3話 セブンソード
「いや〜、オレが勇者になっちゃうとはなぁ」
オレとお付きの騎士であるハノンは城下町を歩く。
あれから金を受け取ってからとりあえず装備を整えようと店を歩き見ている感じだ。
「お前のようなふざけた奴を勇者に据えるなど・・まったく、王は何を考えていらっしゃるのか」
「いいじゃん金ももらったんだし。なぁ持ち逃げしても逃げる場所がねぇしな、このまま武器買って冒険といきますか」
「そんなことをしてみろ、私が後ろから切り刻んでやる」
「真面目だなぁお前、流石騎士様と言ったところか?」
「バカにしてるのか貴様!」
あんまりふざけていると本当に腰元の剣で切り掛かってきそうなのでふざけるのはここら辺にしておく。
「それにしても武器を買うって言っても何買えばいいんだ?一応色々あるみたいだけどよ」
槍や斧、果てはなんかよく分からない棒にトゲが付いた鉄球がぶら下がってるものまで。
とにかく武器というのは色々あるらしい。
「ふむ、貴様はそもそも武器を扱ったことがないのだろう?ならば比較的振りやすい剣なんてどうだ?実際騎士団に入りたての新人は剣から訓練するからな」
「ほぉー、確かに一理あるな」
その話を聞き剣が並んでいるところを見る。
とにかく多い、剣の種類がめちゃくちゃある。
片手で振れそうなものから両手で持たないといけなさそうなものまで。
一体何を取れば強いのか。
「そういやお前も鎧を着ているが、それは実際どうなんだ?」
「うむ、鎧に関してはお勧めできん。そもそも騎士になるような人間は入団前から予め身体を鍛えて最低限鎧を着て動けるようにならないと入れないからな。お前は見たところそこまで体を鍛えているわけではない、鎧を着たまま動くのは難しいだろう。とはいえ一番軽い鎧くらいなら着れるんじゃないか?」
「ふーん」
いろんな剣を手に取ってみる。
軽いものから重いものまで結構取り揃えてあるようだ。
そこで色々考える。
思い出すのはあの魔物と戦った時のことだ。
恐らく魔物にも戦闘に関する知性はあるのだろう。
同時に襲ってきたりしてこちらを本気で殺しにかかっていた。
そう思うとこちらも最大限の殺意を持って向かわねばならない。
「分かった、大体決まった」
「そうか」
「おーいオヤジ」
「へい!勇者殿!!何にしますか!?」
オレが勇者だということはもう随分と知られてることらしい。
それに少しびっくりする。
「このナイフを二本、小さくて扱いやすそうな剣を二本」
「随分多いですね、勇者殿」
「あとこの片手で振れそうな剣を一本、この刀を一本、そんでこのデカいやつを一本。合計で七本だ」
「ええええええええ!?」
「バッ、おまえっ・・一体何を考えている!?」
「え?七本全部買うって言ってんだよ」
「馬鹿者!お前では七本も持っては動けなくなるだろうが!!」
「いや、持った感じだといけそうだぞ?それに同じのを七本買ってるわけじゃないしな」
「別々だからいいという話ではない!!」
「考えてもみろよ、これから長い旅でいろんなやつと戦うかもしれねぇ。中には硬いやつ、デカいやつ、素早いやつ、遠くから攻撃してくるやつ、色々いるかもしれねぇだろ。そういう時のために色々装備しておいてどの距離どの相手においても戦えるようにしとかねぇと生き残れねぇよ」
「しかしだな・・」
「それに、別にすばしっこく動く必要もないだろ。敵の攻撃を避けれれば御の字だ。あとはお前もいる、鎧に盾まで装備したお前がな。上手く相手にオレに攻撃しても当たらねぇって思わせればターゲットはお前に向くはずだ。そうなるとオレは奇襲ができる」
「・・流石にそこまでは理想論ではないか?」
「確かに、だが七本持つ意味はちゃんとある。どうだ?騎士殿」
「うむむ・・」
「まぁ最悪重ければ捨てりゃいいしな」
「おまっ、大事な武器をなんだと・・!!」
「生き残るため、仕方のないことだ」
「・・そこまで考えてるならいいだろう。その七本、大事にしろよ」
「おう、助かるぜ。つーわけでオヤジ、こいつはもらっていくぜ」
そう言って値札を見る。
合計で・・25ヴァイロ?
ん?
「騎士殿、このヴァイロってやつはなんだ?」
「そうか、お前の世界とは通貨も違うのか。ヴァイロはこの世界の金だ、この銅貨が0.1ヴァイロ、銀貨が1ヴァイロ、そしてこの金貨が10ヴァイロというわけだ」
「へぇー、じゃあ金貨二枚に銀貨五枚ってことか」
「そういうことだと」
「あの・・騎士殿、この勇者殿というのは本当に大丈夫なんですかね・・」
「大丈夫じゃなかったら私が後ろから斬りかかるだけだ」
「おいおい、まだ言ってやがるよ・・」
とりあえず勇者の仕事をしないとこの騎士様に殺される。
それだけはよく分かった。
七本の剣を腰や脚、背中に装備する。
うむ、良い感じだ。
まぁ重さが分散されている分思った以上に軽いな、これなら問題なく動けそうだ。
「よし!それじゃ冒険に行くぞ!!」
「あー、待て。そういえば王から旅立つ前に教会に行けと聞いている。教会に行ってからだ」
「んだよ、調子狂うな」
しょうがないので教会に足を進める。
言われたんなら行くしかねぇよなと思いハノンの後をついて行くのであった。