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エルフさん♀には秘密が多い  作者: 茉莉鵶
第2章 青春期 英雄学校編
15/40

第15話 英雄学校


 リゼルディアさんに連れられ、私とリゼイルは見知らぬ場所に来ていた。

 まあ、リゼイルは知っているかもしれないが。


 霧のような靄がかかっており視界はほぼ無い。

 なんとか二人の姿はボンヤリ浮かんで視認できた。


 ここに来るには、家の裏側に回る必要があった。

 そこでリゼルディアさんは、簡易式の転送門を使用した。

 簡易式だけあって、門に5名通過するか、特定の言葉をかけると消滅する仕組みになっていたようだ。


 「リゼルディアさん!!ここは…どこなのですか?」


 「まぁ、じきに分かるさ?」


 「なんだよ、じきってさ…。」


 おや?

 リゼイルもここがどこか知らなかったようだ。


 「父さん、重いんだけどさ…コレ。」


 先程、家を出る際、リゼイルは母親から色々と荷物を持たされていた。

 リゼルディアさんも荷物の一部を持ってくれた。

 あの感じからすると、寄宿制なのだろうか?

 その場合、部屋はどうなるのだろう。

 色々と不安になってきた。


 「少しは我慢しろ。そうか、コレ持ちたいのか?」


 靄で手元が見えないが、確か…大きな荷物をリゼルディアさんは持っていた記憶がある。


 「いや、遠慮しとくよ。」


 私の希望としては、リゼイルとは別室がいい。

 同室にされたら私の人生おしまいだ。

 リゼイルに何をされるかわかったもんじゃない。

 誓いなんて絶対、私の傍にいる為の口実だ。


 私には未来を誓い合ったエルミリスがいるのだ。

 それに、子供もいる。

 一日でも早く、私はエリンダルフに帰りたい。

 でも、英雄学校に入れば暫くは出られないだろう。


 唯一の期待は、私を殺しかけた宇宙人の存在だ。

 経過を見に会いに来ると言っていた。

 その際、エリンダルフに連れ戻してもらおう。


 ──ギィィィィッ…


 急に重そうな扉が開くような音が聞こえた。


 「なんだなんだ。『剣塵』がどうしてここへ?」


 靄が晴れると、目の前には制服らしきものを身に纏った女性が立っていた。

 私達は真っ白な壁に囲まれた部屋の中に居たのだ。


 女性は綺麗な赤い髪のボブカットで、目の色は翆色。

 胸は大きく痩せ型、背は低めで白い肌の美女だった。


 「すまんな、ミュレーゼ。アヴィンの孫娘を保護してな?」


 「ん?その娘、エリンダルフじゃないか!!」


 私の顔を一目見るや否や、ミュレーゼと呼ばれた女性は大声をあげた。

 アヴィンはリゼルディアさんだから通じたのか?

 もしや、リーデランザの方が良かったのでは。

 彼女は睨みつけるような目で私を見てきた。


 「ああ…そうか、『氷塊』はエリンダルフだったな。」


 急に思い出したように態度がコロッと変わった。


 「大声を出してすまなかった。お前さんの着ている服の紋章を見て思い出したよ。アヴィン=リーデランザの事をね。」



────



 それから私達は、学長の部屋へと通された。

 いかにも偉い人の部屋という装いだ。

 だが、リゼイルの家のような、中世感は漂っていない。

 部屋の中の調度品も、非常に洒落たものばかりだ。


 先程、ミュレーゼと呼ばれた女性が学長だった。

 女性がモノ扱いされる中で、これは凄いことだ。


 「祖父のことをご存知ということは…。」


 「ああ、そうだ。私が『癒炎』のミュレーゼだ。」


 ゆえん?

 炎属性の治癒?

 という事は、司祭なのだろうか?


 「それでだ、学長。私の愚息と『氷塊』の令孫を、この英雄学校に入れてもらえないだろうか?」


 あれ?

 入学できる確証があって来たんじゃないのか。

 昔のよしみでというノリに近いものがある。


 「ほぅ?『剣塵』と『氷塊』の子孫達をか…?」


 「そうだ…。この通りだ。頼む…。」


 学長にリゼルディアさんが頭を深々と下げた。


 「良いに決まっている!!なぁ…リゼ、頭…あげてくれ…。」


 すまなそうな表情の学長は、まるで少女に戻ったかのようだった。


 「本当か!?」


 「ああ。色んな理由はあるがね?まず、エタルティシアは大歓迎だ。で…だ。エリンダルフは…『氷塊』に免じて特例だぞ?か、彼には…い、色々と世話になったからな…。」


 ん?

