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エルフさん♀には秘密が多い  作者: 茉莉鵶
第2章 青春期 英雄学校編
11/40

第11話 エルフ♀さんになった日


 夢見心地のふわふわとした感覚の中に私は居る。


 「(あなたの身体を造り替えさせてもらった。まだ身体に定着するまで、目覚めることは出来ないはずだ。とりあえず、安全と思われる場所に降ろしていく。経過を見にまた会いに来るので、その時ゆっくりと話をしよう。)」


 頭の中で声が聞こえてきた。

 これが現実なのか幻聴なのか、自信が持てない。

 私が意識を失ってから、どれくらいの時間が過ぎたのだろうか?


 安全と思われる場所とは、一体どこなのだろう…。

 それにだ…。

 また会いに来るとは、どういう意味だろうか?

 私が目覚めるまで待つ時間すらないというのか。


 「(今回のことは、本当に申し訳なかった。では、また会おう。)」


 急に声が聞こえなくなった。

 言うだけ言って、ハイさようならのようだ。


 すると、急に私の意識が遠のいていくのを感じた。



────



 身体を揺さぶられる感覚がする…。


 「…い!!おい!!大丈夫か?」


 男性の声がする。

 私より歳が少し上くらいの若い声だ。


 ──ユサッ…ユサッ…


 ん?

 また身体が左右に揺さぶられた。

 でも、何か違和感がするのだ。


 「ん…んっ…。」


 ゆっくりと私は目を開けてみた。

 日の光が眩しくて、思わず声が出た。

 え…?

 声が変だ…。


 「おおっ!?エリンダルフ、起きたか?」


 今、エリンダルフと呼ばれた?

 目を完全に開けると、目の前には顔があった。

 耳が長くない?!

 この世界に来て、初めて普通の人間を見た。


 顔を横に向けると、彼の身体が目に入った。

 私は、膝枕されていたのか…。


 「本当に済まない…。」


 「何も謝ることなんかないぜ?急に現れたんだ。木のたもとに横たわった状態でさ?」


 やはり声が変だ…。

 それに、木のたもとに急に現れたとは、どう言うことだろうか?

 急いでいた様子のあの状況…。

 身体が定着するまでの間、見えない状態にする。

 身体が頃合いになったら、見える状態にする。

 まぁ、こんな感じだろう。


 身体の具合を確認しようと視線を脚へと向けた。


 「はぁ…!?」


 おかしい…。

 目の前に、山が二つ谷が一つ…。


 ──ムギュッ…


 「ひぃっ!!」


 思わず私は右の山を右手で鷲掴みにした。

 山頂が服に擦れ、私は悲鳴をあげた。

 母親くらいありそうな大きさだ…。

 本物らしい…。


 「エリンダルフ、何…してるんだ?」


 まぁ…そうだろう。

 側から見たら奇行だ。


 「イタズラされていなかったか確認しただけだ。」


 「いやいやいやいや!!何にもしてないぞ!?」


 嘘も方便だ。

 それにしても、私のこの声。

 どこかで…。

 やけに懐かしく落ち着く声だ。


 「それなら良いんだけど…。疑ってゴメンね?」


 あ!!

 この言葉!!

 母親の声だ。

 おかしな話だが、自分で喋っていて思い出した。

 ゴメンね?とよく母親が、幼い私に言っていた。


 「お…おう。なぁ、こんな場所で何してたんだ?」


 それは…。

 あの…。

 宇宙人の仕業だ。

 明らかに、ここはエリンダルフの街じゃない。

 普通の人間が居るのがその証拠だ…。

 きっと、降ろす場所を誤ったんだろう。


 「気が付いたら…。キミの膝の上だったんだ…。」


 「えっと…。どこからか飛ばされて来たのか?」


 そうだな。

 ものは言いようか。


 「魔物と戦っていたら、魔法を受けてしまって。」


 「お?エリンダルフ、戦えるのか!?」


 おや?

 食いつきがいい。


 「私は、魔法使いだ。」


 「本当か?!俺、探してたんだよ!!魔法使える人間!!」


 ほう。

 これは、いい流れだ。


 「ねぇ?キミはなんて名前なの?私は…エルフ。」


 逆転の発想だ。

 この世界では、エルフがエリンダルフと呼ばれてるなら、今日から私の名前はエルフだ。


 「エルフって言うのか。俺の名前はリゼイル。実家は剣士の家系だ。宜しくな?」


 剣士か。

 前衛が居れば、全然違うだろうな。

 間合いも楽になりそうだ。


 「リゼイル…。キミ、良い名前だね?」


 「そうか…?何か、女に言われると照れるな…。」


 ん…?!

