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5話 星空の下で

 王都を出てから最初の夜を迎えた。

 とりあえずそこら辺の木を集めて城下町で買った魔法で火がつく、いわゆるライターのようなもので火を起こす。

 寒くはないが、流石に野宿をすることには少し抵抗はあった。

 だがどうしようもない以上オレ達にはこうすることしかできなかった。

「・・やっぱハノンはこういう野宿は慣れてるのか?」

「そうでもないさ、私も訓練以来かな。私は遠征をすることが少なかったから」

「なるほどな」

 そう言うハノンの顔は別に不安そうでもなく、至って普通といった顔をしていた。

 きっとこれがこの世界の騎士の常識なのだろう。

 経験は少なくともいずれは体験する、そんなことが当たり前のように刷り込まれていたのだろう。

「・・星が綺麗だな」

「そうだな」

「・・オレが住んでたところとはえらい違いだ」

「・・そういえばお前は異世界から来たと言ってたな・・教えてくれ」

「何を?」

「お前が住んでいた世界のことを」

 そう言われてうーんと唸る。

 改めてそう言われても別に説明することはないと言うか、まぁオレもそんなに賢いわけじゃないから何も伝えることはないとは思ったが。

「・・まぁ、つまんねぇ世界だよ」

「つまらない?」

「当たり前の日々が当たり前のように過ぎていく。近くでその当たり前の生活を奪われている人がいても知らん顔をして、自分の当たり前を守る。そんな世界だ」

「・・人と人の繋がりが薄いのか?」

「どうだろうな、田舎とか行きゃ濃いのかもしれないけどな」

 そう言って焚き火の火を眺める。

「・・分からねぇ、オレがいた世界は本当に平和だったのか。果たして平和じゃなかったとしてそれを改善しようとしていた奴はいたのか。今となっては確認のしようもないがな」

「・・色々あるのだな、お前の世界も・・そういえば・・お前は帰りたくないのか?元の世界に」

「・・別に、あの世界にはもう何も未練はない。帰ってもいいし帰らなくてもいい」

「いい加減だな・・」

「・・そうかな、でももう守るものがない分この世界にいた方がいいのかもな。ギリギリまだ魔王を倒してこの世界を救うというオレのするべきことがある」

「ちゃんと向き合ってくれてはいるんだな」

「あぁ、オレも誰かが死ぬのはごめんだからな」

「とはいえ戦いでは人は死ぬ。それは仕方のないことだ」

「・・そうかもな・・でも」

 空を見上げる。

 星が綺麗に瞬いている。

「オレの手が届く範囲では誰も死なせはしない。例えどんな犠牲を払おうとも、その犠牲がオレであっても」

「お前・・」

「もう話は終わりだ、寝るぞ」

「私は見張っている、お前はゆっくり休んでいろ」

「それじゃあお前が寝れないだろ、交代しながら休憩しようぜ。体がもたないだろ」

「・・ふふ、気を使ってくれるのだな。それではお言葉に甘えよう。交代になったら起こすからそれまで寝ていてくれ」

「あぁ、頼んだぞ」

 そう言って木に頭を乗っけて寝る体制になる。

 さっき話をしながら嫌な思い出も色々思い出してしまった。

 勇者になった以上、オレにも責任がある。

 絶対に魔王を倒してみせる。

 そう思いながらオレは眠りについたのだった。

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