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16 妹とミスコン

 放課後に2日に1回は愛好会の活動場所に呼び出されては布を合わせたり採寸を行ったりして、あっという間に学園祭の当日を迎えた。


 学園祭は2日あり、1日目は女子部、2日目に男子部となる。卒業生だったり、親族であれば学園に入ってくる事もできるが、王城から警備の兵も派兵されてきているので治安的には安心だ。


 1日を通じて大講堂に絵画の展示があり、午前は中庭に作られた特設ステージで声楽や楽器の演奏の発表、お昼はカフェテリアが解放されてそこで生徒も来客も昼食を摂り、午後からはミスコンを兼ねたファッションショーだ。


 ファッションショーは、愛好会の子たちのように自分たちで衣装を作ってもいいし、その日のために自分でデザインを起こして誂えたドレスでもいい。基本的には圧倒的に後者が多いが、私とヴェネティスは数少ない前者だ。前者の参加者はミスコンというよりも衣装を見て欲しいという気持ちが強いので狙いにいかないのだが、私たちはミスコンでの優勝という期待を掛けられている。


 私とヴェネティスは化粧道具を持ち込み、お互いにヘアメイクを施し、愛好会の子たちの造ってくれた一対の髪飾りを付け、ドレスを着た。靴は、ドレスの色に合わせた同色の物をお揃いでそろえてある。


「緊張してる? ヴェネティス」


「いいえ。お姉様と一緒に何かするの、楽しかったし……それに」


「それに?」


「お姉様、とってもきれいだわ」


「ヴェネティスもね」


 私たちはお揃いの衣装に身を包み、二人で化粧した顔を見合わせて笑い合うと、愛好会の子たちの前に戻った。


「わぁ、本当に素敵です……!」


「自分たちで作ったけれど、グレース様とヴェネティス様に着ていただくのに一生懸命作ったので……!」


「本当にお似合いです! ステージ、リハーサル通りに歩いて戻ってきてくださればいいので……!」


 愛好会の子たちは顔を見合わせてから、私たちに向き直った。


「優勝、してきてください!」


「ありがとう、いってくるわね」


「とっても素敵なドレスだわ、見せつけて来るからね」


 愛好会の子たちの期待を背負っても、私とヴェネティスは緊張したりはしなかった。


 並んでいる他の女生徒たちのドレスは絢爛豪華だが、私たちのドレスはどちらかというと実用性は度外視だ。


 単色の薄布を色の濃淡と長さを変えて何枚も重ね、綺麗なグラデーションにしたスカートは、前が短く後ろが長いフィッシュテールという作りになっており、一番濃いスカートに合わせて絹地とレースで作られた上半身の袖もひらひらと揺れる。


 ウエストの切り替え部分は綺麗に膨らみを持たせてあり、余計な装飾は無い。髪飾りも繊細な透ける薔薇の花を象ってあり、これは夜会やお茶会に着ていける服ではないが、学園祭にはふさわしい華やかできれいな衣装だ。


 私たちの順番が来る。前の子が反対側の袖に入っていき、同時に私たちは手を繋いでステージに出た。


 Tの字になっているステージは観客部分に囲まれるように長い直線があり、二人で手を繋いで笑顔で衣装をひらめかせながら歩いていく。


 ちょうどステージの先端でドルマン様と一瞬目が合う。学園に入る前に、よく私を呆けたように見ていた顔をしていたので、にっこり笑ってから手を放してくるりと回って見せる。


 もう一度ヴェネティスと手を繋ぎ、両手を高く上げてから、裾と袖をひらめかせて反対側の袖に入っていった。


 愛好会の子たちは泣きながら出迎えてくれて、なんだかもう結果が出なくても満足しているようでよかった。


「ね、ヴェネティス」


 私は緊張した、というように胸を押えているヴェネティスに笑顔で向き直り、そのまま抱き締めた。


「とっても楽しかったわ。ありがとう」


「お姉様……」


「大好きよ」


 卒業前に、こういう機会が持ててよかった。


 ヴェネティスまで泣きそうになっていたので、愛好会の子たちは慌ててハンカチを3人全員差し出して、それがおかしくてヴェネティスと私は笑った。


 かくして、ファッションショーは大成功に終わり。


 ミスコンは私とヴェネティスが優勝という結果に終わった。

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