表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/42

15 話せることが知られていました?

 

 さすがに口には出せないけど、心の中でそう思ったらブラッキールが「グフッ」と変な風に息を吐き出した。


((ブハッ! だめだよー、マリー。おもしろすぎる~))

(ちょっとブラッキール、馬鹿笑いしないでよ~)

((だから、マリーが面白いことを考えるのが悪いんだよ))


 どうやら守護契約のせいで、ブラッキールに私が思ったことが伝わってしまうみたいだ。

 これではヘタなことを考えられないじゃない。


 無言でブラッキールを睨むと、ブラッキールはクウ~ンと甘えた鳴き声を出して、私へと体を擦り付けた。

 途端に体が傾いで倒れ掛かる私。

 待ち構えていたかのように支えてくれるホワイティア。


 普段ならブラッキールに擦り寄られても、倒れかかることはなかったから驚いてしまった。


「大丈夫か、マリーアンヌ」


 お父様が慌ててそばに来て私のことを抱き上げた。

 私は大丈夫だからと言おうとして、お父様の肩に手を置いた手が震えていることに気がついた。


『やっぱりね。いくら仮契約をしていたからといって、魔物の中でも上位に入るクアールと契約して、影響が出ないわけがないだろうさ』


 耳元で囁くようなピングドグマの声が聞こえた。

 思わず辺りを見回そうとした私の耳に続けて声が届いた。


『安心おし。魔法でこの声はあんたとそいつらにしか聞こえてないさ。先ほどまでは気が張っていたから平気だと思ったんだろうけど、マナをごっそり持っていかれているんだから、立っているのも辛いくらいだろうさね。まあ、それを見越して契約を急いだんだろうさ』

『ウム。あの家の者たちはマリーに何かあれば、追及をするより休ませることを第一に考えるからな』

『そうなのー。難しいことはわかんなかったけど、おれっちの勘が“今だ”って、言ったのー』


 ホワイティアとブラッキールもウンウンと頷いた。


「もしかして転んだ時にどこかをぶつけたのか」


 私の体を視認して怪我がないか見ているけど、血が滲んでいるようなところが見つからないようで、オロオロとしているお父様。


「お屋形様、ここでは何も出来ませんので、戻りましょう」

「そ、そうだな。マリーアンヌ、なるべく急いで戻るからな」


 そう言うとお父様は早足で歩きだした。

 本当なら走り出したいところだろうけど、邸までは距離があり過ぎる。


「なぜこのような時に馬が使えないのか」


 騎士の誰かがこぼした言葉に、並走するブラッキールとホワイティアはビクリと体を震わせた。


『ああ、そうだったねえ。クアール。あんた、契約によって風魔法が使えるようになっただろ。馬たちに言ってこいつらを迎えにこさせるといいよ』

『おれっちが風魔法? わかった。やってみるー』


 ブラッキールは歩きながら魔法を使ったようで、唸り声を少しだしたと思ったらすぐに聞こえなくなった。


 しばらくすると邸のほうから、から馬を引いた騎士たちがこちらへと来た。

 短い遣り取りのあと、お父様に抱かれたまま馬に乗り、邸へと戻ったのでした。


 ぐったりとした様子の私に、邸中が上を下への大騒ぎとなった。

 私はすぐに部屋に連れていかれて、体を綺麗してもらってからベッドへと寝かされた。


 この間の私は意識ははっきりしているのだけど、体を動かすのがすごく億劫になってしまっていたの。

 どうやらマナ……魔力を持っていかれたことで、疲労困憊となったみたいだ。

 邸に戻るまでにピングドグマが話してくれたことによると、こうなるのは普通のことみたいだった。

 というよりも、契約直後に普通にしていた私がおかしかったらしい。


 で、疲れからか私は熱を出して翌日も寝込むことになった。

 熱が下がった翌々日もベッドから出してもらえなかった。

 心配したみんなが、交代で張り付いて……じゃなくて、看病してくれたことは嬉しかったけど、鬱陶しくもあったわね。


 で、実は私はホワイティアとも守護契約をしちゃいました。

 だって、どうせベッドで寝ているだけなら、契約しちゃっても大丈夫かなって思ったからね。

 それにホワイティアの言葉は私以外にはわからないもの。


 でも念のため、メルが私についている時に契約をしたわ。

 ワウワウとホワイティアがしゃべるように鳴いていたら、不審に思う人がいるかもしれないから。


 メルは「ホワイティアは何て言ってるんですか」とのんきに聞いてきたから「荒野の風で体を冷やして体力を奪われたんじゃないか」と言っていると答えたら「ああ。そうですよね。マリーアンヌ様はお小さいですからね。すみません。もう少し風よけになるものをご用意すればよかったです」と、落ち込ませてしまった。


 こちらこそ、ごめんなさいだよ。


 ◇◇◇


 もう一日様子を見るためにおとなしく部屋にいたから、今日はあの日から四日後です。

 私は今、家族用の応接間に居ます。

 この前のようにお父様、お母様、執事長、侍女長がいて、他に我が家の騎士長もいます。


 私の椅子の左右にはブラッキールとホワイティアがお座りしていて、メルも一歩後ろに控えているのよね。


「マリーアンヌ、大事が無くてよかったわ」

「ご心配をおかけしました、お母様」


 まずはお母様が優しく語りかけてきた。


「ええ。本当に心配したのよ」


 そう言うとお母様は手に持っていたハンカチを目元に当てた。


「私はあなたが一人で荒野に置き去り(・・・・)にされたこともだけど、その子たちがあなたのもとへと行かせまいとしたことも、すごくショックで……」


 ヨヨッと声をあげて泣き出したお母様。

 ……いや、泣きまねですよね。

 涙出てないですもの。


「それなのにあなたが転んだ(・・・)のを見て、いち早く駆けつけて。……私たちは馬が使えずに徒歩で向かうしかなかったというのに……」


 あれ?

 なんか、風向きがおかしい気がする……。


「ねえ、おかしいと思わないかしら、マリーアンヌ。我が家の馬たちはとても優秀で誇り高い子たちなの。今まで私たち(・・・)の言うことを聞かないなどということはなかったのよね」


 お母様は意味深にそういうと、ハンカチから顔を上げた。

 ……やっぱり泣いてないじゃん。


 ……ではなくてー!

 やばい、やーばーいー!

 バレているよね、これは。


「ねえ、いくらブラッキールとホワイティアが賢い子たちだとしても、まるで人の言葉がわかっているように、行動できるのかしら?」


 お母様は首をゆっくりと傾けた。


「ねえ、マリーアンヌ。あなたはその子たちとお話ができるのではなくって?」


 私は言い訳をしようとして……言い訳と考えた時点でもう駄目だと気がついた。


 ははっ。

 バレてーら!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] バレてた!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