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エルフさん♀には秘密が多い  作者: 茉莉鵶
第3章 青春期 旅立ち編
27/40

第27話 学長代理


 三つの計画のうち一つ目が解決し、一週間が経つ。


 二つ目の計画については、人選に難航している。

 このままでは学長が同行という事態に陥る。

 まぁ、学長はアヴィンに会いたがっているので、それはそれで良いのだろうが、長い間英雄学校を空けてしまうことになる。

 この学校は、大災の英雄が居るということで、魔族や侵略者への抑止力となっていた。

 学長がもし不在となれば、均衡が崩れクゥイルデの街すらも、どうなってしまうか分からない。


 三つ目は学長とシルヴァス先生で順調に調査中だ。


 私はリゼイルと、学長の部屋の近くまで来ていた。

 学長が何か話したいことがあると、呼ばれていた。


 「全く、学長…俺たちに何を話したいんだよ。折角、今日は休みだし、一日中エルフといいこと出来ると思ってたのにさ?」


 「あはは…。」


 ここ最近、リゼイルが生属性と死属性の適性を併せ持つ子供をつくりたいと、やけに頑張っている。

 それに付き合わされる、私の身にもなって欲しい。

 そもそも、エタルティシアとエリンダルフの相性は極めて悪く、ほぼ受精しないと文献にも残されている。

 奇跡的に生まれたのがこの世界の人間の祖先だ。


 ただ、私がこの世界で生を受けた時は、異星人とのハーフのエリンダルフだった。

 でも例の衝突事件で、私の身体は母親と同じ純血のエリンダルフとなった。

 一体、遺伝子レベルでは私はどちらなのだろう?


 「絶対、エルフの子供だから、可愛いと思うんだ!!」


 「また、そういうこと言って…。」


 何故だろう。

 以前は馬鹿馬鹿しく思えていたのに…。

 今は何故だから凄く照れ臭く感じてしまうのだ。


 ──コンコンコンコン!!


 勢いよくリゼイルが学長の部屋の扉を叩いた。


 「こんなことするのは、リゼイルだろう?入れ。」


 バレバレだった。


 「流石、学長!!」


 ──ギィィィィッ…


 褒めているのか煽っているのか、リゼイルは勢いよく扉を部屋の内側へ押し開けた。


 「すまんな?ミュレーゼ。うちのバカ息子が。」


 扉が開いた瞬間、聞き覚えのある声が聞こえた。


 「マジかよ!?何で父さんが居るんだよ?!」


 部屋の中を見ると、リゼルディアさんが来ていた。

 学長が話したいことと、何か関係あるのだろうか?


 「ん?リゼイル、分からないか?私の留守中、リゼにこの英雄学校を任せようと思ってな!!」


 「はああああっ?!父さん、話受けちまったのか!?母さんは何て??」


 まぁ、子供としては当然の反応だ。

 だが、まずは学長の件について突っ込むべきだ。

 どうして、英雄学校を留守にすることを決めたのだろうか?


 「ああ、母さんは大喜びだったぞ?ミュレーゼが留守にするおかげで、私は学長代理に就任できるのだぞ?」


 確か、リゼイルの家は普通の暮らしをしていた。

 豊かでもなければ貧しくもないそんな感じだった。

 それなら余計に妻としては、大歓迎だろう。


 「あのぉ?学長!!留守中ってことは、私たちに同行するってことですよね?どんな理由でですか?」


 思わず私は口を挟んでしまった。

 この場で理由を聞かずにはいられなかった。


 「こいつ、アヴィンに会いたいんだとさ?昔、アヴィンとは良い…んんっ?!」


 「リゼ!!それ以上はもういい!!私から話す…。」


 リゼルディアさんが言いかけたところだった。

 学長がリゼルディアさんの口を両手で塞いだのだ。


 「一度しか言わんぞ?私とアヴィンはな…昔、親密な付き合いをする寸前だったのだ。そこに、ユリエナが現れた…。あとは、エルフなら分かるだろう?あの気の強さで、アヴィンを我がものにしたのだ。」


