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エルフさん♀には秘密が多い  作者: 茉莉鵶
第2章 青春期 英雄学校編
14/40

第14話 英雄と大災


 先程のリゼイルと父親との話は、未だ続いていた。


 「父さん!!どういうことだよ?!」


 リゼイルが驚くのも無理もない。

 私のお義父様もとい祖父と、そんなに変わらないと言われれば、誰だってそう言いたくもなる。


 「ん?言ってなかったか?私と母さんはエタルティシアの末裔だぞ?」


 えっと…。

 エタルティシアとは何だろう。

 エリンダルフの魔法教本には、なかった言葉だ。

 学校の教本にも、書かれていなかった。


 「ああああ!!マジかよ…。絶対に俺、そんな重要な話聞いてないぞ…。」


 急にリゼイルは自分の髪をクシャクシャし始めた。

 確かに、急にそんなこと言われても困る。

 目覚めたら女になってた私よりはマシか。


 それにしても、下腹部がジンジンする…。

 これが女になった痛みなのか?

 いや…違うだろ。

 処女相手に、結構なことしてくれたぞこの男。

 リゼイルの悩ましい表情を見て、幾分気が紛れた。


 「うん。お父さん、今初めて言ったからね?」


 リゼイルの母親がニコニコしながら口を開いた。

 いいぞ、もっと言ってやれ。


 「はぁ、やっぱりかよ…。」


 「そもそも、お前が安易な気持ちで、相手の素性も知らずに手を出したから悪いんだぞ?」


 ごもっとも。

 どちらかと言えば、私は性的搾取された感じだ。


 「家に住ませてやるから、彼女になれと言われました。」


 もっとリゼイルは怒られればいい。

 それくらいしないと、この痛みの気が紛れない。


 「リゼイル、お前って男は最低だな!!そうやって、毎回弱みに漬け込んで連れて来ていたのか!!」


 そんなことしてたとしたら、最悪すぎる。

 遊ばれるのだけはゴメンだ。

 それで子供が出来てしまったら、それこそ地獄だ。

 リゼイルの回答次第では勉強と思って別れよう。


 「そんなことない!!エルフだけだ…。倒れてるところ見た瞬間、俺は心を奪われたんだ!!だから、どうしても…俺のモノにしたかったんだ…。」


 心奪われた?

 まず、リゼイルは付き合い方が間違っている。

 私とエルミリスのように、長年かけて愛を育め。


 素性も知らず、出会ったその日にベッドに入るな。

 それも、自分の優位な立場を利用してだ。

 間違いなくすぐ別れるパターンだ。


 「なら、何度言ったらお前は分かるんだ!!女性はモノじゃないんだぞ!!」


 はぁ?!

 モノって言うなって、既に怒られてるのかよ!?

 私に女性はモノだって、自分で力説してたよね…。


 「…。」


 あれ?

 リゼイル、黙っちゃった。

 その姿を見て私は呆れてしまった。


 「そもそもお前は、大災の英雄である誇り高きエタルティシアだ!!クゥイルデの下衆で腐った決まりなど忘れろ!!」


 おおっ!!

 大災?!

 英雄!?

 私はエタルティシアについて非常に興味が湧いた。


 「あの…。大災の英雄って、一体?」


 「おや…?アヴィンの奴…。肝心な話を孫にしていないのだな…。」


 ん…?


────



 あの後、リゼルディアさんは、私に対して昔話を丁寧に聞かせてくれた。

 リゼイルはというと…。

 私の側をウロウロして、気を引こうとしていた。

 無論、私は無視を決め込んだ為、徒労に終わった。


 昔話をまとめると、こうだ。

 昔、エタルティシアとエリンダルフの種族がいた。

 長年、二つの種族は友好的関係を築いていた。

 ある時、エタルティシアを基に、人間が生まれた。

 エタルティシアは人間と交雑し、数を減らした。

 エリンダルフは危惧し他の種族との交流を禁じた。

 そんな折、人間の領域に外界からの侵略が起きた。

 エタルティシアと人間は侵略者と交戦を始めた。

 戦いは熾烈を極め、侵略者は次々と増援を送った。

 見かねたエリンダルフは、遂に重い腰をあげた。

 エリンダルフはエタルティシアに手を差し伸べた。

 両種族が相見えると瞬く間に優勢となり勝利した。

 この出来事を、大災と呼び後世に語り継いだ。

 その際に活躍した者達を、英雄と呼び讃えた。


 そういえば、あの宇宙人は…?

