断章_不穏_
とある者達は闇の中で話を咲かせていた。
闇はこの世界において捨てられた闇と表現され、人の記憶からは既に忘れられた場所であった。
瓦礫と荒野のような残状に、過去にあったであろう国の姿はない。
序列魔四──堕神アビマス
魔王の懐刀と呼ばれた堕神によりこの街は一夜にして滅んだ。そして瘴気と共にこの世界より隔離したのだ。
ハーバスより南西に位置するこの場所は四百年程前より完全に孤立した間抜けの殻のはず"だった"──
「いつまでここにいるの?」
「ステア、少し黙れ。知恵を貸した阿呆の国が未だに事を運ばん」
黙れと言われた少女は背中に自分の丈をゆうに超える斧を背負っており、青白い肌をしている。
それに大斧の重さも感じさせぬまま拗ねて座り込んだ。
「まぁそうカリカリなさんなって、ビルドもステアもよおやってる。時がくりゃ、そりゃでかい花火が咲き乱れるちゅーもんや」
ハットを被る優男のような男はひらりひらりとおちゃらけ、自前のステッキをくるくると回す。
その男の掴みにくい行動はビルドにとっても日常茶飯事であり、咎める理由もなかった。
「お前はいつだって間抜けに生きてるなシェイク。だからって今回の件、手を抜くなよ?」
「わかってるやん! 地底湖やろ? 最下層に棲む魔狼を生け捕りでええんやろ? わかってるやんワイ!」
「ああその犬で今回の穴を埋める」
ビルドと呼ばれた男は厚い辞典のような物を広げ、閉じる。
「ビルド"それ"あとどれくらいいけるの......?」
先程黙れと一喝されたステアは恐る恐る尋ねる。
「ふん、余りにも使えない。一回だ。だが問題ない、今回の犬と阿呆共が合わされば……間違いなく帝国は堕ちる。……後は器と死魂の回収だ」
「うまくいきゃーええんやが」
「必ず成功する。魔王復活と魔国の為」
その夜の話は誰にも聞こえていない。
謎の三人における謎の話合い。
それは後々世界を巻き込む大事件となる。




