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エルフさん♀には秘密が多い  作者: 茉莉鵶
第3章 青春期 旅立ち編
23/40

第23話 重なる気持ち


 ──パチパチパチパチ…


 「そっかそっか、リゼイルくんも年貢の納め時かぁ。」


 二人だけの甘い空間が、一気にぶち壊された。

 シルヴァス先生が教室の奥から現れたのだ。

 私にとっては、タイミング的には凄く良かったが。

 別に、先生とは示し合わせたわけではなかった。


 「先生?!まだ、残ってらしたんですか?」


 「うん。ボクは研究熱心だからね?ああ、ゴメンね?続けて続けて。」


 そう言いつつ、先生は少し離れた席へと腰掛けた。

 口元をニヤつかせながらこちらの方を向いている。


 「エルフ。ダメかな?」


 「私ね?実は…エリンダルフの街に許嫁居るんだ…。でもね?私、リゼイルのことも…好きだよ?」


 決して、嘘は言っていない。

 好きというのも…リゼイルを見るとドキドキして、胸が苦しくなるのだから、間違いではない。

 ところが、私の中身は30過ぎの成人男だ。

 だから、リゼイルに抱かれるのには抵抗がある。

 友人関係でなら、男同士楽しめるかもしれないが。


 「それでも良い!!エルフが最終的に、俺なのか許嫁なのかをハッキリ選んでくれ。だから、それまでの間は俺がエルフを幸せにしておくから!!」


 一年経って、少しリゼイルは成長したようだ。

 以前に比べて、言うことが頼もしくなってきた。


 「うん…。その日まで、宜しくお願いします…。」


 ──ガタッ…


 座っていた先生が、急に立ち上がったのが見えた。


 ──ゴンッ!!


 「うぅぅ…。」


 勢いよく立ちすぎて、先生は膝を机に強打した。

 呻き声を出しながら、膝を労り手で摩り始めた。


 ──パチパチパチパチパチパチパチパチ…


 「おめでたいねぇ!!リゼイルくん、宜しく頼むね?」


 まさか、これがやりやかったのか?

