表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフさん♀には秘密が多い  作者: 茉莉鵶
第2章 青春期 英雄学校編
18/40

第18話 それぞれの新たな道


 私達が英雄学校に入ってから、一年が過ぎた。


 半年前の食堂での一件についてだが、あれは私にとって好機だった。

 いや、レティアにとっての好機だった。

 リゼイルとレティアとの接点はといえば、殆どと言っていい程になかった。

 ただ、リゼイルが一方的に私の部屋の同居人として覚えていただけだった。

 リゼイルはレティアの周りに座れば、私が来ると思ってあの時座っていたようだ。

 そして、私の友人とでも彼女に言ったのだろう。

 レティアは私に友人が居たと、喜んで手を振った。

 これが、あの時私がカウンターで見ていた状況だ。


 それから、私は不人気な料理を、二人の待つ席へとお盆のようなものに載せて運んでいった。


 「エルフ、遅いよ?リゼイルさんも待ってるのに!」


 「ゴメンね?そもそも、そのリゼイルのせいで遅くなったの。」


 リゼイルにはとやかく言われる筋合いもない。

 食堂の外で、私を足止めした張本人だからだ。


 「えっ!?本当なんですか…?」


 「ああ。エルフと大事な話をしててね。」


 確かに、色んな意味で言えば大事な話だろう。

 全ては私のことを諦めないリゼイルが悪いのだ。


 「そうだったんですね!?エルフ、ゴメンね?理由も何も聞かずに言ってしまって…。」


 「悪かったな…エルフ。俺、邪魔しちゃったみたいだな…。」


 なんか急に謝りだして気持ち悪かった。

 非を認めないのがリゼイルの定番だったのに。


 「いえいえ!!邪魔じゃないですよ!!ねっ?エルフ?」


 レティアの様子も変な感じだ。

 普段、食堂で私以外とは一緒に過ごすことはない。

 それが、どうだ。

 この変わり様。

 まるで、水を得た魚のようだった。


 「それで、レティア。このリゼイルだけどさ…。」


 そう言って私はリゼイルについて紹介し始めた。

 すると、私の話を食い気味で聞き入っていた。


 「えっと…さ?何で、エルフはリゼイルさんと…そんなに親しいの?」


 話していて、私達の関係に勘付くとは思っていた。

 でも…私にとっては、もう済んだことだ。

 あれは、優位的な立場を利用されたに過ぎない。

 そうして、私の初めては奪われた。

 そう思えば気も少しは紛れる。


 「リゼイルとは、一瞬だけ付き合ってたから。でも、もう付き合ってないよ?」


 第三者の前で私は遂に公言してしまった。

 リゼイルは不服そうな表情を浮かべていた。


 「そうなんだね。二人は付き合ってたんだ…。」


 「でも、入学する前だから。安心して?」


 「びっくりしたよ…。殆ど、私と一緒に居るのに、二人はいつ逢ってたのって?」


 確かに。

 授業以外、私達は大体一緒だった。

 そうなると、寝ている間くらいしかないだろう。


 「ほらほら、お料理冷めちゃうよ?食べよ食べよ?」


 「そうだな…。食べようか。」


 諦めた表情でリゼイルは夕食の料理を食べ始めた。



────



 部屋に戻るとレティアに、ガン詰めされた。

 何故、英雄の息子と恋人関係になれたのか等だ。

 面倒くさくなって、私の素性を彼女に明かした。

 目を白黒させて驚いていたのは言うまでもない。

 アヴィンは彼女にとって神であり推しだった。


 「アヴィン様のご令孫だとは知らず…大変ご無礼な真似を…。」


 彼女は部屋の床に額をつけ、必死に謝り始めた。

 その様子を見て、私も目を白黒させてしまった。

 まさかそんな謝られるとは。


 「いやいや…。私にとってはただのお祖父様だし…。レティアは私の親友だと思ってるし…。気にしないで?」


 「絶対、言いませんので!!私のこと…見捨てないで下さい!!何でもしますから!!お願いします…お願いします…お願いします…お願いします…。」


 しまいに彼女は額を床にガンガンぶつけはじめた。

 流石に女の子はそんなことしたらダメだ。

 顔が傷になってしまう。


 「ちょっと!!もうやめて!!顔あげようか?ねぇ?」


 「あの…ね?私、リゼイルさんのこと気になっちゃったんだ…。」


 まさか!?

