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36 新たに来た魔物たち


((マ、マリーアンヌ~。ど、どうすれば~))

((落ち着け、ブラッキール))

((登録ねえ。それをしたからってどうなるのかねえ))

((ええ、そうですね。私だけということ……ではないのでしょうけど))


パニクリぎみなブラッキールに、それよりは幾分落ち着いているけどやはり動揺が半端ないホワイティア。

ピーチティアとグロリアスベスのほうが、立場もあるからか現実を見据えているみたい。


「守護精霊様」

「コクニーでいいよ、マリーアンヌ」


呼びかければ、名前を呼べと言われてしまいました。


「それじゃあ、コクニー様、国民としてこの子たちを登録とはどういうことでしょうか」

「そのままだよ。名前や種族名を登録するんだよ」

「それは……」


重ねて問いかけようとした私は、上空から強い風が吹いてきたことで言葉を止めて上を見た。

そして、大きく口を開けて呆けてしまった。


『フム。ここいらのはずだが、見えぬな』

『おや。風のドラゴンじゃないかい。来てくれたのかい』

『おお! ピングドグマの! お招きにより参上した』

「ちょっと待ってくれ。ドラゴン殿、姿を今より小さくできるだろうか」

『出来るが、其方は?』

「私はロアリヴィエール王国の守護精霊だ」

『守護精霊殿であったか。暫し待ってくれ。……このくらいでいいか?』

「ありがとう。上部の結界を解くから、そこからここに降りてくれないかい」


ドラゴンとピーチティアとコクニー様とで話をして、小さくなったドラゴンが庭園に降りてきた。

その陰から……えーと、モグラとハリネズミのようなものも現れたけど……これも魔物よね?


『あら、アモラにインフェリラットじゃない。あなたたちも来たのね』

『丁度、ドラゴンはんがこっちに行くと言うたんで、連れてきてもろうたのや』

『わ、わたしも同じです』


気安く声を掛けたグロリアスベス。

モグラがアモラでハリネズミがインフェリラットなんだ。

……というか、アモラは関西弁もどきをしゃべっていて……サングラス……色付き眼鏡をしているんだけど?

ドラゴンは人と同じくらいの大きさになったから……二メートル弱かしら?

アモラは一メートルぐらいの大きさで、インフェリラットはこの中で一番小さい三十センチくらいかな?

で、どちらも直立歩行をしているって……。


「丁度いい時に来てくれたね。歓迎するよ。風のドラゴン殿にアモラ殿、インフェリラット殿」

『あなたがこの国の守護精霊殿か。私はドラゴン族を代表して話を聞きに来たのだ』

『わても東の大陸を代表しとりますのや』

『わたしも南の大陸の代表です』


えーと……なんかすごいことになってきてない?


「そうか。それなら話は早いな。ここでのことを他の種族に伝えてくれるのだね」

『そうなりまんな。そんでぇ、わてら魔物たちをこの地に来るように誘っとるのは、どういうことでっしゃろか』


あっ、ここはドラゴンが代表で話すんじゃなくて、アモラが代表なんだ。

私がそう思っている間に、コクニー様はドラゴンたちにこの地に来て、この国の住人にならないかと話している。

その光景をポケーッと眺めていたら、ドラゴンたちの視線が私へと向いた。

えーと?


『そうでっか。このお嬢はんのおかげで、わてらも避難できるのですな。でんも、名前は用意できないですな』

「どうしてかな」

『お忘れかもしれないですが、わてらに名前を付けるのは、守護契約っちゅうもんのために、人がつけるんだす。わてらには名前なんちゅうもんを考えることは、出来ないですな』

「そう言えば、そういう取り決めがあったな」


コクニー様は暫し考えて名案が浮かんだのか、晴れやかな顔をして言った。


「それなら人と契約して、名前を付けてもらうのはどうだろうか。そうすれば、どの家に所属しているのかも分かり、数の把握もしやすくなるだろう」

『馬鹿をお言いでないよ。長寿の種族ならいいけど、あたしらは半年の寿命しかないモノがほとんどさ。守護契約をしたって、あたしらはこの荒野から離れられないからね』

『私も同じだね。うちの子らも、大体一年の寿命がほとんどだし、巣から離れて生きていけやしないだろう』


ピーチティアとグロリアスベスは噛みつくように言った。


「ああ、そうだったね。そこは私が悪かった。ピングドグマやハニービーグルのような寿命の短いモノたちは、コロニーの長だけ登録することにしよう」

『それじゃあ、他の子はどうするのさ』

「ですから、コロニーごとの登録になりますので、採取蜂が何匹、兵隊蜂が何匹、守り蜂が何匹と、ひと月ごとに数の変動を記していくのはどうでしょう」

『それなら、まあ、いいんじゃないか』

「ピングドグマは“見守り役”が千匹に一匹生まれると聞いていますので、見守り役と普通の子ら千匹を一コロニーと数えればよろしいかと」

『確かにその方が把握しやすいだろうね』


グロリアスベスとピーチティアはコクニー様の提案に納得したようだ。


『守護精霊はん、わてらもその提案には乗れんですわ』

「どうしてだい」

『どうしてもなんもないでっしゃろ。言葉の通じんもんと守護契約など、どうせいちゅうねん』

「そこは大丈夫だ。このマリーアンヌは君たちの言葉がわかるから。橋渡しをして貰えばいいだろう」


そう軽くおっしゃったコクニー様。

いや、私の負担を考えて!


『それは駄目だ。守護契約をするにはちゃんと意思の疎通を図って、お互いに信頼できるとならないと、契約は出来ない』


これまでアモラに話すのを任せていたドラゴンが、険しい表情で言った(爬虫類特有の顔なので元々険しい顔をしているように見えるけど、雰囲気で察したわ)。

コクニー様はまたも考えに沈んだ。


「あの、国民として登録するのでしたら、種族名に生まれ年と性別を表記してどうでしょうか」

「生まれ年と性別?」

「ピングドグマやハニービーグルのように寿命が短いモノたちは別の話になりますが、他の魔物は五年以上の寿命があるのですよね」

「そうなのか」


コクニー様が視線で問えば、インフェリラットが頷いた。


『寿命が一年以下の短い種族は五種類です。それ以外は短いモノで十年ですね。わたしたちインフェリラットがそうです』

「そうか。それなら……いや、それでも識別するのには……」


またも悩まれるコクニー様。


「それでしたら、土地に名前を付けてみるのはどうですか」

「土地に名前?」

「例えばですが、この荒野の北の山の麓の辺りを“北山麓”として、そこからある程度の位置までを一番、二番と番号を振るのです。ある程度北山から離れたら、次は“荒野の中”として、また数字を振っていきます。それを地図に記せば、誰がどこのものか識別できませんか」


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