第13話 意外な接点
リゼイルの家の居間の奥に廊下があった。
その廊下を進んだ右奥がリゼイルの部屋だった。
今、私はリゼイルの部屋の中へ入ったばかりだ。
「さっきは何で拒んだんだよ?」
へ?
拒んだ?
どういうことだ…?
まさか…。
お前、そっち専門なのか?!
「だって…。そっちは違う…。」
「は?な、何…言ってるんだ!?」
いやいやいやいや!!
お前こそ、何言ってるんだ?!
「え?どういうこと?私には分からないよ…。」
「普通、結婚するまでは、さっきの所使うだろ?」
は?
クゥイルデは、婚前はそういうルールってことか。
私には無理だ。
ただでさえ、気が滅入りそうなのに。
そっちでされたら、男同士でしているみたいだ。
エリンダルフは、婚前だろうと普通にしていた。
それで押し通すしかない。
「エリンダルフは、婚前だろうと普通にしているんだ。避妊もしない。だからさ…?リゼイル、普通にしたくない?」
もういいや。
成り行きでこうなることは大体想像がついた。
エルミリス、それに…私の子供、ゴメンね?
私はこれから女にされます…。
これで、あの時のエルミリスが、どんな思いだったか分かるかも知れない。
「そうなのか!?じゃあ…仕方ないよな。俺は、彼女の種族の決まりに従うまでだ。」
「分かってくれてありがとう。」
「早速で悪いんだけどさ?エルフを俺のモノにさせてくれよ。」
早すぎるだろ…。
出会ってまだ半日も経っていない。
この世界の年齢でいえばどうなのだろう?
まぁ、エルミリスも10歳で処女喪失した。
私も今、10歳だ。
この世界では幼い頃から性教育を学んだ。
争いごとが多い世界では、性経験の年齢は低い。
命を繋いでいくということはそういうことなのか?
「私は…モノなの?」
「ああ。エリンダルフではどうかは知らないが、クゥイルデでは女はモノだ。金に困れば、女はモノと同じだからな?容赦なく売られるぞ?」
文化の違いなのか…。
それとも、クゥイルデの街が狂っているのか。
エリンダルフの街は、男女平等だった。
そう考えると、この世界にはあとどれくらい街があるのだろうか。
恐らく、それぞれの街でそれぞれの決まりで生きているのだろう。
だからエリンダルフの街は、外界との接触を閉ざしていたのかも知れない。
詳しくあの街を知る前に、こうなってしまった。
「酷いよ!!私はモノじゃない!!」
「大丈夫だ!!俺は、エルフを売ったりしない。だから…!!」
──ドサッ!!
「いやぁ!!」
強引に私はベッドに押し倒された。
恐らく、抵抗したら痛いだけだろう。
「今から、俺の女になって欲しい。良いかな?」
「うん…。私、初めてだから優しくしてね…。」
────
気づけば真夜中になっていた。
ご両親は、察してくれたようだ。
私達が重なり合っている最中、声掛けがなかった。
女の身体はヤバい…。
男の身体の時よりも、数倍は気持ちよかった。
それに、リゼイルがかなりのテクニシャンだ。
あと、男の時の私よりもリゼイルのが立派だった。
毎日重なり合ったら、頭が壊れてしまいそうだ。
今は、リゼイルの腕枕で私は寝たフリをしていた。
時折リゼイルが私の頭を撫でてくれるのだ。
リゼイルには、男として私は完敗だった。
「なぁ…?エルフ。いつから、学校行きたい?」
寝たフリもバレていたようだ。
「私が起きてるの、気づいてたの?」
「好きな女のことくらい、すぐに分かるよ。」
そっか。
リゼイルは剣士か…。
相手の筋肉の動きくらい読み取れるのか。
「凄いね!!流石、剣士だね。」
「ん。まぁな…?んで、学校どうする?」
少し照れくさそうな声が聞こえた。
「あ、そうそう。学校だけど…今日から行ける?」
なるべく早く行きたかった。
「じゃあ、行く前にもう一回だけやろっか?」
は…?
