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第六話 話

 私が、いつ生まれどんな風に育ったか私自身よくわかっていない。

 ただ、私が普通ではないということは、私が『カクセイ』した時から『科学者』達から言われていた。

 私は、ただ『科学者』達から言われたことをただやっていただけだった。


 そのときの記憶は、ぼんやりとしていてほとんど覚えていない。

 ただ、時々ふとした瞬間に思い出したりする。

 それは、『科学者』同士の会話だったり、『科学者』が私に指示を出していることであったり、私がやらされていた事だったりした。


 私はそれを情報として処理してきた。


 そして、それは・・・続くだろう・・・私が行き続ける限り・・・。

 それが、私の生きている証拠・・・。

 それが、私が『科学者』達から自由になった代価・・・。




 私が、なぜ生まれさせられたか・・・創られたか、それは、『科学者』から自由になってだいぶ後から知った。

 それを、教えてくれたのは、私に『かおり』という名前を付けてくれた人・・・卓也だった。


 卓也の教えてくれた話は、今私がいる時間より五十年以上前から始まっていた。



 五十年以上前、その時、卓也のような呪術者はとても少なかった。


 『見鬼』は、少なからずいたそうだが、呪術者になれる者はほとんどいなっかった。


 その時、卓也が所属している『組織』のお偉方が、こう考えたという。

『呪術者になれる者が生まれないのなら、創ればいい』


 その思いのもと、さまざまなことが行われた。


 最初は、呪術者同士による体外受精もしくは自然受精による胎児創り。

 しかしそれは、呪術者があまり若くないからかあまり成功しなかった。


 

 次に行われたことは、呪術者のクローンを創ることだった。

 それも、その時の科学力では、『人の形』をしたものしか創りだす事しか出来なかったそうだ。

 呪術者のクローンで、呪術ともどもついてくるものは、皆無だったという。


 卓也は、生後すぐに細胞を提供させられたが『もう一人の卓也』は生まれなかったそうだ。


 その後も、さまざまなことが行われたそうだが、話が長くなる、というので、卓也はあまり話してはくれなかった。


 そして、『組織』が最後に手を出したのは、呪術と科学の力でのクローン化だった。


 しかも、一人のクローンではなく、二人以上の細胞をあわせ持ったクローンを創ろうというのだ。

 そして、それが『組織』にとって最後の実験だった。


 『組織』には莫大な資産があるというが、度重なる実験の費用の額はかなり痛かったそうだ。

 そして何より、術者になれるほどの霊力がある人間が少なからず発見できたからだ。


 融合クローンは、呪具と科学が複雑に絡んでいるそうなので、卓也にも詳しいことは分からないそうだ。


 ただ、一年以内に何らかの成果が認められない場合は、『新しい呪術者を創りだす』というこのプロジェクトは取りやめることが決定された。


 いくつもの失敗作が、外に出ることなくその生命の鼓動を消していったという。


 私が創られたのは、そんなさなかだった。


 私は、ある呪術者たちのの融合クローンとして、『第二十五号子宮』という人口子宮ないで、命を育みはじめた。


 私は、かなりの速さで成長していたそうだ。


 だが、私が取り出し可能になる前に期限の一年が来てしまった。


『組織』は全てを処分しようとしたが、『科学者』やかかわっていた術者達がせめて今『生きている』者は経過観察すべきだと主張し、それが認められた。


 そして、プロジェクトはなくなり、『組織』は、まだ『生きている』者たちを除いて全て処分してしまった。


 その後は、生き残った者達がどうなろうとも、これ以上呪術者を人工的には創らない事になった。


 その中で、幾人かは外に出たが、数日でその命は終わったそうだ。

 私は、その最後の一人だったそうだ。

 私は・・・ 『第二十五号子宮』の胎児は、成長は早かったが鼓動は弱く、貧弱だったそうだ。

 それでも、最後まで生き残った。


 『科学者』達は、私のことは半ば諦めていたという。

 けれど私は生き続けた、私は数年で十歳前後の体になったそうだ。

 そして、私が二十歳前後の体になった頃『科学者』達が外に出していいと判断した。

 私は外に出た、私は死ななかった。


 

 これが、私が生まれるまでに行われてきたこと。

 私は背負っている。

 私が生まれる前に死んだ、全ての命を・・・。



 卓也は、悲しそうに、寂しそうに話してくれた。


「けして、命を粗末にしてはいけない」といいながら。




本編にはあまり係わりが無いのですが、そろそろ入れたかった…

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