 何となく分かる気がした。

 祖母のユリエナは気が強い。

 アヴィンはユリエナの目を絶えず気にしている。

 それに比べて、学長は言葉とは裏腹に結構女だ。

 下手したら、学長が祖母だったのかもしれない。

 学長はアヴィンを寝取られた感じになるのだ。


 「マジかよ…。エルフのお祖母様って怖いな…。」


 リゼイルはかなりどん引きしていた。

 だけど、私もリゼイルに寝取られた感じだ。

 エルミリスには本当に申し訳ないとは思う。

 でも、私の両親の懸命さを考えると仕方がない。

 エルミリスの母親を救う為にはリゼイルが必要だ。

 繋ぎ止めておく為には、多少の犠牲は厭わない。


 「ああ。ユリエナは大災の際、戦闘には参加しなかったしな?女のこの私でさえ、アヴィンやリゼと共に最前線で戦って居たのにな?」


 そんな話を聞いてしまって、とても耳が痛い。

 学長の隣にいたシルヴァス先生もため息をついた。


 「やっぱり、私あの家飛び出して正解だった。」


 「んっ!?」


 急に先生は、私の母親の声に戻して口を開いた。

 隣にいたリゼルディアさんは驚いた表情になった。


 「リゼ、悪い。実はコイツ、シルヴァスは仮の名でなぁ?」


 学長は、先生に対して顔で何か合図を送った。


 「学長の言われている通りです。私、アヴィンの娘でアヴィエラと申します。」


 既にリゼイルは知っているので、父親も知っておくべきか。

 私のこともあるだろう。


 「おいおい…。ミュレーゼ、それは早く教えろ!!アヴィンの娘ってことは、アヴィエラさん。髪の色からして…エルフちゃんの母親って事かい?」


 確かに、息子のリゼイルが私の世話になっている。

 父親からしたら、その道理を通したいはずだ。


 「はい。エルフの母親です。ご子息には、お世話になっております。」


 「いやいやいやいや。それはこちらも同じですよ!!うちのバカ息子が、お嬢さんの世話になりっぱなしで…。」


 何だか、親同士の話が始まってしまった。

 長くなりそうだったので、学長と私、リゼイルは一度部屋の外へと出た。



────



 「本当に学長は良いのですか?」


 「お前さんたちを見ていたら、無性に会いたくなってな?」


 ──グイッ…


 急に学長が私の身体を自分の身体へと引き寄せた。


 「学長!!ダメだぞ!!エルフは俺のだからな!!」


 「エルフの良いところは、あの女に全く似ていないところさ。唯一、髪の色だけは同じなんだが…。凄く、アヴィンに似てるんだよ。」


 先程から学長は、明らかにアヴィンを私に重ねて、ぼんやりとこちらを見つめている。

 私を取られるかと慌てて声をかけたリゼイルは、学長のその姿を見て呆然としてしいる。


 「リゼイルは雰囲気がアヴィンみたいだよな?まぁ、お前さんも会えばこの意味が分かるよ。」


 ノリが良いところや漂う雰囲気が確かに似ている。

 リゼイルはアヴィンとは親子でもないのだが…。

 親のリゼルディアさんと比べてもその差は歴然だ。


 「なぁ、エルフ?俺、そんなに似てるのか?」


 「うん…。後先考えないところまで…そっくり。でも、そこがアヴィンの良いところなんだけどね?」


 「はははは!!全く、歳を重ねても相変わらずなんだな…。アヴィン…。」


 思い当たる節が学長にはあったのだろう。

 思い出し笑いをすると暫く感慨深そうにしていた。


 ──ギィィィィッ…


 「待たせたね。少しエルフちゃんの事について、話をさせてもらった。リゼイル、エリンダルフの街まで頼んだぞ?」


 「そんなこと分かってる。俺は、エルフの決めることに従うまでだ。」


 当人同士が居ないところで話をされても困る。

 とは言え、部屋の外に出たのは私たちなのだが。


 「とりあえず、明日の朝は早いんだ。ちゃんと寝ておくようにな?」


 「えっ!?どういうことですか?」


 全く、学長が何を言っているのか理解できない。


 「あれ、シルヴァス先生?言ってなかったのか?明日、私たちはクゥイルデの街を発つぞ?」


 エリンダルフの街までの経路が確定したのか?

 まだ調査中だったはずなのだが。


 「まぁ、そういうことなので。宜しくお願いしますね?」


 そういうことは早く言って欲しかった。


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