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共同戦線


「こんな場所でこんな大物と会えるなんてな」


 冒険者パーティを纏めているクランコがツルツルのハゲ頭を撫でながらアイネを目で追う。


「大物なのかな? アイネは」


「当たり前だろうよ? 最年少で、第二護衛団団長だぞ? 大物すぎる、しかもだ、話を聞けば団長の座を降りたのだろう? それはそれでびっくりな話だ」


 クランコ含む六人のパーティはこの七層で一月も滞在しているらしい。

 目的は依頼のノキノギの涙。完全に情報シャットアウトを受けたこの空間で、アイネの登場はさぞ度肝を抜いたらしい。


 アイネ自身はクランコのパーティメンバーと意気投合し青白く光る木の下で楽しそうに談笑している。


「最近、ダンジョンから出てねぇからなぁ。早く依頼終わらせて街に戻りてーな」


 クランコパーティも八層に水を汲みに何度も出向いたが水が蒸発してしまい足を止めている。


「そんなに難しいのか? 水汲みは」


「ああ、瘴気が濃いからな、魔闘気にマナが偏ると水を保護するマナが崩れるんだ。前回はなんとか行けそうだったんだが、帰りにワーウルフの群れに出会っちまって……察せるだろう?」


 それに依頼だけじゃねぇんだと続ける。


「あそこに……ランザルクの隣に居る青髪の女見えるか?名前はジュネっていうんだか、アイツの兄貴が奇病でな……その病気を治す薬にノキノギの涙が必要なんだ。だからこちらと必死でな」


 アイネと楽しく談笑しているジュネと呼ばれる青髮の女の子。

 歳はアイネと同じくらいか少し上くらいだろう。

 髪をポニーテールにし、大人の色気のあるローブを身に纏っている。


「美人だろう、ギルドファンクラブとかすげぇぜ? 兄貴も凄く有名な冒険者だったんだ、兄弟揃ってAランク。ランザルクもすげぇが、アイツもギルドの中じゃすげぇんだ」


 まるで自分の娘の様に語るクランコにクスリと笑う。


「ぼうず、笑うなよ。俺ももういい歳なんだ。長い事パーティやってりゃそうなるわ」


「……言いたい事はわかるよ」


「わかるって、おめぇまだ十五、六だろうが! そんな精神だけおっさんになるな、若者よ!」


 ツルツルの頭を撫でながら笑う。

 俺の中身は三十路近いし、アイネともリンクする話に共感の色は隠せない。


 ジュネの境遇話も頭の中から捨て去る事が出来ない。

 これは共闘した方が良さそうだな。


「──……パーティーメンバーが許可を出してくれるなら協同しないか? 俺なら水を持って帰れると思う」


 俺の提案にクランコはこれまでにない眼つきに変わる。

 冒険者として、戦いに身を置く者としての眼つき。品定め。


「ランザルクとパーティを組んでるってだけで色々未知数。聞いてみりゃ冒険者ランクは最低、よくわかんねぇなぼうず。その根拠と自信はどこからくる?」


「実際七層まで降りてきたけど、これじゃダメか? 確かにアイネもいるけど」


「事実は認めてる。ただランザルクにおんぶに抱っこって可能性もあるしな。八層からは全く次元が違う、別の領域だ。ぼうずの言葉を頼ったわ、死んだわじゃ話にならねぇ」


 んしょと、立ち上がりクランコは談笑しているパーティメンバーへと体を向ける。


「ただランザルク本人の口からぼうずの実力が聞ければ、それは最高の根拠になるだろう」


 顔だけを俺の方へ向け、歯を出して笑う。

 そしてフロア中に響き渡るくらい馬鹿でかい声を放った。


「おい! ランザルク=アイネ! このぼうずは強いか!?」


 アイネに向けられたクランコの声は響き渡る。突然の意図も意味もわからない問いに談笑組は静かになる。


 その中、ハテナを浮かべながらアイネは口を開いた。


「強い?……わたしより強いよ?」


 その答えに暫し熟考し振り返る。


「ランザルクにそう言わせる、ぼうず……いや、リューズ。協同の件頼む。オレ達はリューズに乗りたいと思う。勝手だと思うが試す様な真似をしてすまなかった」



 ◇


 ◇


 ◇


 ◇




 俺達は手を組み合った後、パーティの自己紹介をしてご飯を食べる。大人数だとバーベキュー感があっていいな。


 クランコのパーティはジョズ、ナルシア、ビブル、サミ、と紅一点のジュネ。

 皆ジュネの兄と昔からの知り合いで、今回の依頼とジュネの想いから結成されたパーティなのだと。仲間想いすぎる。


 ハーバス管轄ダンジョンだから依頼でもない限り、簡単に出入り出来ないらしく、今回のこの依頼と集まりはジュネにとって頭の上がらない巡り合わせだったとか。


 それにしても……クランコ達のはしゃぎっぷりが凄い。

 はしゃぐというか食いっぷりか? 相当ダンジョンの缶詰は辛かったようだ。


「うめぇっすよ! これ! な、な、なんすか!美味すぎっす! ダンジョンに来てこんな美味いご飯にありつけるなんて思ってなかったすよ!」


 クランコのパーティはダンジョン飯、要するに保存食で過ごしていたらしい。

 栄養こそ取れるが味がなく、砂漠のようにパサつくパンにとても苦いが栄養素が高いリリル草の塩燻製。毎日、毎日、毎日。そんな物ばかりを食べていた冒険者に俺のご飯は狂気そのものだった。


「サミ! てめぇこのやろう! その肉は俺が食おうって! おい! こら!」


「うむ、うまい」


 サミとビブルがアイゼンバードの照り焼きを取り合う。その横から颯爽と仏頂面のジョズが掻っ攫う。冷静さが制したな。


「ジュネこれ美味しいナ」


「最近ナルシアさんはお酒とリリル草だけでしたもん、こんな豪華な料理。リューズくん凄いですね」


「リューズが魔法鞄持ちとは驚いた。それにこの蒸留酒、地上でも中々飲めるもんじゃねぇ。美味すぎる。肴一つとっても、お店できるんじゃねぇか?」


 クランコは俺が秘密に作っておいたアイゼンバードのささみ燻製をアテにお酒を飲む。

 もちろんお酒はリリンゴッドだ。

 他にもお酒のストックはあるが、これが一番高い。良いお酒だからこそ、みんなで飲むと旨い。


「リューズ! 私も一緒にのむっ!」


 アイネが隣に腰を下ろす。

 和気藹々と進む豪華な食事は、大木の青く光る実と共に、明日の糧になるのであった。


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