 おんな?

 今、女って言った?


 ──ギュッ…


 「はああああっ!?」


 私は思わず股間に手をやった。

 だが、直後に大声が出た。

 

 ない…。

 居ない…。

 息子が家出していたのだ。

 ショックすぎた。


 「なぁ…大丈夫か?さっきから様子おかしいぞ?」


 「取り乱した…。大丈夫だ…。魔物に、犯されたかと思っただけだ…。」


 今のは、誤魔化すのはかなり苦しい。


 「俺が、確認…してやろうか?」


 何だ…?

 信じてくれた?

 私も…どうなってしまったのか、確認したかった。

 だが、年頃の男に確認させるのは、正直怖い。

 相手に悪意があれば、犯されるだろう。


 「絶対に、変なこと…しない?」


 ゴクりと生唾を飲む音が聞こえた。


 「ああ!!誓う。もし、魔物に犯されてたら直ぐに、医者に見せないと、手遅れになるからな?」


 「分かった…。頼むよ…。」


 ゆっくりその場へ私は立ち上がった。

 目線が低い…。

 私の身体、一体どうなってしまったのだろう…。

 今着ている服は、通っている学校の制服姿だった。

 戦闘機に押し潰される前と同じだったのだ。

 どうやって復元させたのだろうか…。


 私も頭の中では、色んなことが渦巻いてグルグルしてパニック寸前だった。


 ──ズルッ!!


 そんな時だった。

 履いていたズボンと下着が、勢いよく下ろされた。



────



 「うん、大丈夫そうだぞ?それにしても、エルフは処女なんだな…?」


 じっくりと…リゼイルに見られてしまった。

 だが、分かった。

 完全に私は女の身体になっていた。


 「悪いか…?私はまだ、10歳なんだ。」


 言っていて思った。

 10歳にしては…なかなか発育が良い。

 エリンダルフの身体は早熟なのだろうか?

 だから、エルミリスは11歳で妊娠したのか…?


 「そうなのか…!?俺より上かと思ってた…。因みに俺は、13歳だ。」


 そう言いながら、リゼイルは私にズボンと下着を履かせてくれた。


 「恥ずかしいところ確認して貰っちゃって、ゴメンね?」


 「いや。魔物に犯されてなくて良かったよ。この辺りは、そういう話が多いんだよ。」


 エリンダルフの街では、魔物の話なんか殆どない。

 魔法使い等が日々、治安維持を行っているからだ。

 ここでは魔物は野放しなのだろうか?


 「そうなんだね…。そういえば、ここは何処?」


 まず、聞くべき話だった。


 「ここか?クゥイルデだが?」


 初めて聞く地域の名前だ。

 そもそも私は、エリンダルフしか知らない。

 どれくらい離れているのだろうか。


 「私は…エリンダルフの街に住んでいる。そこから飛ばされて来たと思う…。」


 「エリンダルフの街…だって!?世界の反対側にあるって言われている、幻の街だぞ?」


 でたでた…。

 世界の反対側って…。

 しかも、幻扱いされている。


 「うん。エリンダルフの街にはね?人間はエリンダルフしか住んでいないんだ。」


 あ…。

 リゼイルの出立ちを見ると、思い切り…中世だ。

 嫌な予想的中だった。

 恐らく、エリンダルフの街は…どこかの宇宙人が関与している。

 その技術を享受して、あそこまでの近代的な文明が成り立っていたのだ。


 「しょうがない。エルフは俺が…面倒見てやる。だから…俺のパーティに魔法使いで入ってくれ。」


 「えっと…。私…エリンダルフだし、女だけど、良いの?」


 とりあえず、言質だけ取りたかった。

 後で、色々言われても面倒だ。


 「ああ。エルフが14歳になったら、俺と結婚しよう。その時嫌なら嫌でも良いぞ?」


 マジか…。

 私はこれから女にされるのか…?

 拒否権はその時あるって事か。

 まぁ、あと4年ある。

 それまでにリゼイルを誰かとくっつければ良い。


 「分かった。」


 ──ギュッ…


 リゼイルが左手を握ってきた…。


 「じゃあ、クゥイルデの街まで行こう。これは、逸れないようにだからな?」


 「うん…。」


 念押しが一番怪しい。

 リゼイルの手は、緊張からか汗ばんでいた。

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