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エルフさん♀には秘密が多い  作者: 茉莉鵶
第1章 幼少期編
3/40

第03話 小さな許嫁


 「こんにちは!!」


 家の外から可愛らしい大きな声が聞こえた。

 私は今日で4歳の誕生日を迎える。

 そのお祝いに、近所の子供でも呼んだのだろう。

 そう思っていた。


 ──ガチャッ…


 玄関が開く音が聞こえた。


 「お邪魔します…。」


 祖父母の家は、二階建ての一軒家になっていた。

 玄関を入ると、ホールがある。

 そこから各部屋への扉や階段、廊下が続いている。

 遊び相手のいない私は、ホールでよく遊んでいた。


 いつものように今日も私はホールで一人きり…。

 読めるようになってきた本を広げ、眺めていた。

 そこへだ…。

 玄関から同い年くらいの少女が入ってきたのだ。

 後ろから、身なりの良さそうな男性も続いた。


 「よいしょっ…と。こんにちは…?」


 ホールの床から腰を上げ、立ち上がった。

 流石に…お客さんが来ているのだ。

 床に座りながらは失礼だろう。


 「こんにちは!アヴィルナくん…だったかな?覚えているかな?アヴィンの幼馴染のイシェルザだよ?」


 イシェルザと名乗った男性は、アヴィンの幼馴染と言った。

 アヴィンとは私の祖父の名前だ。

 ああ…。

 思い出した気がする。

 確か、1〜2歳の頃だったか…。

 家の外で祖父に抱っこされながら会っていた。


 「お久しぶりです。お医者さんのイシェルザさん。」


 「おお!覚えていてくれたのかい?!流石…あのアヴィンのお孫さんだ、聡明だね。」


 流石に精神年齢が30歳とは口が裂けても言えない。

 そういえば…。

 先に玄関に入ってきた、少女の姿が見えない。


 「わっ!!」


 「わあっ!?」


 いきなりだった。

 イシェルザさんの背後から、少女が大声で現れた。

 平静を装うことは容易だ…。

 だが、折角私を驚かそうとしてくれたのだ。

 それでは少し可哀想に思えたのだ。


 「びっくりした?」


 ゆっくりとイシェルザさんから少女は離れた。

 そして、私の目の前までやってきた。


 「うん!!びっくりした!!」


 ──ポンッ…。


 「こらっ!!エルミリス!!アヴィルナくん。私の孫娘が申し訳ないね…。」


 イシェルザさんは、孫娘と呼ぶ少女の頭頂部を軽く叩いた。

 その少女はエルミリスと呼ばれていた。

 とても可愛らしく美しいエルフの少女だ。

 肌は透き通るように白く…。

 目の色は水色で…。

 髪は白金髪だ…。

 アニメのキャラで居そうな感じだ。


 「ん?アヴィルナ。誰か来てるのか?」


 ん…?

 玄関開けたの…祖父だよね?

 しかも、予定外の来客なの…?

 そんなことが頭の中を駆け巡る。

 そこへ何食わぬ顔で、祖父が二階から降りてきた。


 「イシェルザさんが来てます!!」


 「ああ、ゴメンゴメン。玄関の前で来るの待ってたんだ。でも、なっかなか来ないから一度用事を済ませに戻ったんだ。」


 良かった…。

 玄関から二階に向かう祖父の姿は、先程見ていた。

 でも、玄関開けっ放しだったのには正直驚いた。

 可愛い孫がホールで一人遊んでいるのにだ。


 「すまんな?アヴィン、勝手にあがらせてもらったぞ?」


 よっ!とイシェルザさんは、祖父に向かって手をあげてみせた。


 「構わん。どうせ、いつもの事だろ?」


 「今日は、例の話をしに来たんだ。」


 イシェルザさんは、少女の肩をポンポンと叩いた。

 すると少女は恥ずかしそうに少し俯いた。


 「ああ、そうかそうか!!アヴィルナ?悪いが、少し大事な話があるんだがな?私についてきなさい。」


 え?

 私に祖父から大事な話がある?

 何のことだろうか…。

 4歳に至るまでにも、周囲で色々なことが起きた。

 だから、大抵のことには驚かなくなった。

 でもまた何かあるのか…。


 そんな事を思いながら、祖父の後をついていく。


 ──ギュッ…


 あれ?

 柔らかい感触だ…。

 私は、歩いている最中に右手を握られた。


 ふと自分の右側の手元を見た。

 可愛らしい手が見えた。

 目線を上にゆっくりあげる。


 「わぁ…?!き…キミ、な…何してるの?」


 正直、ビックリした。

 女の子の手なんて、最後いつ握っただろう?


