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7 魔物も動物? ……だね

本日は3話更新しています。

 

 というか、二匹とも大きくなったよね。

 助けた時にはブラッキールは大人の両手に乗っかるぐらいだったし、ホワイティアはう~ん、確か……三十センチくらいの大きさだったかな。

 それが今ではブラッキールは肩高が百六十センチ以上で、尾を含む全長は三百八十センチくらいあるの。

 つまり普通に五歳児の私よりブラッキールのほうが大きいのよ。


 ホワイティアはブラッキールよりも大きいの。

 これは毛のせいもあるかもしれないわね。

 ……って、そんなことはないか。

 肩高が二百センチくらいで、尾を含む全長は四百センチに少し届かないくらいなの。


 そんなことを思っていたら、ブラッキールの言葉を聞き逃しそうになったわ。


『ところでさー、マリーからピンクドグマの匂いがすんだけどー。おれっちっちのように飼うの~?』

「……えっ?」

『フム。それは我も知りたいかの。あのモノたちからは人が衣服を作るのに、使う糸が取れるであろう』

「ええっと?」


 ふたりに言われて思い出した。

 昼間会った魔物のことを。

 それから、疑問に思ったことも。


「ねえ、私が神様にお願いした“動物の言葉がわかること”って、魔物にも有効なのかな?」

『何をいってんのさ。魔物も動物なんじゃないの?』

『そうだな。マリーがどの範囲を想定して神に言ったのかはわからないが、この世界では魔物も動物になるのだろうな』

「あー、やっぱり~。そっかー。そうよね」


 私は納得したのでウンウンと頷いた。


『それで、我らが離れている間に何があったのだ』

『おれっちも知りたいぞっ!』

「あー、そうだね。私も聞いてほしかったんだ。……けど、その前に私が会ったのはピンクドグマではなくてモモンスラーだと思うの」

『フム。似て非なるものなのかもしれぬな』

『そうかな~? おれっちはピンクドグマだと思うけどな~』


 私は五歳の誕生日プレゼントにもらった魔物図鑑を持ってくると、モモンスラーのページを開いた。


「これよこれ」


 二匹は私の両側から図鑑を覗いてきた。


『あー、似てる……かな~?』

『ウム、どうであろうか。……もしかしたらピンクドグマの変異した、亜種かもしれぬな』

「亜種って……そんなに簡単に変異するものなの?」

『かもしれぬと言うたであろう。我らは実物を見ていないからな。……それで、これとどのようなことがあったのだ』


 私は昼間にあったことを二匹に話した。


『ほう。マリーに近づいたものがあるのはわかったが、悪意は感じなかったので我らは動かなかった。……そうか、そやつはそのようなことを言ったのか』

『ねえねえ、それならやっぱり飼うの? 飼うの?』

「それは出来ないよ。というか、もう一度荒野に行って見つけられる自信はないな~」


 二匹は顔を見合わせると心持ち胸を張るようにした。


『それなら大丈夫だ』

『うん。匂いを覚えたもん。おれっちっちなら見つけられるぞ!』

「本当に!」


 私は声を弾ませて言った。

 それが意外だったのか二匹はお互いの顔を見てから聞いてきた。


『嬉しそうだな』

『そんなに喜ぶんなら~、おれっち、嫉妬しちゃうな~』


 二匹は面白くなさそうに言ってきた。

 ……少し拗ねている気がする。


 ……かわいい~。

 じゃなくて!


「違うのよ。確かにもう一度会いたいけど、そういうんじゃないの」


 私は慌てて弁解するように言った。


『ではどうして、もう一度会いたいのだ』

「それはね、不思議だと思ったからよ」

『不思議?』

「うん。ほら、ここを見て。モモンスラーは洞窟型のダンジョンに生息していると書いてあるのよ。そしてこの当たりにはダンジョンなんてないはずなのよね?」

『ウム」

『ないない。ないよ~』

「それなら、なんでこんな荒野にいるんだろうと思わない?」


 私の言葉に『確かに』と相槌を打つ二匹。


「あとね、言葉が通じるのなら、お話してみたいと思うじゃない?」

『それはマリーが特別だからだの』

『ウン。マリーはとくべつ~!』


 二匹の言葉に私は苦笑いを浮かべた。

 数か月前にこの二匹に詰め寄られたことが、昨日のように思い出された。


 ◇◇◇


 あれはブラッキールを助けた直後のこと……だったかな?

 三歳の私はブラッキールのお世話をしながら、わくわくしていたわね。

 はじめて動物とお話が出来るのだ、と。

 まだ、離乳が済んでいなかったブラッキールを育てるのに、言葉がわかることは十分に役立ったわ。

 けど、まだまだ赤ちゃんであるブラッキールとは会話らしい会話に、なかなかならなかったのよ。

 それでも意思の疎通が図れることに、嬉しさを感じていたのね。


 だけど、私は一応慎重に行動をしたのよ。

 ……いや、しているつもりだったわ。

 動物の言葉がわかるだなんて知られたら、面倒なことになるのは間違いがなかったからね。


 でも、速攻でメルにバレた。

 私と一緒にブラッキールのお世話をしてくれていたからね。

 なので、私がブラッキールに話しかけるのをそばで聞いていて、疑問に思ったみたいなの。


 ……まあ、紆余曲折はあったけど、メルは他の人に私が動物の言葉がわかることを、話さないでいてくれるのよ。

 つまり私の味方なの。


 ホワイティアのお世話も言葉がわかることで、あまり困らずにできたわね。


 二匹も私といることで、人間というものは動物の言葉がわかるのだと思っていたらしいわ。

 けど、成長するにつれ、私以外と言葉が交わせないことが分かり、次第に疑問を持つようになったみたい。


 ブラッキールとホワイティアに、私のことを(・・・・・)聞かれた(・・・・)のは、あのお茶会がきっかけだったわね。

 私が部屋でお母様から聞いた話を二匹に愚痴ったことで、それまで思っていたことを聞いてきたのよ。

 ……じゃなくて、詰めよられたんだった。


 ブラッキールもホワイティアも、とても頭がいいの。

 私以外の人の言葉も理解して学習していたのね。

 だから違いに気づけたみたいなのよ。


 まあ、そのおかげで私はふたりに前世のことを話すことにしたの。

 というより、私も誰かに聞いてもらいたかったのね。

 だから正直に話したわ。

 転生することになった事情から、転生する際につけた条件もすべて。


『我には解らぬのだが、神の不注意による死などということはよくあることなのだろうか』

「よくあることじゃないから、神様は私に前世の記憶を持って転生することを許可してくれたのよ」

『おれっちもわかんないけど、でもそのおかげでマリーと話が出来るようになったのなら、感謝を捧げてもいいかな~』

『フム。我もその点は同意見だな』

「そうだね~」


 私も二匹に同意して笑い合ったのだった。


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