表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

冒険者ギルドのお役所仕事

冒険者ギルドのお役所仕事 〜新たな職員〜

作者: 衣谷強

どうも。前回の投稿から一週間経たずに「私は帰ってきた!」な『冒険者ギルドのお役所仕事』第八弾です。


……違います、誤解なんです。

元々ネタは思いついていて、猫らてみるく様のレビューはきっかけに過ぎないんです。

だから「こいつレビュー贈ればどんどん書くぞ」とか思わないでくださぁい!

あ、関係ないですけど饅頭って怖いですよね。糖質的な意味で。


新キャラ投下するだけの回ですが、よろしければお楽しみください。

 ここはとある街の冒険者ギルド。

 多くの冒険者が依頼と報酬を求め、今日も賑わっている。


「本日付けてウエストーンから配属になりました、ノビス・ニウです! よろしくお願いいたします!」


 元気のいい声に、職員のプリムとコリグは仕事の手を止める。

 赤く長い髪を後ろで縛った、小柄な女性がそこに立っていた。


「配属!? な、何の話ですかプリム先輩!」

「私も今聞きました。事前の通達はありませんでしたね」

「はい! 急に決まったので、直接こちらをお渡しするようにと!」


 そう言うと、ノビスは紙を差し出す。


「ふむ、正式な異動辞令ですね。ではノビスさん、よろしくお願いいたします」

「よろしくお願いしまーす!」

「ちょ、ちょっと待ってください! 何でそんなにあっさり受け入れるんですか!?」

「書類が正式な物なら、拒否する理由がありません」

「そりゃそうですけど……」


 コリグにはこれまでこのギルドを、プリムと二人で回してきた自負があった。

 事前に通達があったならともかく急な配属という事もあって、コリグはノビスに対して若干の不快感を抱いた。


「ではコリグ。ノビスさんの教育係として彼女を支援してください」

「な、何でですか!」

「わ、私は経験豊かなプリムさんに教えてもらいたいんですけど……」


 二人から同時に来た抗議に、プリムは眼鏡を押し上げる。


「コリグ。君は私との仕事が長く、ともすればわかる事でも私に頼る癖があります。人に教える事を通して私との経験を自分のものにしてください」

「……わかりました」

「ノビスさん。このギルドがこれまで二人でやってこられたのには、コリグの力が大きい。教育係としての経験は浅いですが、十分役目は果たすと思いますよ」

「……はーい」


 渋々、といった感じで頷く二人。


「……じゃあまず書類の保管場所から案内するから、ついて来な」

「……はーい」


 カウンターから事務机をぐるりと回り、保管庫の前に移動する二人。

 棚を一つ一つ開いて、コリグは中に入っている書類について説明する。


「一般的なのはこれくらいだ。特殊な申請があったら俺か先輩に聞きな」

「わかりました」

「何か質問はあるか?」

「プリムさんって独身ですか?」

「は?」


 仕事についてだと思っていたコリグは、急な話の変化についていけない。

 目を白黒させて、意味もなくプリムの様子を伺ったりしてしまう。


「な、何でそんな事……!」

「だって私、プリムさんに憧れて、ここに来たんですもん」

「何?」


 戸惑うコリグを置き去りに、ノビスはうっとりと遠くを見つめる。


「ウエストーンを襲った嵐龍らんりゅう……。幸い人的被害はなかったけど、避難所の開設や物資の準備が後手後手になっていて、ギルドのみんなが途方に暮れていた時に、来たんですよ! 救世主が!」

「あぁ、あの時な」

「物資を運んでくださった冒険者の方から聞きました! プリムさんが万全の備えをしていた上、嵐龍の進路が変わったらその準備した品をすぐ支援に切り替えたって!」

「ん、まぁ、普通は驚くよな……」


 現場を共にしたコリグとしては、心持ち鼻が高い。


「ウエストーンが落ち着いたら、プリムさんってどんな人かな、一緒に仕事をしてみたいなって頭がいっぱいになって、色んな人に頼み込んで異動して来たんです!」

「へぇ……」


 口さがない冒険者から、プリムが「冷血漢」だの「直角男」だのと揶揄やゆされる事に不満を感じていたコリグは、その純粋な憧れに嬉しさを感じた。


(……よし! 教育係、気合入れてやるか!)


 決意したコリグは、ふとノビスの最初の質問を思い出す。


「ノビスがプリム先輩に憧れてここに来たのは分かったけど、何で独身かどうか聞いたんだ?」

「え? 独身だったら、結婚も選択肢に入るじゃないですか」

「……は? え……?」

「仕事ができる上にあの落ち着き! 細身! オールバック! あふれるイケオジ感! しかも銀縁眼鏡がきらりと光って! もうイメージぴったりで最高ですよ!」

「……イケ、な、何……?」


 コリグには先程入れたばかりの気合にヒビが入り、粉々に崩れ去る音がはっきりと聞こえた。


「あ、あのなぁ! プリム先輩もうすぐ四十だぞ! お前、どう見てもハタチそこそこじゃないか……!」

「もうすぐ四十!? そこもイメージぴったり! 最高! ちなみに誕生日いつです!?」

「〜〜〜っ!」


 言葉にならない雄叫びを上げるコリグ。

 教育係の苦労は、まだ始まったばかり……。

読了ありがとうございます。


プリムにぞっこんなノビス。仕事よりも恋に重きを置いてそうな子ですが、果たしてちゃんとギルドの仕事はできるのでしょうか?

そしてコリグの血管の運命やいかに。


メイン連載や企画投稿作品、全く別の短編ネタとかが渋滞しているので、また少し間が開くかと思いますが、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] クククッ アイツ、絵を贈ればいくらでも書くぜ? なんて思ってないですから(笑) だいたい作品有っての挿絵ですからね。 赤毛で小柄か、腕が鳴るぜ!!
[一言] お疲れ様です。楽しく拝読させていただきました。 これからもっと楽しくなりそうな予感がしますね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