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エルフさん♀には秘密が多い  作者: 茉莉鵶
第2章 青春期 英雄学校編
16/40

第16話 学長♀


 ひと通り、学長から教師の紹介がされた。

 全く、一度に覚えられるはずもない。


 その中で、一人だけ気になった教師がいた。

 名前は、シルヴァスと名乗っていた。


 何故、私が気になったのか?

 まず、目を引く個性的な外見だろう。

 腰辺りまである銀髪で、前髪で目が隠れていた。

 それに、声だ。

 恐らく女性なのだが、声は男性ぽく作った感じだ。

 肌は透き通るほど白く、背も今の私と同じ目線だ。

 身体つきは膝まである外套を羽織っていて不明だ。

 あとは、耳が尖っていて長かったことだろうか。

 

 「あの…シルヴァス先生?」

 

 英雄学校では基本、名で呼び合う決まりのようだ。

 だから、名字を知らないのはザラだと言われた。


 エリンダルフでは名字で大体どこの家系か分かる。

 だからこそ、名字を名乗っていないのだろう。


 そんな事より、別のことを先生に確認したかった。

 

 「はい。なんでしょう?」


 「シルヴァス先生の適性は、何属性ですか?」


 魔法使いでなくても、誰もが適性属性を持つ。

 学長は、目の色が赤いので恐らく火属性だろう。


 ところがシルヴァス先生は、目が隠れている。

 女性であることを隠したいのかもしれない。

 まぁ、何か他に理由があるのかもしれないが。

 その辺は個人の自由なので、ノータッチにする。


 「ボクですか?ほら。見ての通り水属性ですが?」


 シルヴァス先生の手のひらの上には、水の玉がフヨフヨと浮いていた。


 「エルミリス…。」


 つい、その姿にエルミリスを重ねてしまった。

 よく水属性魔法の練習をお義父様としていたなと。


 「はい…?」


 凄く怪訝そうな口元を先生は私に見せてきた。

 そういえば、先程の対応も結構語尾がキツかった。


 「いえ…すみません。先生見てたら、エリンダルフにいる親友のこと思い出してしまいました。」


 「へぇ…?エルフさん、本当にエリンダルフのご出身なのですかぁ?」


 本当に…とはどういう意味だろう。

 私が皆に嘘でもついているとでも言いたげだった。


 ──ポンッ…


 「エルフ?そいつ、変わり者だから放っておけ。」


 「えっ?」


 私の肩口を学長がなだめるようにそっと叩いた。


 「それにだ、シルヴァス!!それを言うならお前も、本当にエリンダルフ出身か?未だに名字も名乗れないだろうが!!」


 「あの…。えっと…。」

 

 見かねた学長は、シルヴァス先生の痛いところを突いた。


 全く…。

 シルヴァス先生は、同族嫌悪なのか?

 もしや、リーデランザ家を知っての言動なのか?

 折角同じエリンダルフで仲良く出来るかと期待していたので、この状況は正直辛い。


 「他人に言われて困ること、言うなよ?ましてや生徒相手にだぞ?お前、教師だろ?別に、今から出てってもらっても、私は困らないぞ?」


 確かに。

 これから生徒になる人間に教師が言う話ではない。

 言いがかりも甚だしい。

 ビシッと学長に言って貰えて少し私の気も晴れた。


 「じゃあ、エルフ。制服の試着に行くぞ?」


 ──ギュッ…


 また私の右手を学長が握ってきた。

 身体は女だが、私の中身は男だ。

 だから、いちいちドキッとしてしまう…。



────



 「ええええっ!?」


 私は思わず大声をあげてしまった。

 それは、ようやく制服の試着をし始めた時だった。

 試着する為の個室には、姿見が置かれていた。

 この世界で鏡はなかなか高価で殆ど見かけない。

 その為、エルミリスの家で見たくらいだった。


 だから、女になった姿を見たのは初めてだ。

 鏡の前に映っていたのは、ほぼ母親の姿だった。

 男の頃の面影は全くなくてショックを受けた。

 女になってから、髪の色が薄いなと思っていた。

 それは、金色から銀色に変わっていたからだった。


 唯一、母親と違っていたのは目の色だけだ。

 やはり、生来持つ属性が関与しているのだろう。


 ──ドンドンドンドンッ!!


 「おい!!どうした!?」


 外から学長が個室の扉を叩き叫んでいる。

 まぁ…。

 大したことでは…ある!!