 食い入るように聞き入っていたのは、それか。

 リゼイルとの関係を知りたがったのも、それか。

 彼には言うこと聞く子達も大勢いるはずだ。

 下手したら、レティアが彼の言うこと聞く子達の一人にされてしまうかもしれない。

 彼女にとっては、かなりのリスクを伴う話だ。


 「絶対、ダメだよ…!!あんな男と付き合ったら!!傷つくのはレティアだよ?」


 「お願い…。リゼイルさんとまたお話したいの!!だから、エルフ…私の協力してくれないかな?」


 先程のリゼイルの様子では、半ば諦めた感じには見えた。

 ただ、あの場をやり過ごす為の、演技だったかもしれないが。

 リゼイルの気持ちが、私から離れてくれるのであれば協力したいところだ。


 「良いけど、リゼイルはレティアが思っている程の男じゃないかも知れないけど、いい?」


 これは、一年共に生活してきた親友としての忠告だった。

 どう考えても泣かされない訳がないからだ。


 「私のことなら大丈夫だから、お願い!!」



────



 そして今。

 レティアの隣には、リゼイルが居る。

 結局、あの翌日にリゼイルを呼び出し、レティアを紹介した。

 それから先のことは、何が二人の間であってこうなったのかは、よくは知らない。


 彼女の話では正式に付き合い始めたとのことだ。

 恐らく、私の手前語りたくても語れないのだろう。

 まぁ、私的には全てにおいて良かったと思う。


 一方的な恋愛は、自分も相手も不幸にするだけだ。

 好き同士で一緒になれることが一番だ。

 それが叶わない場合もあることも事実なのだが。


 私も早くエリンダルフの街へと戻りたい。

 でも、リゼイルがレティアとくっついた今、それも難しくなってしまいそうだ。

 クゥイルデの街から、どうやって世界の反対側まで行けば良いのだろう。

 今後の学校生活の中で、エリンダルフまでの経路についての知識をつけていくしかない。

 きっと、リゼイルと別れると言うことは、甘い考えだったのかも知れない。


 でも、もうリゼイルとは終わったことだ。

 幸せそうな二人の邪魔だけはしたくない。


 私の交友の幅を広げる時期にきたのかもしれない。

 前世での経験からいうと、一年過ぎて仲良くなるのは思っている以上に難しい。

 思わずため息が出た。



────



 「この魔法を唱えて、そこにいる魔物を倒してみて?出来ないと思うけど…。」


 モヤモヤした気持ちのままで、私は魔法の授業に出ていた。

 すると、シルヴァス先生が生徒達に向かって、挑発的な事を言ってきた。

 それは毎度のことで皆、聞き流していた。

 だが、魔物相手に用意されている魔法を唱える事は初めてだった。


 任意参加の為、魔法の腕に自信がある生徒が順番に試していった。


 「あれあれ?それで、唱えているの?」


 例の適性が関係しているのだろう。

 目の色が、赤、青、緑、茶、黄、黒、白の生徒が試したが全員とも、詠唱しても発動せずダメだった。


 「誰も倒せなかったら、今日で魔法の授業終わりにしよっかなぁ?」


 任意参加だったのだが、今日で授業が終わってしまうと聞くと、傍観に徹していた生徒達も挙って参加した。


 「あれあれあれ?もう終わりかなぁ?残念だよねー。今日で授業終わりになっちゃうねー?」


 完全の生徒達を煽り始めたが、誰一人詠唱する事が出来ず、皆で何も言い返せないでいた。


 「シルヴァス先生?これ、唱えられたら良いんだよね?」


 「あれあれぇ?嘘つきエルフさんじゃない!!あなたは特に無理無理。」


 私は、檻の中に入れられた魔物の前に立つと、魔法が記された紙を持ち、詠唱を始めた。

 そこに記された内容は、学校で教えるような綺麗な内容ではなく、母親が書き置いた毒属性魔法にも似た、おどろおどろしい内容だった。


 「『死の吐息』!!」


 ──ドサッ…


 急に目の前で今まで生きていた魔物が倒れた。


 ──ムギュッ…


 シルヴァス先生が私に駆け寄ると、抱きついてきた。

 明らかに先生には胸の感触があった。


 「(ちょっと、エルフさん。あとで、私の部屋に来なさい。)おめでとう!!エルフさん!!」


 皆に分からぬようシルヴァス先生が小声で喋った。

 その後で、大声で私を褒め称えてきたのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