走馬灯
「クリエイトッ! 状況突破するにはどうしたらいいっ!?」
単独での戦闘が始まり数刻、まさに手詰まりを極めていた。
異世界にてチートスキルを手に入れたリューズであったが、まだ自分のバトルレベルと戦闘の感覚、経験、必要な物が何もかも欠けていた。
一般人にとても強い戦闘機を与えても意味がないように。
ただ不運ばかりではない。
運が良かった点があった。
クリエイトの進化、いわば自立というレベルアップだった。
【解凍ver......…クリエイトオーダー賢者 自立します、マスタークリエイト】
脳内響いたクリエイトの声がツギハギの機械音から人間味のある声へと変化する。
【これよりマスターのサポートに徹します】
これがクリエイトに施された智王としての力。
解凍された賢者の知識一文目であった。
「クリエイトッ! 聞こえてるか?」
リューズは黒蛇の猛攻を凌ぐ。
防戦一方には変わりない。際限なくマナを取り込み魔闘気の維持と砕かれた刀のオーダーを繰り返す。
黒蛇の汚染により数回打ち合えば魔術刀が砕け散ってしまう、その度にオーダーし魔術刀を生成して続けていたリューズは疲弊していた。
【イエス、マスター聞こえています。WezScan..…....黒蛇の解析が終了──あれの存在は異質、無敵に近い性質を持ちます。よって攻撃する事を望みません】
「無敵って、それじゃ勝てないぞアイツに!」
【マスターへの答えはノーです。あの黒蛇の寄生先はアルガモの右眼にあります。あの右眼にダメージを与えれば、黒蛇が消滅する確率が上がります。消滅はなくとも弱体化するでしょう」
「右眼、―――おっけぇだ!」
魔法刀を二刀具現化し左右に構える。一刀だけでは六つの畝るうね黒蛇は捌けないと判断する。
疾ッ──
フル出力の内闘気を脚に練り込み地面を蹴る。
そのスピードにさえ、黒蛇は反応する。
弾く弾く弾く弾く弾いく弾いて──弾く。
「らァッァア!!!!」
黒蛇を弾き続けアルガモに接近する。
内心、日本でやった弾幕シューティングゲームのようだと楽しさを見出していた。
バトルマニアの吉兆を予感させつつアルガモを目前とする。
(いける、押せる!)
しかしその感触も長くは続かない。
──突如、頭を抱え唸りを上げていたアルガモが顔を上げる。
リューズはアルガモと…………
────目が合う。
「オーダークリエイト!魔法壁!」
戦闘アドレナリンにより第六感が鋭敏になってた為に感じられた悪寒、これによりリューズは助けられる事になる。
魔法壁を軽々と貫いた右フックは、リューズの左肩を粉砕し吹き飛ばした。
「あッ、ガハッ………ッ!」
「リューズ!!!」
周りを畝っていた黒蛇は消滅しており、変わりにアルガモの右眼から黒い畝りが迸っていた。
【敵、強化確認。危険です。マスター負傷率大。オートリジェネレイト、ヒーリングを発動します】
────────。
遠くに声が聞こえる。それは聞き慣れた祖父の声。
「困った人や、助けを求める声には必ず耳を貸し、手を差し伸べるんじゃよ」
生前の祖父が口酸っぱく唱えていた言葉。
「辛く、挫けそうになった時は逃げてもいいんじゃ」
事故により、両親を亡くした俺を引き受け育ててくれていた祖父の暖かい手を感じる。
「だが守る、守りたいモノが背にある時は歯を食いしばって耐えよ、そうすればきっとなんとかなる」
走馬灯の様な景色が目の前に広がる。
これは前世の記憶。
「お前には何もない。守るものも、しがらみも。だからこそお前はお前がしたいようにすればええ。ワシには体裁があり過ぎるからな」
肩に置かれた手。それはこの世界での育て親。
アイレッド=マザーバックの日常での言葉。
(俺は……)