私はもうヘトヘトなのに…。
でも、快楽への誘惑には勝てなかった。
「うん…。」
────
「んっ…。」
身体を何かが這う感触で、私は目覚めた。
少し目を開けると、外が明るくなってきていた。
ゆっくりと、私は身体の方へと目を向けた。
すると、そこにはリゼイルの姿があった。
濡れた手拭いで、私の身体を入念に拭いている。
「おはよう?リゼイル、どうしたの…これ?」
「エルフの身体見てたら、我慢出来なくて…。」
寝ている私の姿で…か。
まぁ、その気持ち痛いほど分かる。
私も男時代、エルミリスを対象に散々経験した。
お年頃の男子なら、服を着てる相手でも…ありだ。
リゼイルが、私に夢中になってくれてホッとした。
これで、私の当面の生活は保証されただろうか…。
ここで生き抜かなければ、エリンダルフには…エルミリスの元には帰れないのだ。
その為には、男に抱かれるのも厭わない。
不特定多数じゃないから、良いと思いたい…。
「あのね…?あまりし過ぎると…赤ちゃん出来ちゃうから…。」
「分かってるさ!!だから、俺は…こっちでしたいんだよ!!本当に、こっちはダメなのか?」
私の身体を拭く手が、お尻の谷間の方に伸びた。
何があっても、絶対にそっちは無理だ。
「ダメ!!絶対…嫌だから!!そっちでしたら…私、リゼイルと別れるから。」
これで別れると言われれば、仕方ない。
それまでの男だったってことだ。
「分かった…。俺、エルフと一緒にいたいからさ?今日みたくして良い日は教えてくれるか?」
「うん。ありがとう。」
我慢させすぎて、浮気されるのも何か癪に障る。
それで変な病気をうつされても嫌だ。
とりあえず、月経周期を把握しないとダメか。
女の身体になったばかりで、全く慣れていない。
いきなり出血して、血を見て倒れるとかもありそうで怖い。
────
私は制服に着替え、リゼイルと居間に来ていた。
昨日会えなかった、彼の父親に挨拶する為にだ。
「父さん、この子が俺の新しい彼女の…。」
「おい…リゼイル!!そのお嬢さん、どこで助けた?」
リゼイルがまだ話している途中で、質問された。
「クゥイルデの街の街道沿いだけど…。」
「お嬢さん…。その家紋、リーデランザ家だろ?」
え!?
何で…人間が?
リーデランザの家紋を知ってるんだ?
そんなに有名なのだろうか…。
「はい。私はリーデランザ家の者ですが…。」
「おお!!アヴィンは元気しているのか?」
お義父様の名前が普通に出てきた。
リゼイルの父親は、一体何者なのだろうか?
「お父様は、私の祖父をご存知なのですか?」
変な嘘をついても後で面倒だ…。
私の母親の父親だから、間柄的に間違いではない。
「あのアヴィンに、こんな可愛いご令孫が居るとはな…。ああ、話が逸れた。私はリゼルディアと言うのだが、アヴィンとはパーティをよく組んで居たんだ。まぁ、エリンダルフが外交断絶するまでだがな…。」
お義父様のパーティ仲間?!
と言うことは、人間ならばかなりの高齢のはず…。
なのに、見た目はお義父様同様若々しい姿なのだ。
「なるほど!お父様は、私の祖父とは仲間だったのですね?」
リゼイルの父親は、うんうんと頷いてくれた。
「なぁ、リゼイル?お前、そのお嬢さんの素性知らずに手を出したな?」
そうなんです!!
リゼルディアさん…。
何度も何度も、リゼイルは身体を求めてきました。
「まさか…エルフが父さんの知り合いのご令孫だったなんて、知らなかったんだよ!!」
「リゼイル。お前は最悪の場合、アヴィンに殺されるぞ?今から覚悟しとけ。」
まぁ、そうだよね。
お義父様ならしかねない。
「あの…。お父様は今、おいくつなのですか?」
「ああ。私は、アヴィンとそんな変わらないぞ?」
やはり…。
エリンダルフの文明が進化を遂げて、相当経つ。
祖父とは、それ以前の付き合いということだ。




