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エルフさん♀には秘密が多い  作者: 茉莉鵶
第4章 青春期 もう一つの未来編
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第29話 変えられる未来


 爆発音のした方へ私はベンチから駆け出していた。

 森へ宇宙船が墜落した場所は、大体位置は分かる。

 それに、森の木々が薙ぎ倒された場所が見えた。


 ──バチッ…バチバチッ…


 墜落場所へ向かう為、森の中を駆けている時だ。

 電気配線がショートする電気音が聞こえた。

 音の方を向くと、銀色の宇宙船が墜落していた。

 機体の損傷は酷く、機首が大破してしまっている。


 本来であれば、私を巻き込んだ為大破を魔逃れる。

 だが、私は自分に起こる未来を変えてしまった。

 その為、機体は地面へと思い切り衝突したのだ。


 「ねぇ!!大丈夫!?」


 墜落した機体へと駆け寄った私は、声をかけた。

 だが、中から反応がない。

 機体の原動機は不明だが、制御は電気のようだ。

 切れた配線から、バチバチと音と光を放っていた。

 このままでは漏電して操縦者の救出も難しくなる。

 とりあえず、この機体を機能停止しなくては。


 「おーい!!この機体、止めるからねー?」


 とりあえず、言っておけば良いだろう。

 こんな状況下で、聞いてなかったはなしだ。


 「ダ…メ…。」


 ん?

 機体の中から、声が聞こえた。

 私は死属性魔法『機能停止』を詠唱し始めていた。

 既に、私の身体中が翆色の靄に覆われてきている。

 生まれつきの属性なら覚えていれば使えるようだ。

 本来、この時点で扱えたのは毒属性魔法のみだ。


 「ねぇ?中から出て来れる?この機体、爆発しそう!!」


 ──バチッ!!バチバチバチバチッ!!


 さっきよりも、電気の火花の出る量が増えてきた。

 それに、機体のあちこちから火花が出始めている。


 「んんっ…。無理…。開かない…。」


 ──ドンッ…ドンドン…ドン…


 また機体の中から声が聞こえた。

 しかも、中から叩くような音までし始めたのだ。

 もうわがままを聞いている暇はないようだ。


 「この機体、止めるよ!!『機能停止』!!」


 ──ブゥンッ…


 今まで原動機はしっかりと動いていたようだ。

 無音だったが、急に止まる音だけが辺りに響いた。

 すると、機体の各所から出ていた火花が止まった。


 ──プシュゥゥゥゥッ!!


 次の瞬間、機体のハッチが強制的に開かれた。

 機能停止した際、搭乗者を逃す機構なのだろうか。


 「おーい!!大丈夫かい!?」


 開いたハッチに向かって、私は叫んでみた。


 「うん…。私は、無事だ…。んっ…眩しい…。」


 ハッチから、この宇宙船の操縦者が這い出てきた。

 ヘルメットとパイロットスーツを着用していた。

 それにヘルメットに酸素マスクが装着されている。

 転生する前の世界の戦闘機パイロットの出立ちだ。

 よく見ると、胸の辺りがかなり膨らんでいる。

 顔が見えないが、どうやら女性の操縦者のようだ。

 まさか、私を押し潰した相手が女性だったとは。


 となるとだ…。 

 私の身体を作り直すのを間違えたのも…。

 私を降ろす場所を間違えたのも…。

 この女性の操縦者が、原因だということになる。


 「確か、侵略者から我々エリンダルフを、あなた方が護ってくれているのでしたよね?」


 「何故、お前のような子供が知っている!!その話、どこで聞いた!!」


 かなり強めな口調に変わったように聞こえた。

 ヘルメットを被っているせいだろうか?

