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踏み潰されたら異世界でした?雷神の魂と人の英知の伝承噺  作者: 喜雨子
雷と序列魔と女騎士は希望となる
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共闘

 


 突然目の前に現れた轟々しい盾にユーナもジョインも驚く。


「なにがおこったの?」

「わかりません、………ですが助かったようです」


 紙一重、轟々と発現された大きな盾に助けられた事を理解するまで少しの時間を要した。


 間に割り入ろうとしていたアイネでさえも足を止め、息を止める。

 アルガモとの戦闘中である事を忘れ、目の前に発現される盾に喉を鳴らした。


 感情の存在が定かではない序列魔アルガモでさえも不服そうにその盾から退いていく。

 僅かな防衛本能が危険だと反応したからだった。


「全く状況はわからないけど、アレはヤバイ奴だよな?」


 突然現れた黒髪の少年はアルガモを指差し確認するのであった。




 ◇


 ◇


 ◇





 (ギリギリ間に合ってよかった)


 内心俺は安堵した。

 本当に本当に危機一髪。

 咄嗟に発現させた盾が突き破られなくてよかった。


 あの大男、かなり………ヤバイ奴だろ。

 どう見たって普通じゃない。邪悪さがこれまで見てきた魔物魔獣より桁違いだった。


「しょ………少年ありがとう、私はジョインという。この魔盾は君の魔術でいいか?」


 驚いた様に声をかけてきた紫髪の男。

 汗が垂れ落ち、震える声で。

 あの大男から眼が離せない俺はぶっきら棒に答える。


「俺はリューズ、ごめん、急すぎて出力考えず発現しちまった。」


 その返答を聞いてジョインは内考した。

 出力かどうかの問題ではない。

 この盾は光魔術の中級。それに単人魔術ではなく、複数人で行使する魔術に匹敵する。


(儀式式魔術、マナ量が桁違いだ──)


「オーダークリエイト―――聖印刀(セイクリッドソード)


 リューズと名乗る少年右手に光輝く刀剣が具現化する。

 具現化されたに剣に目を見張った。


 ──この少年リューズ一体何者であろうか。




 目線の先にはあのヤバそうな敵。


(とりあえず)


 下手な小細工を考えず魔闘気を纏いアルガモへと疾走する。

 アルガモも反射的にリューズの攻撃にカウンターを合わせるが其処は空を切る。

 数回の打ち込みにより光輝く刀の斬撃は、その太い左肩より下を跳ね飛ばした。


『あァ?』


「まずまずか?………耐えつつ反撃してくるとかバケモンだな」


 具現化した聖刀は対魔において凶悪な特性を持っていた。

 【聖印】斬った対象が魔物なら聖印をつけた場所、要するに初手の切り口より断続的な毒が発生し腐敗させる。

 特性効果により剣術の腕が素人に近いリューズ自身を補っていた。


『────!────!ァァ"ァァアァ"アッ!!!』


 左肩の感覚が消えたアルガモは突然やってきた人の子を眺め、少しながら働く知恵にて驚嘆する。

 ──いつぶりだろうか、人に傷つけられたのは。


 それは本能の解放。


 目の前にいる人の子が持つ武器、己とは相性が悪い。

 考えても仕方ない。やる。ころす。殺す殺す。殺す。体ごと、魂ごと喰らう。喰らい尽くすッ!!


『────ヴオオォッッオオオオオオオオオォォ!!!』


 吠える────

 その咆哮は森に生える大木を音の波で四散させ、棘のような荒波を生んだ。

 アイネは咄嗟にユーナとジョインの元に駆けつけ、防御魔術を行使する。


「アイネっ!これは………彼は! 大丈夫なのですかっ!?」


 ユーナの言葉にアイネは思う。現状この場の誰よりもあの少年は強い。

 それはジョインも感じている同じ答えであった。勝機があるならばあの少年。


 それにあの剣……間違いなくオリジナル魔術による宝剣の具現化。


「──わかりません………が、この状況を打開するのは彼の力は必要でしょう」


 その言葉にジョインも頷く。だが相手は厄災、このままではあの少年もいずれは喰われるかもしれない。

 アイネはここを乗り切る為、口を開いた。


「ジョイン、ユーナ様と倒れてる者を連れて王国に帰りなさい。緊急発令を出して..…...至急、国軍をここに派遣して!………──私はあの少年に加勢します」


 彼となら時間を稼げる。

 ジョインもアイネの考えに同意出来た。

 死ぬ為の道では無く、生きる為の道に切り替わっていく。紛れもなく黒髪少年の登場で。


「ユーナ様! 王に緊急発令の伝を! ジョインは帰り次第、四色の魔術師っ! 防御術師と、魔闘師をそれぞれ三十名以上、封印結界の準備も!!そう伝えなさい!」


 必要な言葉だけを口早に伝える。


 この少年に頼る事になるが封印しなければならない。

 ここで負ければハーバス王国民が危うい。

 王国は人の数が多い、それだけ魂喰らいとしての本能が働くはず、そうなれば………


 ──ここで食い止めなければ、沢山の民、仲間が死ぬ事になる。

 アイネの決断は軍到着までの足止め。


「もって三十分よ………」


 そう二人に言い残し未だ一人で戦う少年の下に駆け出した。



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