7話 シスターの背負うモノ
夜。宿屋でゆっくりしていたオレたちだったが、暇なので外でハーブを吸っていた。
騎士様と言えば暇な時間を見つけては訓練やら筋トレやらをしてて意識が高いなぁと眺めていた。
オレはそこまで真面目ではないので軽く剣の振り方を教えてもらった後は宿の部屋でぐうたらしていた。
やることと言っても特にないので村を見て回ったりした。
この村はシスターが村長のような役割をしていたらしく、誰に聞いても『いい人です』と言われるような頼られるシスターだったらしい。
そんなシスターが村を離れるのは大変じゃないか?とも思ったが、そもそも何日も城下町に降りるような生活をしていたシスターは自分がいなくても村が安全に維持されるように人材を育成していたらしく、村に金が入るならと皆大賛成だったそうだ。
まるで村自体が一つの家族のような、そんな印象を受けた。
そしてその感覚は間違っていないことを後で知る。
そんな夜の星空を見ながらハーブを吸っていると、シックスが現れた。
「こんな時間まで起きてるなんて、勇者様は随分元気でいらっしゃいますね」
「なんか引っかかる言い方だな、とりあえずオレのことは青葉でもなんでも好きに呼びなよ」
「ではアオバ様、と呼ばせていただきますね」
「おう、これから長い旅の仲間になるんだからな。よろしくな、シックス」
「はい」
「・・」
シックスと握手を交わす。
その時にツンと何かの匂いが鼻を刺激する。
「・・ふん」
「どうかされましたか?」
「笑顔の裏に何か隠してそうだなとは思ったが、お前もしかして結構体を売っているな?」
その匂いは男の匂いだった。
それも結構濃い。
そうなってくればこの女が体を重ねて売っていたのは確実だろう。
「ふむ、売るというのもアリですね」
「・・あん?」
「何を誤解しているか知りませんが、私は村人から金銭など受け取っていません。私はただ私の意思で村人とセックスしてただけです」
「お、おう・・はっきり言うじゃねぇか・・」
「困るんですよね、四六時中色欲が高まってしまって」
「それでもシスターなのかよ・・」
「アオバ様の元の世界ではどうだったかは存じ上げませんが、我々の世界ではセックスというものは人が人を生む営み故に神から禁止されているものではありません」
「そうなのか・・そもそも価値感が違うんだな・・」
「わたくしはこの村に住んでから随分と長いですが、気が付けばわたくしの血縁者が村人の半分くらいになってしまいました」
「ヤりすぎだろお前も」
「ふふふ、かもしれませんね・・でも・・」
そう言って彼女は、シックスは星空を見上げた。
「抱えるモノが増えるたびに実感するのです、『わたくしは生きている』のだと」
「・・」
生きている、実感。
彼女はただ性欲のために体を重ねていただけではなく、『生命』を生み出して自分の宝物を、大切なものを増やしていったのかもしれない。
それは、過去の戦争経験者だからこそ行き着いた結果なのかもしれない。
「・・ま、お前がどれだけセックスしても別にいいけどよ」
「ふふふ、誰もいない時はわたくしが優しく抱いてあげますから。わたくし女でもいけますので」
「いけますじゃねーよ、お断りだよ」
シスターだからと油断してたがどうにもこいつもキャラが濃い。
ため息をつきながら明日からの旅の無事を祈ろうと思う。
せっかく横に聖職者がいるのだから。