 エルミリスになんて言えばいいのやら…。

 エリンダルフに帰るのも憂鬱になってきた。


 全ては、色々うっかりし過ぎな宇宙人のせいだ。

 様子を見にきた際は、色々言ってやろうと思う。


 「大丈夫です…。ただ、制服の丈短いなって…。」


 何を考えているのか分からないが、ミニ丈なのだ。

 身体を少し屈めただけで下着は丸見えだろう。


 「なんだ…不服か?エルフに似合うと思ってな?」


 ええと…。

 似合うと思って?

 学長が選んだ制服を着させられたという事か?


 「とりあえず、扉を開けて私に見せてみろ。」


 「はい…。」


 学長に逆らうのが急に怖くなった。

 さっきのシルヴァス先生とのやり取りを、間近で見てしまったからだろうか。


 ──ガチャッ…


 言われるがまま、私は個室の扉を開けた。


 ──ギィィィィッ…


 個室の前で学長が腕を組み仁王立ちしていた。

 学長の両脇には、女性の教師が立っている。

 かなりパンチの効いた光景だった。


 「なんだ、似合ってるじゃないか!!なぁ?」


 着替えた私の制服姿にすぐさま学長が反応した。

 嬉しそうにうんうん頷いている。


 「はい。お似合いだと思います。」


 「エルフさん、凄くお似合いですよ?」


 両脇の先生達も、相槌を打つかの如く続いた。

 こんなミニスカートが許されているのか?

 ここは、次期英雄を育てる為の学校だったはずだ。


 「おい!エルフに、あれ持ってきてやれ。」


 おいおい…。

 まだ私に何か着させたいのか。


 「あの、エルフさん?これなんて如何ですか?」


 制服の担当と思われる女性が、私に手渡してきた。

 柄からして、今履いているスカートだった。


 「可愛いエルフにはピッタリだと思うぞ?」


 「へっ…?!ちっさっ!!」


 言われて広げてみて思わず声が出た。

 今履いているミニ丈のスカートよりも短いのだ。

 薄々感じてはいたのだが、学長はそっちらしい。

 好みの女性を見定めて囲っているのだろう。

 私も完全にロックオンされてしまったようだ。


 「良いから、早く着て見せてくれ。」


 まだ、男よりは良いか。

 私としては、学長の今の距離感悪くはない。

 色々と立場を利用できそうだ。

 ただ、肉体関係に発展しなければだが。

 それに、リゼイルの件もある。

 これ以上は、エルミリスに申し訳が立たない。


 「これ、着なきゃダメ…ですか?」


 「ダメだ!!着なければ、入学の件は無しだな。」


 おっとおっと…。

 遂に、権力を振り翳して私を捩じ伏せにきた。

 本来は、権力に屈したら負けなのだとは思う。

 でも、背に腹は変えられないのだ。

 ここで屈しないと、私の明日や未来が潰えるのだ。

 追い出された先に待つのは、地獄の日々だろう。


 「では、着替えますね?覗いちゃダメですよ?」


 「待て待て!!エルフ、私が着替えさせてやる。」


 はぁ…。

 余計なこと言わなければよかったと後悔した。


 ──ギュッ!!


 慣れた手つきで私の右手を握った。

 そしてまず学長が個室へと入ると、手を引かれた。

 抵抗することも叶わず、私も個室へと入った。


 ──バタンッ!!


 「二人きりだな…?エルフ。」


 急に胸がドキドキし始めた。

 相手は学長だが、やはり私の根は男なのだろう。

 狭い部屋に美女と二人きりという状況で、恐らく興奮しているのだ。


 「学長は…私のことどう思ってますか?」


 異様な雰囲気に私は飲まれてしまっていた。

 言った後で、取り返しがつかないことを理解した。


 「凄く…可愛いと思っている。今すぐ、私のモノにしたいくらいだ。」


 完全にこの流れはマズい…。

 私の言葉一つで、未来が決まりそうだ。

 下手すれば後戻り出来なくなるかもしれない。

 困ってしまった。

 でも、できれば穏便に済ませたい。


 「学長…。今日、お会いしたばかりですので。まだ…心の準備が…。」


 「ははははっ!!なんちゃってな?案外、エルフは真面目なんだなぁ?ますます気に入ったぞ?」


 学長に笑い飛ばされたが、目は笑っていなかった。


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