間章 一人の悪魔
サボり癖
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時空神の命と引き換えに作られた次元の壁。
災禍渦巻く地の線引き……人類が生存する為の枠の中で今、壮絶な戦いが繰り広げられていた。
災禍龍ヒュドラと対峙するのは一人の悪魔。
何度も斬り落としたヒュドラの首。
しかし一つ落とせば二頭の頭が生えてくる。
小さい山程ある体は未曾有の体力を保有しており、丸二日戦い続けたのにも関わらず、息が上がる事無く首が生成され続ける。
「やっかいだな、吐く息は猛毒。凄まじいまでの体力……」
歩む場所が濃い猛毒に侵され、元々あった緑豊かな大地は荒野の如く荒れ果てる。
『マスターインドラル。切断面は威火鎚イカズチで焼きましょう。マナ吸収を阻止するのです』
人の英知の結晶による解析が脳に響く。
上を見上げれば、数百の首が空を覆い尽くすように畝りうね、独立し息を吐く。
「……一首ずつ焼くか」
インドラルはその手に握りしめていた細槍を四散させ新たなにマナを練り具現化させた。
「威火鎚イカズチッ!!」
新たに生成されたのは二メートル以上あるハンマー。
それを両手で持ち全力の魔闘気を纏い、首を求めて上空へと駆けた。
迸るほとばし雷光が目に焼きつき、輝く。
その速度は音を超え、残像だけを残しヒュドラの首を切断する。
鈍器打撃による切断。
──爆音と共に振り抜かれたハンマーはまるで鋭利な刀のような刃物と化す。
「ウラァァア!」
首の断面に向け、横ではなく縦の打撃。
頭の上に持ち上げられたハンマーは天より降り注ぐ一本の雷と共にヒュドラの首を撃ち砕いた。
「やはりマナが吸収出来ぬようになるまで叩くべきだな」
『イエス、インドラル。あの首からは再生の兆しが見えません。消滅するのも問題でしょう』
「しかし────」
頭上を見上げると広がる首の数。
数百の内の一つの首、何の絵図らも変わらない空模様に嫌気が指す。
「クリエイトよ、俺の体は耐えれるか?」
『イエス、インドラル。魔臓器五十六パーセントのダメージ、マナ吸収量十六パーセント低下。変換効率に変わりはありません』
クリエイトの診断結果が響く。
それはこれだけの相手ならばギリギリであろう余力。
「まだ、いけるな」
『イエス、インドラル。威火鎚を維持したままだとおよそ十六時間程で魔臓器のオーバーヒートを起こします」
「了解だ。──……我は今より人の世を守る為に雷神となるッ!」
『イエス、インドラル。全力でサポートします』
これは始まりの物語。誰も知らないお話。
人を愛した悪魔は命を投げ打って、災禍毒龍ヒュドラを討伐した。




