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踏み潰されたら異世界でした?雷神の魂と人の英知の伝承噺  作者: 喜雨子
雷と序列魔と女騎士は希望となる
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覚醒し求める事

 

  突然の訪問、絶望のデジャブ。

  理不尽がもう一度、襲いかかろうとしていた。


「待て待てって! ちょっ! タンマ! とりあえず話しあいをだな!」


『コココココロロ"ス"スッ"!!!』


 なんでこいつなんでここにいるんだよと内心悪態をつく。

 別個体なのか、同じ奴なのか、それは定かではない。

 一応声をかける事を試みたが対話できる様子も一切ない。

 感じられるのはただひたすらな殺意のみだ。


 親でも殺されたかのような憎悪を撒き散らしその太い丸太並の腕を振るい俺を追ってくる。


 いやいや実際殺されたのは前世の俺なんですが。


『£#$コロス! コロス!? お前ヲ食う*$&£$!!』

 

 バケモノの敵対レベルを明らか一段階あがった。

 逃げる俺をひたすら追ってくる。

 森の泥濘み、蔓や枝が邪魔をする。

 いくら地形の理があったとしてもこのまま追いかけっこをしていては捕まる。

 豚バケモノさんのスタミナえぐそうだし。


 その大柄な体格とは真逆の俊敏さが気持ち悪く考えた末に決断した。


「オッケェー! 話は無理なんだな!? 本気でぶっ飛ばしてやるからな?」


  走り逃げるのを止め、お世辞でも良いとは言えない低レベルの魔闘気を発現させるが、そんなモノお構い無しの如く豚のバケモノは俺へと猪突猛進。


 手加減ゼロ、リミッターゼロ。

 豚の極太巨大丸太右フックが俺のガードを突き抜いた。


「アッ………! ガェ"!!」


  メキメキと不快な音をならし骨が揺れる。

 どう考えても体から鳴っては駄目な音が脳に響く。


 俺は吹っ飛び木々を粉砕しヤンビス森特有の魔大木に風穴をあける。


 さすが声にならない痛み。


 喉奥からはかき混ぜられたような赤がドクドクと押し寄せてくる。骨が何本というレベルではない、 誰かが軽く俺をつつけばボロボロと壊れてしまうのではという満身創痍──


 それでも目の前の怪物は止まってくれない。


『コロス!&!" コロシタ?!??  ココロ£!!" !』


  ダメだ、また意味もなく死ぬぞ、これ。


  なぜ豚が俺を必要に追っていて殺しにくるのかという不条理よりも、また負けるのか、なにも出来ずに死ぬのか、そんな葛藤が俺の眼を殺さなかった。


 非力が故に無力。

 弱肉強食の摂理を身によって体感し俺は歓迎した。


 面白い──……… ここから巻き返す。


 根拠のない自信でリューズこと俺は立ち上がろうとする……が、足はまるで繋がっていないかのように動く気配がない。

 だけども、今の俺には立ち上がろうとする信念がある。どこから生まれたものでもなく、俺を信じたい、アイレッド=リューズとして変えたい


 ―――たった其れそれだけの願望だった。




【              !】


  負けてはいけないという沸き上がる感情をよそに、豚のバケモノとは違う誰かの声が脳を刺激する。

 悪意の無い音が響く。それはリューズの体の芯を叩き起こすような【声】だった。


【………タノ………& チカラをオーダーシて………!】

 

  次は認識できた。それは只の言葉。


  その声を認識した瞬間に全てを理解出来た。

  このオーダーの意味をなぜ俺の気持ちが折れないのかを。


 壊れかかった体に鞭を打ち歯を食いしばりマナを吸収する。 それに応えるようにボロボロな体は淡く光を放つ。

  相変わらず血は止めどなく溢れだしているし、左腕は体の向きとは逆を向いているけど。


 それでも。

 それでも!

 ―――俺はただ理解しただけの、言葉を詠唱とし紡ぐ。


「オ………レはァ………するッ!!」


  言葉が言霊のようにリューズの口より吐き出される。これは全てを変える力。

 俺の中に眠るリューズとしての英雄の力。



「俺は、俺は求ッ!! オーダークリエイトッ! ──雷神の叫び手(インドラル)!」


  言葉を紡いだ瞬間、大量のマナを変換し発現する。


 俺を中心に旋風の如く雷が疾る。

 皮膚の表側が蒼白く放電を繰り返し、音と音がお互いに置き去りを繰り返した。バチリバヂリと鼓膜の外側で鳴り続ける。


 豚のバケモノも体中を根こそぎもっていくような威嚇的な破音に足を止めざるえなかった。


  ヤンビス森は俺が生み出した濃厚な雷のマナに包み込まれ全体が蒼白く包まれる。


 そして爆裂した音。それ音が終わると同時に俺は気を失った。




  ──その夜を後に世界の人々が語る。


  間断なく雷光がうねり、ヤンビス森の空を真っ二つに裂いた雷撃は神の一手、それはこの世界の人々の夜を叩き起こし、神を知らせるが如くの怒りの一撃だと。


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