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エルフさん♀には秘密が多い  作者: 茉莉鵶
第4章 青春期 もう一つの未来編
30/40

第30話 再びエルフ♀さんになった日


 守護者の宇宙船が地面に墜落する未来に変わった。

 ここから先は、私の知らない未来が広がっている。


 ただ、私はリゼイルたちを連れ帰ることは決めた。

 それには、ユカさんたち守護者の協力が必要不可欠だった。

 まず、クゥイルデの街まで運んで貰わなくては…。


 先程私の指摘でようやく救難信号が発出された。

 要するに、ユカさんはうっかりが多いのだ。

 時間遡行前の私は、そのユカさんのうっかりが重なって、女性の身体にされたり、人間の街の郊外に降ろされたようだ。

 普通に考えても、あり得ないこと尽くしだ。

 それは上官が特例措置の判断を下したのも頷ける。


 同級生の鈴木由香もかなりのうっかりさんだった。

 それに加えて早とちりも多く、彼女に振り回されたクラスメイトの数は少なくない。

 これも何かの偶然か?

 考えたくもないが、あの日起きた暴走ダンプの事故だが、実は何かの陰謀でも隠されているのだろうか?


 「少年。今日はお前さんのおかげで本当に助かったぞ?」


 ユカさんから見れば10歳なぞまだまだ少年だろう。

 まさか中の年齢が40歳近いとは思わないはずだ。


 「いえいえ。当然のことしたまでです。」


 自分が未来を変えてしまったからとは言えない。

 しかし、それは私にとってもユカさんにとっても、悪い事ではなかった。

 機体は大破したが、大事にはならずに済んだのだ。


 「お前さん…さっきから、私の顔をまた見ておるだろ?そんなに私に似た女性が居るのか?」


 無意識のうちに、彼女へ目をやっていたらしい。

 この世界に来てから、色々不思議なことばかりだ。

 あまり深掘りしたらしたで、私の身に危険が及ばないとも言えない。


 「うーん…。ただの私の気のせいだったかもしれないです。あまりにも、ユカさんがお綺麗なので…。」


 今更だが、歳上女性に憧れる少年を演出してみた。

 それよりも私には大事なことがある。


 「また、歳上の女性をからかうもんじゃないぞ?」


 「えへへ…。」


 まぁ、こんな流れでいいか。

 それにしても、まだ迎えに来ないのだろうか。


 「それにしても、遅いな…。こちらも心配になる。」


 未来が変わったことで、この辺りも変わったのか。


 「もしかして、空の上で交戦中かもしれませんよ?」


 「まさかな?先程は被弾こそしたが、撃墜したぞ?」


 そんな話をしている時だった。

 突如として、私たちの上空だけが日陰になった。

 空を見上げても視認すらできない。


 「来たようだぞ?少年。」


 そう言うと、無線機のようなもので会話を始めた。

 それは私が絶対に聞いたことのある言葉だった。


 「すまないな。横にいるエリンダルフの少年に命を救われた。クゥイルデに行きたいそうなんだが、連れていっても良いか?」


 何を言っているか、私には筒抜けの言葉だ。

 そう、ユカさんは日本語で僚機と交信している。

 まさか、こんなところで日本語が聞けるとは。

 このユカと名乗る女性、鈴木由香かも知れない。

 私はそう思わざるを得なかった。



────



 「少尉!!もう直ぐ降下ポイントに到着します!!」


 あの後、私とユカさんは僚機に乗り込んだ。

 僚機の操縦者はコウジと名乗り、軍曹だと言った。

 恐らく、日本人なのだろう。

 二人だけの会話には、日本語を用いていた。

 この世界で日本語を話せば、秘匿性も高いだろう。


 「分かった。そうだ、少年。これを持っておけ。」


 そう言ってユカさんが私に何やら手渡してきた。

 それは縦型のお弁当サイズの何かの端末のようだ。


 「これは何でしょう?」


 「これさえあれば、私が近くを飛行時に交信が可能だ。」


 「そんな凄いものを、私に良いのですか!?」


 「ああ…。大事にしとけよ…?」


 何だ何だ、この展開。

 いつもの流れであれば、惚れた腫れたなのだが。


 「分かりました!!ありがとうございます!!」