 やはり先生は天然ぽくて可愛いところがある。

 だが、宜しく頼むねの言葉には重い意味を感じた。

 先生の正体を知る私だからこそ分かる意味だが。


 「あ、はい!!俺のせいで、先生にはエルフの面倒見て頂いて…本当に申し訳なかったです。」


 そうだ…。

 私が自分の部屋に居辛くなった原因はリゼイルだ。

 そのおかげで、私は先生と仲良くなれたのだが。


 「良いって、良いって。ところでね…?リゼイルくんは、この本の文字読めるかな?」


 先生はリゼイルの目の前で、生属性の本を開いた。

 ちょっと無理矢理感は否めないが、目的は達成だ。


 「えっ!?この文字…。俺の親父が、家族だけが分かる暗号の文字だから覚えろって…。だから、読めますよ?」


 恐らくはエタルティシアの文字なのだろう。

 これは、リゼルディアさんの英才教育のおかげだ。


 「リゼイルって凄いんだね!!私、見直しちゃった…。」


 ──ムギュッ…


 リゼイルの腕へと胸を押し当てながら抱きついた。

 すると何故か、急に気分が高揚してきてしまった。


 「おいおい…。エルフ、何だよ…急に?まさか、俺のこと惚れ直したのか?」


 「うん…。リゼイル、大好きだよ…?」


 自分でも何を言ってるか分からなくなっていた。

 今ならリゼイルに何されても許してしまいそうだ。

 気付かぬうちに、私の頭は女性化が進んでいた。


 「オホンッ…!オホンッ…!ねぇ…そういうの、後で何処か別の場所でしてくれない?」


 先生は咳払いした後、リゼイルと私に釘を刺した。


 「エルフ?もう少しだけ我慢してろよ?今日は、お前のこといっぱい愛してやるからさ?」


 たまには、誰かに愛されるのも良いかもしれない。

 渇き始めた私の心にも潤いが欲しくなった。

 エルミリスは色々と我慢しているかもしれない。

 でも、私は自分の欲望には勝てなさそうだ。



────



 「先生、もしかしてさ…?この本、全部俺が訳すんじゃないよね?」


 「はっはっはっはっ!!よく気がついたね?」


 場所を先生の部屋に移して、リゼイルが生属性の本の翻訳をし始めていた。

 確かに、全部翻訳するのは気の遠くなる話だ。


 「そんなの無理無理!!俺は、ただエルフと話をしてただけだからな!!それに、これやってもさ?俺は何も得しないだろ?」


 リゼイルが、先生の正体を知れば早い気もする。

 そうすれば自ずと手伝いたくなる筈だ。


 「うーん。得、ねぇ…。リゼイルくんは、エルフさんのこと好きなんだろ?」


 「ああ。俺はエルフのことが好きだ。それが俺が得することと何の関係が…。」


 先生はリゼイルの目の前で前髪をかきあげた。

 その姿を見たリゼイルは言葉を失ってしまった。


 「これでも、リゼイルくんは得しないって言える?」


 更にリゼイルに先生は顔を近づけた。

 リゼイルは先生と私を、キョロキョロ交互に見た。


 「せ、先生?!え、エルフと同じ顔してる!!」


 エリンダルフで、背も同じ、口元も同じなのだが。

 案外、細かいところまでは気付かないものだ。


 「だって…先生はね?私の…お母様だもん!!」


 「はぁ!?先生がエルフのお母様だって?!もっと、早く言ってくれよ…。目の前で恥ずかしいこと思い切りしちゃってるじゃないか…。」


 これで、リゼイルは私たちの言う事、聞いてくれるようになるだろう。


 「リゼイル、私たちに協力してくれるかな?」


 「協力してもいいが、一つだけ条件がある。先生、俺とエルフの交際を認めて下さい!!」


 大体、予想できる展開だ。

 リゼイルが男気出してくれたのは、素直に嬉しい。


 「リゼイルくん。教室で私、なんて声をかけたかな?」


 完全に声をアヴィエラに戻して喋っている。

 それにだ…。

 さっきの教室での伏線回収がこんなにも早くきた。

 あの言葉を聞き流していないと良いのだが。


 「宜しく…頼むね…。ああっ!?まさか、あの時点で既に俺は…先生から認めて頂いていたのですね…。」


 「よく覚えていたね!!では、私の自慢の娘を宜しくね?でも、泣かせたら許さないから。」


 「はい。俺の側にいる間は絶対に幸せにします。許嫁の件は、エルフに任せるのでその判断には大人しく従います。」


 本当に…私が見ていない間で、リゼイルは成長したんだと実感させられた。

 それはそうとして、本の翻訳の件はどうするのだろうか。


 「リゼイルくん、そこで相談なんだけど…。今翻訳してもらってる文字について、私に教えてくれないかな?」


 やはり先生には何か考えがあったようだ。

 それにしても、リゼイルに対して接する先生の距離が近い。

 見ていると、何だか心の中がモヤモヤしてしまう。


 「あの、先生?ちょっと…リゼイルとの距離が近くないですか?」


 「ああ、先生気にしないで?俺、別に平気だから。エルフ…お前、まさか実の母親に嫉妬してるのか?」


 「ねっ?言ったとおりになったでしょ?リゼイルくん。うちの娘、可愛いでしょ?」


 やられた。

 私の嫉妬心を試す為、わざと近くにいたようだ。


 「お母様も…リゼイルも…酷いよ!!二人だけで楽しんで!!」


 「おいおい。そんなムキになって怒るなよ?本当に悪かったって…。後で、二人でゆっくりしような?」


 以前なら、リゼイルに対しもっと辛辣に言い返して、突き放そうという気になったはずだ。

 でも今の私は、違う。

 リゼイルと一秒でも長く一緒に居たいと思える。

 私も成長したのかも知れないし、身体の性別に思考が寄ってきているのかも知れない。

 これが女性ホルモンの働きというやつだろうか。



────



 「いやぁ、本当に助かったよ。リゼイルくんが教えてくれたおかげで、無事翻訳終わりそうだよ。」


 「いえいえ…。殆ど先生と魔法のおかげじゃないですか!!」


 急に先生が初出しの魔法を私たちに披露してきた。

 その魔法は『翻訳』と『自動筆記』と呼んでいた。

 しかも、二つを併用することで、真価を発揮する。

 術者の知る言語ならば、本一冊丸ごと翻訳した内容を書き写せてしまうのだ。

 だから、リゼイルの言う通り先生のおかげだった。


 「それじゃあ、リゼイルくんたち?今夜はこの部屋でゆっくりすればいいよ?ボクは食堂にでも行ってるからさ。」


 「ちょっと!!先生!!そんな気を使わないでください!!」


 ──ギィィィィッ…


 先生は手を振りながら部屋を出て行ってしまった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 親が承認した二番目の夫?? [一言] ちなみに、逆ハーレムというタグがありますが、それは複数のパートナーがいることを意味しますか?
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