄関から居間まできたリゼルディアさん。

 そこで立っていた私のほうをチラッと見た。

 するととても驚いた様子で言ってきたのだ。


 「お父さん、アヴィンの孫娘なんですって!!」


 「アヴィンの孫娘だと…!?確かに髪の色はアヴィンだな?それ以外は…ユリエナの血が濃いみたいだな?」


 とりあえず、祖父母の孫と私は認識されたようだ。


 「初めまして!!私の名前は、アヴィルナ=リーデランザと言います。ですが普段は通称『エルフ』と呼ばれております。」


 「リーデランザの名前、久しぶりに聞くな。私はリゼルディア=ゲルシェルトと言う。宜しくな?これでもアヴィンとは昔は親しい仲でな。」


 既に一日、リゼルディアさんと会う時期が早い。

 アヴィンから、大災の話を聞いている体にしよう。


 「祖父に、大昔の大災を共に戦ったエタルティシアの親しい戦友が居ると、聞かされておりました。まさか、リゼルディアさんの事でしょうか?」


 白々しく、以前ここで聞いた話を手短に話した。

 リゼイルはその手があったかという表情で頷いた。


 「アヴィンめ…。しっかりと孫に伝えておったか。恐らく、私の事だろうな?ただ、厳密にはもう一人居るんだが…。流石に、ユリエナの前では言ってはいないか…。」


 「父さん、相談したいことがあるんだ。」


 おいおいおいおい。

 リゼイルよ、このタイミングでなのか?!


 「今、私はエルフちゃんと話をしている!!」


 確かに、今は私とリゼルディアさんが会話中だ。


 「いいから聞いてくれ!!俺たち、英雄学校に入りたいんだ!!」


 なるほど。

 そのもう一人は、英雄学校に居る。

 だから、良いタイミングとは思うが、強引過ぎだ。


 「そうそう、エルフちゃん。そのもう一人は、その英雄学校に居るんだ。って…小僧!!英雄学校行きたいのか?!」


 「ああ。エルフは魔物と交戦中に『空間転移』の魔法を受けて、クゥイルデまで飛ばされて来たんだ。エリンダルフまで帰るには今の俺たちでは心許ない。だから、英雄学校に入ったら鍛えて、仲間を募る予定なんだ!!」


 主な目的的にはそんな感じだ。

 入学さえしてしまえばこっちのものだ。

 あとは、シルヴァス先生とミュレーゼ学長次第だ。


 「なんだ?お前にしては、やる気じゃないか?お前、急に変わったよな?」


 「エルフと出会えたからな?俺はこの出会いを大事にしたい。だから、エリンダルフまでエルフを送りながら、アヴィンさんに結婚の許しを貰おうと思ってる。」


 こんな感じの会話を、以前もした気がしてきた。

 リゼイルは意識してるのだろうか。


 「それじゃあ、今から英雄学校へ編入手続きでもしに行くとしようか?」


 リゼイルにしても、リゼルディアさんにしても…。

 急なのが好きなのは分かってきた。


 もう日は落ちようとしているが、私たちは英雄学校へ向かうことになった。

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