 いや、違う。

 いつの間にか私のすぐ側まで詰め寄ってきていた。

 母親から、あの話を聞いておいて正解だった。


 「私の母親は、そちらのデア=ウェンデグさんと内縁関係にあります。」


 「なにっ?!デア中尉はM.I.A.なのだぞ!?」


 M.I.A.とは、戦闘中に行方不明になった者を指す。

 大抵は、死んだが遺体が跡形もない場合だ。


 「少なくとも、10年前まではこの街に居たようです。一緒に、オル=ドルディオさんも居たようですが。」


 エルミリスの父親の名前も出してしまった。

 私の話の信憑性を増すには、これしかなかった。


 「なんだと…。オル曹長も居たのか!?」


 「オルさんは侵略者の攻撃で、一度あなたと同じく墜落していますよね?」


 ここまで話を伝えられれば、上出来だろう。


 ──パチンッ…パチンッ…


 私の目の前で女性がヘルメットの留め具を外した。

 そしてヘルメットに手をかけた。


 ──スッ…


 ヘルメットを脱ぐとそこには黒髪の女性が現れた。

 何故か、見たらすごく懐かしい気持ちになった。

 絶対、どこかで会っている。

 誰だ…。

 そうだ…。

 私と共に暴走ダンプに轢かれた同級生だ…。

 彼女にとても似ていた。


 「少年よ、失礼したね…。オル曹長の件は私の入隊前の事なのだ。私は、ユカと言う。階級は少尉だ。」


 ユカ?

 どういう事だ…。

 あの時の同級生の名前は、鈴木(すずき) 由香(ゆか)だ。

 確かに、私と共にダンプに轢き殺されたはずだ。

 だが、もし助かったとしても年頃がおかしい。

 明らかに二十代後半から三十代前半の姿なのだ。

 あのまま生きていれば、40歳にはなっているはず。


 「ん?不思議そうな顔をしているな?私の顔に何かついているのか?」


 この状況、不思議そうな表情をしない方が変だ。

 一体、どうなっているのだろうか?


 「すみません…。ユカさんのこと、どこかでお見かけしたような気がしまして。」


 「ん?少年…。まさか、その年で大人の女性に興味でもあるのか?」


 いやいや…。

 大きな勘違いだ。

 ナンパでもしてると思っているのだろう。


 「いえ…。でも、確かに見覚えがあるんです…。」


 「面白いことをいう少年だな?名前は何と言うのだ?」


 ああ。

 そうだ。

 名前を聞いておいて、自己紹介もまだだった。


 「私の名前は、アヴィルナ=リーデランザと申します。以後お見知り置きを…。」


 「おや?オル曹長を救助した、エリンダルフの一人も確か…リーデランザだった気が…。」


 確かに侵略者と交戦中とは言え、異星へと墜落した。

 それも、その星の種族に救出までされている。

 記録として残っているとは、律儀な異星人達だ。


 「はい。私の母親の名前はアヴィエラと申します。それに、もう一人のエリンダルフは、エルシェス=アルゼノンではないですか?」


 「ああ、そうだ。でもまさか、オル曹長を救助したエリンダルフの子息とはな?それに、そのエルシェスとオル曹長は結ばれ、娘を一人もうけたと伝わっているが…。ただ、その一年後に侵略者の手により、オルとエルシェスは死の魔法に倒れたようだ。時同じくして、デア中尉も乗機に装備を残しM.I.A.になられているのだ。」


 エルミリスの件は、公の情報と言うことか。

 それに、例の死属性魔法で襲撃された件もだ。

 デア中尉の件は母親から何となく聞いている。

 それにしても、10年も探し回っているのか?

 未だ母親と合流できていないのは何故なのか。

 既に侵略者や魔族に殺されているのでは?

 色々考えるうち、そんなことも頭によぎった。


 「ユカさん?頼みたいことがあるのですが…。」


 「何だ?言ってみろ。少年には命を救われたからな?私の聞ける範囲でなら頼まれてやっても良いぞ?」


 そう言えば、救難信号は出てるのだろうか?

 結構話し込んでいるが、僚機が来る気配がない。

 それに、あんな衝撃音がしたのに誰も来やしない。

 エリンダルフの街の警戒意識が低いのが分かる。


 「クゥイルデの街まで、私を連れて行ってもらえませんか?」


 今の私ではこの方法しか思いつかなかった。

 本来の未来では、身体を作り替えられ降ろされる。

 だから、クゥイルデ上空は飛行が可能なのだ。

 恐らく、私を降ろした張本人はユカさんだろう。

 声は変声機で変えてはいたが、口調が似ている。


 「可能だが、少年よ少し待ってくれ…。僚機がなかなか来ないのだ…。」


 「そういえば、救難信号は出しましたか?」


 ユカさんの表情が一瞬だけ引きつって見えた。


 「えっ?!ちょっと待っていろ?見てくる!!」


 ハッチの中にユカさんが慌てて戻っていった。

 すると直ぐに、機体に赤いランプが点灯し始めた。


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