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国守の愛 第1章      作者: 國生さゆり  
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富士子編  32 国防大学正門前



  シーン32 国防大学正門前



 正門前にタクシーが停車すると、要が「電子マネーでお願いします 」とげるのを聞いた富士子は「私も」と言った。



 振り返った要は目を細め「それは出来ない相談です、富士子さん。男気は傷つけてはなりません」とニヒルに笑う。今日、何度目かのドキリを経験した富士子は微かに頬を染め、小さく「すみません」と言った。下を向いた富士子に宗弥が「なんの話だ?」と聞く。「ううん」と富士子が首を振っている間に、要は左手の人差し指で交通マネーを選択し、iPhone Watchで精算を済ませた。



 宗弥に続いて、富士子がえた両足を車外に下ろすと、「お疲れ様です!!」と大きな声が聞こえ、ちょうど立ち上がった富士子に門をくゞる人々の注目が集まった。その視線を見た富士子は身がちじませる。



 富士子達に駆け寄った青年に、富士子の左隣に立つ宗弥が「声、大きいから」と言ってBIGに笑い、青年は微笑みを絶やさず「失礼しました!!」とまた大きな声で返した。


 

 富士子は青年と何処どこかで会った気がする。しかしながら、印象的な二重の目は見たことがない。それにひたいには両端りょうはしが腰まで届くほど長い、深紅の鉢巻きをしていた。その上、深紅の長袖Tシャツに白いスポーツパンツ、白のヘッドギアを左肩にかけ、素足にクロックスをいてもいる。富士子に国防大に通う知り合いは宗弥以外にいない。



 右手に深紅の鉢巻きを2本持った青年は「お疲れ様です!みんな、お2人がいらっしゃるのを楽しみにしております」ととおる声で歯切れよく言い、鉢巻きの1本を尾長さんに両手で差し出す。「おう!ありがとう」と言って受け取った尾長さんは、感慨深かんがいぶかくげに鉢巻を見つめた。



 向き直った青年は宗弥に鉢巻きを差し出し「素水さん、第三大隊の遊撃担当の一人が、神出鬼没で動きが読めません。ご相談させてもらえないでしょうか?」と真っ直ぐ過ぎる目で言い、受け取った宗弥は「要と一緒に聞くよ」と言った途端とたんに、表情をワクワクとさせ始め、意味ありげな視線を尾長さんに向けた。宗弥のその目はクラス対抗戦前のあの目だった。私は嫌な予感がする。ハリケーン素水モトミズと呼ばれるほどに、この目をした宗弥は何もかも打ち負かす。



 鉢巻を見ている尾長さんも2人の会話を聞いてたらしく、挑むと書いた目でニヤリと笑った。宗弥と尾長さんの+はよろしくない気がする。なんなの2人とも(~_~;)、なんてワルい顔してるの❗️



 富士子の眉間にVの字のシワがよる。その表情を見た要はオオカミの笑みで「心の、準備はできましたか?」と聞く。富士子の返事を待たずの要が「行こうか」とベルベットの声を青年に掛けて歩き出す。その声音を聞いた富士子の背中に、冷気がゾゾゾと走った。



 もう、なんだかわからないけれど、ある種のモードに入ってて、全開で踏み込んでるって“尾長さん!“と呼び止めたくなった。スタスタと歩く背が遠ざかる。左隣を歩く宗弥の顔を見るとニヤリと微笑み返された。その笑みを見なかった事にしてシュッと前を向く。2人とも、違う、青年も合わせると3人、なんでテンション上がってるの⁈しかも上がり方の角度おかしいから・・・あっ、宗弥と気が合う尾長さんもハリケーンって事⁈



 先をゆく要はチャンスとの打ち合わせを終わらせ、立ち止まって宗弥と富士子が追いつくのを待った。富士子を隣におくと要の心に春風が吹いた。





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