21 季節は変わって春になりました
あれから季節が二つ変わり、今は春です。
「うわ~。白い可愛い花がいっぱい~」
私は伸びあがって荒野を見回した。
隣にはブラッキールとホワイティアがお利口にお座りをしているわ。
◇◇◇
あれから……約二週間の間に何度かピングドグマと話をした。
私の転生の事情を話し、ピングドグマの役目について教えてもらったの。
そんなことをしていたら諸々の事情で王都に戻ることになったのよ。
というのも、野ばらの実の乾燥したものを、うちにあったお茶の葉にまぜて飲んでみたからなの。
あちらの世界で一度飲んだ、ローズヒップティーと同じ……以上にすっぱい味がした。
でも飲めない味ではなかったのよ。
効能を知った我が家の女性たちが野ばらの実の量をいろいろと変えて試したので、あっという間にお茶の葉が無くなってしまったの。
なので、王都の邸にあるお茶の葉で、試行錯誤を続けることに決まったの。
それから、安くていいから茶葉を手に入れることも考えなくてはならない。
この地にはお茶の木はないから。
ということはどこからか買ってこなければならないわよね。
お父様は手紙を書いてどこかに送ったわ。
それが届いて茶葉を届けてもらえるまで、最低でも三か月はかかると言っていたの。
でもこれから冬になるから春まで相手が動けないだろうとも言ったのよ。
そんなこんなで王都に戻ったら、なぜか王宮に行くことになったの。
犯人はお父様……だけでなく、お母様も。
領地から戻り、さっそく王宮にローズヒップティーのことを報告したそう。
お父様とお母様がそれぞれ、王様と大臣、王妃様や公爵夫人がたと試飲して、飲んだみんなが目を見開いたというわ。
そして、話し合った結果、国の特産として売り出すことに決めたそうなの。
で、なんで私まで王宮に呼ばれたのかというと、件の本を見つけたのが私だから。
王様アンド王妃様からお褒めの言葉をいただきましたよ。
そして第一王子様とも、仲良くお茶を飲んでお話をしましたね。
……いや、だから、なんで?
前回のお茶会がお嬢様たちの品評会だったんじゃないの?
あっ、言葉が悪くてすみません。
でもね、こんな不意打ちって、ないと思わない?
いきなり第一王子との婚約を言われたのよ。
それも、第一王子、その人から。
根回しも何もあったものじゃないわ!
だーかーらー!
「まあ~。私、両親からそのような話は聞いておりませんわ。今回のことが要因なのでしたら、その功績を持って辞退させていただきます」
と、にっこりと笑顔で言ったのよ。
第一王子様は茫然とした顔をしていたわ。
もちろんお付き……私たちを見守っていた侍従、侍女、護衛騎士の方々も、同じような顔をしていたわね。
で、王宮から邸に戻り、そわそわとしていた両親に嫌味満載で文句を言ってやったのよ。
その結果……どうやらサプライズで“王子様の婚約者になれるんだよ”を、したかったらしい両親は意気消沈してしまったの。
ついでに両親は執事長と侍女長にお叱りを受けたそうよ。
うん。根回し大事!
勿論婚約の話は消えたわ。
多分“今は”がつくのだと思うけどね。
さすがに王命を出されたら断れなかったけど“功績を持って辞退”と言ったのが効いたみたい。
それから……冬の間は何もできないそうで、ロアリヴィエール王国の首脳陣が、ローズヒップティーの配合を真剣に吟味していた……というわね。
そうそう。国の特産にすると決めてすぐ、急ぎ我が領に多くの人が派遣されたらしいわ。
それで、野ばらの実を来る日も来る日も収穫したんだって。
かなりな量を採取出来て……保管場所と保管方法に頭を悩ませたとか言っていたわね。
そうしている間にお父様のところに手紙の返信が届いたの。
茶葉を頼んだ人は、やはり春までは動けないということだったわ。
なので、再度手紙を送り、逆に茶葉の購入の追加をお願いしたそうよ。
手紙は人ではなくて鳥が運んでいるから、冬でもやり取りは可能だとか。
寒さに強い鳥なのね。
◇◇◇
そうして冬が終わり移動するのに困らない季節になったので、わたし達は領地に戻って来ました。
時間を見つけて早速窓を開けておいたら、ピングドグマから声を掛けられたの。
ピングドグマは出来れば早急に会いたいと言ってきたのよ。
私はお父様と交渉をして、ブラッキールとホワイティアから離れないことを条件に、荒野に行くことを許可してもらったわ。
もちろん、お供の人間は無しで!
許可をくれないのなら、前みたいにブラッキールかホワイティアに運んでもらうと言ったからだけどね。
『よく来てくれたねえ』
「ひさしぶり~、ピングドグマ~!」
気がつけばピングドグマが目の前に居た。
いや、本当はピングドグマが居る所へと、ブラッキールたちが運んでくれたのよ。
ピングドグマは認識阻害の魔法を使って隠れていたけど、私たちだけだと分かって姿を現してくれたのね。
『少し大きくなったようだね。人はあたしらより成長がゆっくりだからねえ。これくらい会わないでいると、大きくなったのがわかるもんだね』
「ええっ、そう?」
そうかー。成長しているんだ。
自分じゃあんまりわからないものね。
『フム。言われてみればそうかもしれないな。そばに居すぎてわからなかった』
『そうだねー。おれっちも自分を大きくしないように気にしてたんで、マリーの成長はわかんなかったよ』
『あんたたちも変わりないようで、よかったよ』
『そなたが変わりないというのであれば、成功であるな』
『よかった~』
ホワイティアとブラッキールはピングドグマの言葉にホッとした声を出した。
『ということは、やはり成長したんだね』
『そうなの~』
『……ウム』
二匹は私から一歩離れると、魔法を解いて本来の大きさに戻った。
『あれまあ。フェンリルが大きくなるのは想像できたけど、クアールまで大きくなったのかい』
二匹は心持ち胸を張るように背筋を伸ばした。
秋の頃のブラッキールは肩高が百六十センチで、尾を含む全長は三百八十センチだったのが、今は肩高が百六十五センチ、全長は三百九十センチになった。
見た目だと一回り大きくなった感じかな
ホワイティアも肩高が二百センチ、尾を含む全長は四百センチくらいだったのが、肩高が二百三十センチ、全長は四百五十センチにまでなった。
正式な守護契約の前にピングドグマが教えてくれた、フェンリルの本来の大きさのことと擬態のことを、王都に戻る前に詳しく聞いた二匹は、秋の時点で普通の犬猫としても大きすぎると自覚したのよ。




