第三話 もう一人
時間軸を少し戻します。
かおり(ただいま名無しさん)を部屋に案内してからの、卓也の行動です。
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卓也は階段を降りていた。
(まったく、『科学者』たちのヤロウ名前も付けてないなんて…ドンだけ『物』扱いしたら気が済むんだ)
卓也は階段を降りるとその足で家の奥、今はあまり使われていない部屋に入っていった。
しばらくすると、一冊の本を持って卓也が出てきた。
卓也は、その本を居間のテーブルで熟読し始めた。
「何を読んでいる?」
卓也が本を半分ほど読み終わたころ、居間に一人の人間が入ってきた。
その人間は、とても中性的な顔立ちをしたひとで、名前を二海道 樹と言う。
「久しぶりだな…今なこれ見てたんだ」
そう言うと卓也は本を持ち上げ表紙を見せた。
表紙には『子どもの名前の付け方』と書いてあった。
「ガキでも出来たか?」
「違う違う、『施設』から引き取ってきた子、あの子名前が無いんだ…だから、ちょっと…な」
「物好きだな」
「ハハハ、俺もそう思うよ」
卓也は、少し寂しそうな顔になった。
「名前は後にして、飯の支度」
「もうこんな時間か…そうだな、お前も食べていくか?」
卓也は、時計を見ながら立ち上がった。
「ああ、食べる」
「よし。んじゃ待ってろ」
卓也は、台所に消えていった。
しばらくすると、卓也がお盆に作った料理を乗せてきた。
「お前何してんの?」
「意外と面白い」
居間に戻ってきて卓也が見たのは、『子どもの名前の付け方』を読んでいる樹だった。
「お前も考えてくれるならいいけど…」
「口出しはしない」
「…あ、そ」
卓也は、テーブルの上に三人分の配膳を始めた。
「…よし、んじゃ呼んでくるから」
配膳が終わると、卓也は二階へと向かって行った。
「あいつも物好きだな」
その背を見送った樹がポツリとこぼした。
卓也と樹の口調が似てるーーーどうにか差をつけねば…