 「えっと…。アヴィルナくんと…手、繋いでるの…。」


 少女が私の横に並び、手をしっかり握っていた。

 そして、私の方を見ると恥ずかしげにそう言った。

 彼女の熱や緊張が…手から私にも伝わってくる。


 「あ…あの、さ?エリミリスちゃん…だよね?」


 「うんっ…!!」


 えっと…。

 こう言う時って、どうしたら良いんだろう。

 ふと…絢乃の顔が脳裏をよぎった。

 そうだ、絢乃ちゃんを残して私は死んだんだ…。

 彼女には、幸せになっていて欲しい。


 この子とは、ああ言う流れになれるのだろうか…?


 「ねぇ…?ねぇ…?アヴィルナくん大丈夫??」


 ああ…。

 考え事をしてしまっていた。

 慌てて、ふとエリミリスちゃんの方を向いた。

 すると、心配そうな表情をしていたのだ。

 何か…その表情に、心を射抜かれた感じがした。



────



 今、一階の廊下の突き当たりにある客間に居る。

 祖父と私、イシェルザさんとエリミリスちゃんが、テーブルを挟んでそれぞれ二人掛けのソファに対面で腰掛けていた。


 「それで、イシェルザ。娘の件は約束を違えてすまなかった。」


 「まぁ…仕方ないだろう。だが、またこうしてお互いの孫同士で縁が出来るのだ。」


 約束を違えた?

 娘とは…私の母親のことか?

 それに、縁だ?

 一体どういう…。


 「そうだな。アヴィルナ?先程、イシェルザの孫娘エルミリスちゃんを将来、お前の妻として貰う事が決まった。」


 はい…?

 だから…手を握ってきたのか?

 彼女は、今の話は承知の上で…。


 「アヴィルナくん…。これからずっと…宜しくね?」


 ずっと…か。

 4歳でこんな重い話あるだろうか…。

 今日は、私の誕生日だと言うのに。

 まさか、彼女自身が誕生日プレゼントとでも…?!


 「宜しく…ね?エルミリスちゃん…何歳?」


 「私はねぇ…5歳なの!だからねぇ…?アヴィルナくんより、一つお姉さんなんだぁ!」


 やっぱり…。

 大体、想像はついていた。

 彼女を一目見た瞬間、感じた落ち着き。

 これは4歳ではない…と内心思っていた。


 しかし、私の中身は…日本人の30歳、童貞男だ。

 知識だけでは、彼女よりも豊富のハズだ…。

 口では言えないような知識の方も…。


 「…という事だから、アヴィルナくん?うちの孫娘のエルミリスのこと、宜しく頼むよ?」


 「はい!!」


 それにしても、母親は何をしでかしたんだ?

 それが凄く気になって仕方がない。


 「良かったな?アヴィルナ?こんな可愛い許嫁なかなか居ないぞ?」


 余程なことがない限り、未来の妻が確約された。

 許嫁という響きは、アニメ等でしか馴染みがない。


 「うん。お祖父様?エルミリスちゃんの家はどこ?」


 仲を深めるには、遊びに行き来するに限る。

 でも、彼女の家が何処にあるか知らなかった。

 と言うか、一人で家の外に出たことはまだ無いが。


 「お?私に似て積極的だな?イシェルザの家は、すぐ隣だからいつでも遊びに行けるぞ?」


 は?!

 何と、まさか隣の家とは…。

 一人で遊んでいたので、丁度良かった。

 時間を気にせず遊べそうだ。



────



 そう言えば…。

 この数年の間で、生活環境に変化があった。


 まずは…母親が私を置いて、行方不明になった。

 きっと、自分の恋愛の上で邪魔になったのだろう。


 それから私は、祖父母の養子になった。

 だから、お祖父様ではなく…お義父様が正しい。

 お祖母様…いや、お義母様は呼び方にはうるさい。

 だから細心の注意が必要なのだ…。


 それと…私を養子に貰って、お義母様が変わった。

 若返ったという表現が正しいかも知れない。

 そのおかげか、今年に入ってからお義母様はお義父様の子供を身籠ったのだ。

 エルフだから、歳はただの飾りなのかも知れない。


 二人の間には、子供は一人しか居なかったようだ。

 大事に育ててきた筈が…どこかへ消えてしまった。

 そんな悲しい事はない…。


 ふと…日本での自分の状況に置き換えてみた…。

 悲しすぎる…。

 あんな状況、二度と繰り返してはいけない…。

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