 この星を護ってるって言ってたよね…。

 侵略者にやられたって言ってたけど…。

 まさか、エリンダルフは外注に出してるってこと?

 知ってるのかな…。


 「はいっ!!リゼルディアさん。質問、良いですか…?」


 「お、エルフちゃん。何でもどうぞ?」


 リゼルディアさんが嬉しそうだ。

 やけにニコニコしている。

 普段、息子しか居ないからだろうか。


 「大災の英雄の中に、祖父のアヴィンやリゼルディアさんは含まれていますか?」


 「よく聞いてくれた!!アヴィンは『氷塊』と呼ばれ、私は『剣塵』と呼ばれていたな。大昔の話だがな?」


 『氷塊』は、水属性魔法をお義父様が得意としているので、何となく分かった。

 でも、『剣塵』って一体何だろうか?

 ちょっと怖くて聞けそうにない。


 「祖父から英雄だという話は、聞いたことが無かったです。」


 「すると、学校でも大災について教わってないのだな?」


 「はい…。もしかすると、もう少し大きくなると教わるかもしれないですが…。」


 学校では10歳の内容までしか教わっていない。

 なので、こうだと言い切れないのが歯痒い。

 教わるにしても、内容が内容だ。

 小さい子には、理解するのが難しいかもしれない。


 「残念だが、その機会はないかもしれないぞ?」


 「父さん!!この話、もう終わりで良いか?俺は、エルフを学校に連れていきたいんだ!!」


 焦った様子のリゼイルが話に割って入ってきた。

 私がまだ、リゼルディアさんと話をしてたのにだ。


 「学校だと?エルフちゃんを連れていって、お前は一体何をするんだ?」


 リゼイルの母親の話では無償で行けると聞いた。

 教本はリゼイルから貰える話になったはずだ。

 その為に私は、リゼイルに処女を捧げた。


 「エルフはまだ10歳だから、学校に編入させてやりたくてさ?」


 「何を寝ぼけたこと言っているんだお前は?エルフちゃんは英雄アヴィンの孫娘だぞ?英雄学校に行くに決まってるだろ?」


 はい…?

 英雄学校って今、言いました?

 学校とは違うのだろうか。


 「あのさ?俺は…父さんの子供だよね?なのに何で、俺だけ…英雄学校に行けないのさ!!」


 「お前は、女遊びが過ぎるんだよ!!それでも英雄の子供か!!みっともない、恥を知れ!!」


 うんうん。

 リゼルディアさんもっと言って!!

 英雄の孫娘をモノ扱いして処女奪った不届者!!

 リゼイル、最低!!

 下衆野郎!!

 リゼルディアさんのおかげで少しスッキリした。


 「リゼイル?私のこと、責任とってくれるよね?」


 「エルフのことは最初から責任取るつもりだ。」


 「聞いたぞ?リゼイル、私の前で誓え。お前は、アヴィンに許しを乞うまで、エルフちゃんには一切手を出してはならない。ただし、普段の生活で触れ合う程度なら許してやる。」


 絶対、順序がおかしい…。

 リゼイルが一番の原因だとは言えるが。

 まず、エリンダルフはクゥイルデの真裏にある。

 お義父様に会えるまでには、かなりの道のりになるだろう。


 「誓うから、俺も…英雄学校に行ってもいいか?」


 軽い。

 本当に誓う気あるのだろうか?

 リゼイルに言葉が、ペラッペラな紙みたいだ。


 「エルフちゃんの護衛と誓いを守ることが条件だ。」


 いやいやいやいや。

 リゼルディアさん自体、息子に甘くしすぎだ。

 だから、リゼイルは誓いなんて守れないと思う。

 女性はモノだと言っていた件が、その証拠だ。


 「お取り込み中、すみません…。英雄学校はどう行けばよろしいのでしょう?」


 先程から二人の会話が全然進んでいない。

 ついつい私は、口を挟んでしまった。

 

 「それじゃあ、今から英雄学校へ編入手続きでもしに行くとしようか?」


 ふと私は気がついてしまった。

 まず、リゼイルとは身体を重ねた。

 リゼルディアさんとは英雄の話で盛り上がった。


 だが、私は未だに彼らの名字を知らない。

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