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踏み潰されたら異世界でした?雷神の魂と人の英知の伝承噺  作者: 喜雨子
雷と序列魔と女騎士は希望となる
10/50

葛藤と邂逅

 


「アイネはどうなるのです!?」


 ユーナの発言は当たり前だった。

 遮音魔術で外の出来事は把握できていない。

 副団長であるジョインがユーナ姫を連れて逃げるというのは結果、アイネをこの場に残すという事になる。


「団長は殿を務めます! ユーナ姫の命が………最優先! それが団長の判断です! わかって頂きたい! 団長が我々と共に逃げるとなると序列魔は私達を追ってくるのです。追いつかれれば全滅は必定です!」


 ジョインにも葛藤はある。


(私だって団長を置き去りにしたくない)


 ユーナ姫の前でなければ、紫髪を乱雑に搔きむしりたいぐらいには。






  ハーバス第二護衛団団長──ランザルク=アイネ


  彼女は人生の中で最高に極限な悪地に立たされていた。眼前で狂気を放つ悪魔の姿に。


「はああああッ!」


 剣撃、かすり傷さえつく気配がない。

 下級火魔術を重ね放つが火傷すら負わない黒膜で覆われた大男。


 カウンターで受ける傷が圧倒的に多い。

 アルガモより繰り出される攻撃は拳の打撃と乱打のみ、それでも感じる圧倒的力量差。


(厳し………)


 口に出す事はないがアイネは重圧に押されていた。

 攻撃は通らない、不死身ゆえのカウンターが多い。

 勝てる見込みを感じさせない凶悪なマナ圧。

 それでも自分の脚を叩き、奮い立たせ攻防へと出る。


『アァァァ!』

(くっ──)


 胸を狙ったであろう拳を間一髪の所で回避する。

 しかし咄嗟に庇った左手は重症。

 骨折、抉りとられた皮膚、破損。


 荒い呼吸の中、跳躍し距離を取る。痛みを精神力で抑え早口で詠唱する。


「精霊の御魂に愛燦々と──癒しの光ヒーリング………」


  若くして、女性初として団長になれる素質はここにあった。レベルの高い剣術と自己回復力の高さによる継続生存能力。


 いつも綺麗な美人騎士、不傷で有名な彼女はいつしか王国の盾となった。


「ハァハァ………ッ………」


  しかし、そんなアイネが既に傷だらけの満身創痍。

  二メートルを越すであろう大男から繰り出されるカウンターの打撃に回復が間に合わない。

 アルガモの拳は血管が膨張を繰り返しパンパンに極大化している。身体強化の一種だろうと感じた。


 なにより序列魔と呼ばれるアルガモ。

 別名魂喰らい。この狂気な濃度、一体どれだけの魂を喰らってきたのだろうか?アイネに敗色な運命が流れつつあった。


『ァアァア』


 アルガモ周囲のマナが反応し、ドス黒いオーラが纏わりつく。右眼だけがぎょろぎょろとアイネを追う。


 気持ちが悪い―――


 アルガモには右眼以外の器官がないとされている。左眼、鼻、口、耳、ありとあらゆる部分が存在しない。

 生物としての成り立ちと強さのチグハグさが、不気味な風貌に拍車をかけていた。

 そんなギリギリの戦いを行う中で予期せぬ声がアイネの耳に入る。


「──………アイネ! わたしたちも加勢します!」


  もっとも逃げて欲しい自分の護衛対象の声が背後から聞こえる。逃す為の戦い.....それなのに。


「団長! すいませんッ置いていけません!」


(ジョイン貴方、なにを言ってるの?)


 そのやり取りに隙が生じる。

 本人達にはその隙が見えていない。


「ムリよ! ユーナ様も早く退いて!  ジョインッ!  命令よ──今すぐ此処から退きなさ──」


 突如アルガモの攻撃対象が変わる。

 ユーナへとその巨体が駆け走る。


 隙。隙。隙。


 アルガモの本能が、理性の無い本能がその隙を見逃すはずがなかった。

 アルガモには見える綺麗な綺麗な魂が。


 魂清らかな者を好むアルガモには良質なエサ、綺麗な蝶がひらりと無防備に現れたのだ。


「ジョイン! いますぐ! 防御壁を展開!!!!」


 アイネの叫びが響く。咄嗟に出た喉が切れるほどの大声。


「ッ!!  我は守りの命、紡ぎ顕ふ! ここに!──強固なる四従壁(クインテットシールド)!!ッ」


  団長の命令により自分とユーナ姫の前に上級防御魔術を発現、展開する。


 だがアルガモの加速は止まらない。


(ヒィ......…!)


 アルガモは加速の勢いのまま防御壁へと体をぶつけた。

 接触した場所に黒いシミの様なものが滲み軽々と一枚目のシールドが砕かれた。


 残るは三層の盾。

 ジョインはガチガチと奥歯を鳴らす。

 マナをオーバーヒートギリギリまで吸収し盾の増強を担った。

 隣でペタリと腰の砕けたユーナ姫が呆然と迫る狂気を見つめる。見つめるしかない。


(やばいやばいやばいヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ──どうにかどうにか──………)


 ジョインの頭は警報を鳴らす様に喚き散らかしていた。

  盾の破壊も時間の問題だ。

 もはや十秒ももたないであろう。


  弾け砕け消えるマナの音が響き、二層三層と盾が砕かれる、最後の一層にまで迫った所でジョインの足元にいるユーナは死を悟った。

 明確な殺意………悲運な弱肉強食の絵図。


「ヤァ………やだぁ」


  ユーナの悲痛な叫びと共にシールドは全て破壊された──……

 消えかけた命の灯火はこの世界のストーリーの要。消える事はない。

 たった一人の少年によって千切れそうな糸は持ち直す。




「オーダークリエイト! 聖盾(ジェネラル)!」


  声が聞こえたその瞬間、ユーナとアルガモの間に銀色に輝く厚い盾が現れる。アルガモの突進は銀盾阻まれるのであった。


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