 お義父様の話をした際、学長の顔が赤らめた。

 しかも、身をよじらせているようにも見えた。


 「(なぁ…?エルフ。学長、何か…変だよな?)」


 リゼイルも何か気付いた様子で、私に耳打ちした。


 「(うーん。そうかなぁ?)」


 私は気付いてないふりをして、小声で返事をした。

 お義父様と昔、学長は何かあったに違いない。

 それが私にとって良い方へ運べば良いのだが…。


 「じゃあ、今日からこの二人のこと頼めるか?」


 荷物を持ってきているので、そのつもりだ。

 とは言っても、私の荷物はないのだが…。

 この着ているエリンダルフの学校の制服だけだ。


 「分かった。では、本校の制服に着替えて貰おうか?その前に、二人の名前聞いてもいいかな?」


 私達の方を向いて、学長がそう言った。


 「お…。」


 ──バシッ!!


 リゼイルが俺と言おうとしたところ、リゼルディアさんに思い切り頭をはたかれた。


 「いてて…。私…の名前は、リゼイル=ゲルシェルトです。宜しくお願いします。」


 リゼイルが私と言う姿はとても滑稽に見えた。

 これは、なかなか見れない光景かもしれない。


 「私の名前は、あ…。エルフ=リーデランザです。よ、宜しくお願いします!!」


 思わず、本名のアヴィルナと言いそうになった。

 慌てて、緊張している風にして紹介を終わらせた。


 「二人とも宜しく。」


 ──コンコンコンコン!!


 学長が部屋の扉の前まで歩いていくと、おもむろに扉をノックした。


 ──ギィィィィッ…


 すると、部屋の扉がゆっくりと開いた。


 「学長、準備は整っております!!」


 扉の外から、女性の声が聞こえてきた。

 まさかとは思うが、今まで外で待機していたのか?


 「では、エルフ?行こうか!!まぁ、リゼはゆっくりしていってくれ。」


 ──ギュッ…


 学長は私の手を握ると部屋の外へと歩き始めた。

 私の顔を覗き込んで見ると、優しく微笑んだ。


 「ああ。飽きたら帰らせてもらうよ。」


 背中越しに、リゼルディアさんの声が聞こえた。


 「え…?お、俺は…?」



────



 「よく聞けよ?この子は、『氷塊』のアヴィンの令孫だ。」


 私は学長と共に制服の試着に向かったはずだった。

 だが、私が今いるのは明らかに違う場所だ。

 割と大きな部屋だ。

 そこへ横並びに机が向かい合わせで置かれていた。


 「どうだ?エルフ。ここに居るのは、今日からお前さんが世話になる教師達だぞ?よく顔を覚えておけよ?」


 そうか。

 この場所は、職員室のような場所か。

 紹介して頂けたのはありがたいことだ。

 でも、何故か学長は私だけを連れて、紹介した。

 リゼイルは制服の試着へと直行させられ別行動だ。

 彼も『剣塵』のリゼルディアの令息なのだが。


 「私、エルフ=リーデランザと言います!!ま、ま、魔法使い…です。よ、宜しくお願いします!!」


 教師達の前だ。

 魔法使いを名乗るのは、おこがましい気がした。

 私は言うのを躊躇してしまった。

 でも、英雄のお義父様の顔もあった。


 魔法使いと言うと、教師の中で騒めきが起きた。


 「エルフさん?『氷塊』様は水属性の適性をお持ちでしたが、あなたは何属性の適性をお持ちなのですか?」


 きた。

 正直に話すしかないか。

 嘘を言ってここを追い出されるのだけは避けたい。

 お義父様の顔に泥を塗ることになる。


 「私は…毒属性の適性を持っております。」


 「ど、ど、ど、毒…ですか?!」


 聞いてきた一人の教師は腰を抜かしてしまった。


 「なぁ…エルフ?それは、本当なのか?」


 学長が嫌疑の目で私を見つめてきた。


 「疑われても仕方ないですよね…。ここで、毒属性魔法お見せいたしましょうか?」


 「いやいや、別にお前さんを疑っているわけじゃないんだ…。アヴィンの孫娘だし…。あれだ、うん。正直に話そう。実を言うと…毒属性魔法は、大災で失われてしまったはずなんだ…。」


 驚愕の真実に暫く呆然としていた。

 恐らく、私の出生には何か秘密がありそうだ。

 14歳になったら迎えに来るという言葉も気になる。

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