第七話 女
かおりの笑い声が響いてまた、数日がたった。
キッキッキー
宮神家の前に一台の車が止まった。
バタン
タタタ
「卓也来たぞ。さっさと女を寄越せ」
突然現れ、家の中に入ってきたのは肩まである髪をきれいに切り揃え、つり目の瞳がきつい印象を与える二十代後半の女性だ。
名前は倉沢 皐月と言う。
「お前、いつも言ってるけどその言葉遣いと使い方どうにかしたらどうだ?」
呆れ顔の卓也が奥から出てきた。
「私はお前に呼ばれたから来たんだ。さっさと女を寄越せ」
「へいへい…かおり、準備はできたか?」
卓也は後ろから付いてきたかおりに、声をかけた。
「準備は出来てるけど、どこに行くの?それに、その人は・・・?」
かおりは卓也に少し隠れる形で皐月に向かい合った。
「紹介するよ、こいつは倉沢 皐月俺の…友?…悪友と言う名の友だ。倉沢紹介するよ、この子がかおりだ。今日は頼むよ」
卓也は二人に互いを紹介した。
「今日?」
「そう、今日これから倉沢と買い物に行ってくれ。かおりの日用品全然そろってないからな」
卓也はかおりにそう言うと、財布をかおりに渡した。
「これ、今日の小遣いな、結構入ってるから気をつけてな。帰りにあまったらお茶でもして帰ってきな」
後半は倉沢に向かって言った。
「そうさせてもらう、けど、その子あんまり納得してないみたいだ」
卓也が再びかおりを見ると、かおりは少し不安そうな顔をしていた。
「…卓也と買い物じゃ、だめなの?」
「だめって分けじゃないけど、今日は女性に必要な物を買ってもらう予定だから、俺との買い物は今度な…倉沢は俺の知り合いの中では一番まともな部類の人間だから、大丈夫だよ」
「まともってどういう意味だ?卓也?」
倉沢は少しあきれた様子で言った。
「俺にしては最大のほめ言葉」
卓也はニカリと笑った。
「分かったよ、かおり行こう」
倉沢はそう言うと、車に向かって歩き出した。
「…卓也」
「あいつは信用できるから、行って来いって。俺は大学行くから昼間居ないし、な?」
卓也はかおりに諭す様に言った。
「…わかった。行って来ます」
「うん、行って来い」
「今度は一緒にね」
「今度な」
かおりは、倉沢の待つ車へと向かって行った。