 「降下地点到着。アヴィルナくん、さっき登ってきた位置に立てるかい?」


 「はい!!」


 一秒でも早く降りて、リゼイルに会わなくては。

 その思いが強かった私は機内の転送位置へと立つ。


 「ありがとうな、アヴィルナ?また、連絡する。」


 はじめてユカさんが私の名前を呼んでくれたのだ。

 慌てて返事をしようと思ったが、既に地上だった。

 また縁があれば会えるだろう。

 それに、もし私に用があれば端末に連絡が来よう。


 「さて…。」


 そう言って私はクゥイルデの街道を歩き始めた。

 確か、この街道で私はリゼイルと出会った。

 こんな少年の姿だ、恐らくリゼイルも私とは気付かないだろう。

 それにここは、リゼイルのいた場所より少し先だ。


 「そうだ…。」


 手持ちの荷物の中に、毒属性魔法の記された母親の手記があったのを思い出した。


 ──ペラッ…

 ──ペラペラペラペラッ…


 実は、全ての頁の毒属性魔法を確認してはいない。

 ここから街まではそこそこの距離がある。

 手記を読み魔法を覚えるだけで暇つぶしにもなる。


 凄く興味深い魔法を偶然見つけてしまった。

 こんな魔法、誰でも使えたら正直ダメだと思う。


 「『性別転換毒』!!」


 私はもう一度だけ、女性の身体になりたくなった。

 気づいたら私は、この魔法を詠唱し終えていた。

 でも、手記に効果時間は記されていなかった。

 なので、実際どれくらい続くのかが楽しみだ。


 怪しげな桃色の液体に、私の全身は覆われた。

 するとどうだ、驚くべきことが私の身体に起きた。

 胸は膨らみ、下半身の膨らみが消えてしまった。


 「わぁ…。」


 実際、自分の手で触れてみた。

 今朝方の身体の状態に似た感触をしている。

 だけど、どこか違う感じで違和感がする。

 これが私が女性になった時の感触なのだろうか?

 そういえばそうだった…。

 エルフだった時は、母親の身体のコピーだった。


 さて。

 気を取り直して、クゥイルデの街へと急ごう。


 「おーい!!エルフー!!」


 ん?

 後方から聞き慣れた声が聞こえてきた。

 しかも私のことをエルフと呼んでいる。

 ゆっくりと後ろを振り返った。


 「あれ…。エルフ…だよな?」


 駆け寄ってきたのは、リゼイルだった。

 でも、何故だ?

 明らかに、未来は変わっているはずだ。

 なのに、どうしてリゼイルは覚えているのだ?


 「そうだよ?リゼイル。でも、何で…私って分かったの?」


 ──ギュッ…


 「今朝、俺は英雄学校の門を出て、エルフを呼んだよな?」


 リゼイルは私の両手をそれぞれの手で握ってきた。


 「私は、先に門を出たリゼイルを追いかけた。」


 「やっぱりそうか!!あの記憶は、夢じゃなかったんだよな…。でも、エルフの姿、微妙に違うよな…?」


 やっぱり、私の姿は違うのか。

 私の感じている身体の違和感はそれだろう。


 「リゼイル、私ね?本当の名前、アヴィルナって言うんだけど…。」


 「そうなのか?!まぁ…細かいことは良いよ。お前が、俺のところに戻ってきてくれたんだからな?それだけで、俺はいい。」


 ──グイッ…


 「えっ!?」


 リゼイルは手を引いて私を自分の元へ引き寄せた。


 ──ギュゥゥゥゥッ…


 「もう、どこにも行かないでくれ。」


 そう言いながら、リゼイルは私を強く抱きしめた。

 クゥイルデに戻ってきて良かったかも知れない。


 エルミリスとは気持ちが微妙にすれ違っていた。

 あの時、私の中でやるせない気持ちが生まれた。

 だから私は、リゼイルに癒しを求めてしまった。


 「うん。でもね?前は、私たち焦りすぎてたよね?だから、今度は…ゆっくり付き合いたい!!あと、私を呼ぶのエルフでも良いよ?」


 「そうだな。俺は、アヴィルナ…いや、エルフが側にいればいい。なら、父さんと母さんに紹介しなくちゃな?」


 リゼイルが分かってくれてホッとしている。

 ここからは、本当に時間との勝負だ。

 どれだけ早く、英雄学校に入学出来るかだ。

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